まるで実写映画の“リアル”な表現…『ガンダム』で難題に挑戦する『閃光のハサウェイ』のアプローチ
モビルスーツが現実に存在すると、どうなるのか
一方で、モビルスーツのパイロットの描写に関しても、実写的リアルが徹底されている。「マフティー」のメンバー、ガウマン・ノビル(声:津田健次郎)を主軸に描かれるコックピット内は、重力があるなかでの浮遊感や降下感、ガウマンの主観視点を織り交ぜた視線の動きなど、ジョセフ・コシンスキー監督の『トップガン マーヴェリック』(22)や『F1(R)/エフワン』(25)にも通じる背景の描き込みや心情が伝わる表情で、モビルスーツに疑似的に乗っているような雰囲気を味わうことができる。そしてパイロットの緊張感が伝わるカメラワークは、実際のカメラでは狭い機内を撮影できないため、実写的な要素も含みつつもアニメだからこその映像であると言えるだろう。
対する地球連邦軍の切り札、ペーネロペーに対しては、巨大な怪鳥を思わせる異形さと独特の飛行音や高速な動きで、圧倒的な強さを際立たせながらも、あえて機体をアップで映すことはしない。この演出が、未確認の兵器を前に不安感を募らせる兵士の心情にシンクロさせ、戦争映画的な緊張感がさらに強くなる。そして戦闘が激化し、圧倒的な破壊力を発揮する武装を持つモビルスーツが周囲にどのくらいの影響を与えるのかを、観客にまざまざと見せつけることとなる。
戦闘中に機体から外れて落下したビーム・ライフルは周囲に大きな破壊をもたらし、目標を外れたビームの着弾によって逃げ惑う人々は爆風に巻き込まれ、さらに飛び散ったビームの粒子は車止めのポールやアスファルトを溶かす。スラスターの噴射炎は公園の木々を焼き、格闘するモビルスーツの脚部は逃げ惑う人々を簡単に踏み潰す巨大な鉄塊として迫る。そこには、モビルスーツの格好よさは存在せず、動くだけで人々を殺める冷たい兵器としての佇まいだけが描かれる。アレックス・ガーランド監督『シビル・ウォー アメリカ最後の日』(24)での緊張感溢れる戦場のような生々しさ、そしてサム・メンデス監督の『007 スカイフォール』(12)を思わせる光と影を活かした演出が、ハサウェイとギギの避難劇をさらに盛り上げていく。
そして、窮地に追い込まれたガウマンの機体が背部から攻撃され、引火した推進用の燃料が噴出する。圧倒的な破壊をもたらす物であり、悲惨な現実の象徴から吹き上がる火花が美しい花火のように見える。そこに重なる形で、生き残れたことを実感して抱き合うハサウェイとギギの姿を映すシチュエーションも、戦火を美しく映す戦争映画的なインパクトを残しているのだ。
ハサウェイたちのドラマが第2章でさらに激化!
シチュエーションやキャラクターの描き方に加え、モビルスーツの徹底した兵器としての描かれ方も含めて、「かつて大きな戦争があり、未だにその影響下に有り続ける世界」というリアリティ。『閃光のハサウェイ』は、戦争が身近に有り続ける『ガンダム』の世界に正面から向き合い、実写的な手法でストイックに描き切ったところに大きな価値と魅力がある作品となっている。
1月30日に公開となった第2章『キルケーの魔女』では、前作で触れられていた「マフティー」を支持する反地球連邦の私設軍隊と地球連邦軍との衝突に、ハサウェイたち「マフティー」本隊が接触すること展開が繰り広げられる。状況はより戦争映画的な要素に、ハサウェイやギギたちのドラマがどのように絡むのか?第1章とは異なるシチュエーションで披露される実写映画的なアプローチを、ぜひ劇場で目撃してほしい。
文/石井誠

