『ZOMBIO 死霊のしたたり』『フロム・ビヨンド』から『VENUS/ヴィーナス』へ!カルト作が生まれ続けるクトゥルフ神話×ホラーの系譜

『ZOMBIO 死霊のしたたり』『フロム・ビヨンド』から『VENUS/ヴィーナス』へ!カルト作が生まれ続けるクトゥルフ神話×ホラーの系譜

「REC/レック」シリーズで全世界を凍りつかせたスパニッシュホラーの旗手ジャウマ・バラゲロが、同じくスペイン出身で『スガラムルディの魔女』(13)などで知られる鬼才アレックス・デ・ラ・イグレシアをプロデューサーに迎えて放つ衝撃作『VENUS/ヴィーナス』が、いよいよ日本公開された。「ヴィーナス(=女神)」と名付けられた老朽化アパートに秘められている、恐ろしい秘密とは?犯罪組織に追われ、そこに逃げ込んだ若き女性ダンサーの運命は?

【写真を見る】麻薬を盗んだダンサーが犯罪組織、悪魔の使いを名乗る貴婦人たち、そして日食と共に現れる“なにか”の闘いに巻き込まれていく『VENUS/ヴィーナス』
【写真を見る】麻薬を盗んだダンサーが犯罪組織、悪魔の使いを名乗る貴婦人たち、そして日食と共に現れる“なにか”の闘いに巻き込まれていく『VENUS/ヴィーナス』[c]2022 Pokeepsie Films SL – The Fear Collection II A.I.E.

本作が注目すべき理由は怪奇・幻想小説の大家H・P・ラヴクラフトの小説に基づいていること。原作の「魔女屋敷で見た夢」はラヴクラフトが1933年に発表した作品で、映画は設定を現代に置き換えてこそいるが、ラヴクラフトのダークなスピリットを正確に継承している。そのスピリットとはズバリ、クトゥルフ神話だ。

クトゥルフ神話とはラヴクラフトが作家仲間と共に体系化した想像上の神話で、以後のアートはもちろん、現代のポップカルチャーにも多大な影響をあたえている。この神話の恐怖を形成するのは幽霊やモンスターではない。より圧倒的で強大な力。わかりやすくいえば、悪魔的な存在だ。もちろん、悪魔はラヴクラフト以前から宗教的な点で信じられていたが、彼はそこに新たな解釈を加える。

その悪魔的な何かは宇宙や他次元から現れる存在だが、エイリアンのような侵略者ではない。人類の存在を無にするほど大きなもので、その飛来は地獄の門が開かれたことを意味し、そこに希望は一切ない。ざっくりとではあるが、これがラヴクラフト的世界の根源だ。クトゥルフ神話には他にも多くの解釈があるので興味のある方はぜひ調べてみてほしい。

クトゥルフ神話とスプラッターを融合させた『VENUS/ヴィーナス』

ヴィーナスに暮らす不気味な貴婦人たち
ヴィーナスに暮らす不気味な貴婦人たち[c]2022 Pokeepsie Films SL – The Fear Collection II A.I.E.

話を『VENUS/ヴィーナス』に戻そう。主人公のダンサー、ルシアは犯罪組織からドラッグを盗んだことで追われる身となり、姉を頼ってヴィーナスに逃げ込んだ。しかし、姉はルシアが来た直後に、幼い娘を残して忽然と姿を消す。そのうえ、住民が減りつつあるこのアパートは得体の知れない不気味な空気に覆われていた。姪を守りながら、その事実に近づこうとするルシア。やがて日食が訪れる日、ヴィーナスは驚くべき怪異を呼び覚ます!


勘の鋭い方なら、その怪異がどこから来るのか想像できるだろう。それはもちろん恐ろしいのだが、ルシアを含むヴィーナスの住人たち、ひいては犯罪組織にあたえる影響にも戦慄を禁じえない。バラゲロは血みどろの混沌というお得意のスプラッター要素を加えながら、独自のクトゥルフ神話を構築していく。


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