”家族の絆”をハートフルに描いた『パディントン 消えた黄金郷の秘密』松坂桃李にインタビュー。「帰れる場所があるから、自分の毎日を頑張れる」

”家族の絆”をハートフルに描いた『パディントン 消えた黄金郷の秘密』松坂桃李にインタビュー。「帰れる場所があるから、自分の毎日を頑張れる」

イギリスを代表する児童文学として世界中から愛される「くまのパディントン」。その実写映画『パディントン』が日本で初めて公開されたのは2016年のこと。原作の世界観を大切にした愛すべきドタバタ劇は高い評価を受け、2018年には続編が公開。そこからさらに7年の時を経て、シリーズ第3作となる映画『パディントン 消えた黄金郷の秘密』が、現在公開中だ。

パディントンの育ての親・ルーシーおばさんが突然失踪した。おばさんは一体どこへ消えたのか。故郷ペルーに帰ってきたパディントンを待っていたのは、シリーズ最大級の大冒険だった! 大好きなルーシーおばさんのために奔走するパディントンの吹替えを担当するのは、第1作からの続投となる松坂桃李。7年ぶりのパディントンとの再会に、どんなことを思ったのだろうか。

「パディントンはどこから来たのだろう?と僕も気になっていた」

7年ぶりにパディントンの吹替えを担当した松坂桃李
7年ぶりにパディントンの吹替えを担当した松坂桃李撮影/増永彩子、メアメイク/AZUMA(M-rep by MONDO artist-group)、スタイリスト/KEITA IZUKA

「いまの自分にパディントンができるのか。そこが一番の不安材料でした」。開口一番、そう本音を打ち明ける。7年経てば、声質も演技も変わる。不安に思うのも無理はない。「パート1の時から演出家の方と相談して、地声より少し高めのキーで演じていたんです。それがもう9年前。当時の声が出るのか不安でしょうがなくて」と飾らずに松坂は語る。だからこそ、「収録の前にパート1とパート2を繰り返し観ました」と準備は欠かさない。実際に画面の前で自ら台詞を言い、キーを確認した。おかげで「アフレコの時はそこまで苦労はなかったです」とにっこり。ブランクを埋め、三度パディントンに命を吹き込んだ。

松坂にとって、パディントンは「僕の数少ない友」だと言う。3作にわたって関わり続けてきた松坂が「思わずワクワクした」と目を輝かせたのが、本作冒頭の場面だ。そこでは、パディントンとルーシーおばさんの出会いが描かれている。「パート1では、パディントンがルーシーおばさんとパストゥーゾおじさんと暮らしているところから物語が始まっていて、その前は描かれていなかった。パディントンがどこから来たのだろう?というのは僕も気になっていたので、そこがわかった瞬間のワクワクは大きかったです。もちろん今回のお話から入っても十分楽しめるんですけど、シリーズを追い続けてきた方だから味わえる特典もあると思います」。

帽子とダッフルコートがトレードマークの紳士なクマ、パディントン
帽子とダッフルコートがトレードマークの紳士なクマ、パディントン[c] 2024 STUDIOCANAL FILMS LTD. – KINOSHITA GROUP CO., LTD. All Rights Reserved.

松坂もこの7年の間に様々な変化があった。なかでも大きいのが、家庭を持ったこと。一児の父となったいま、改めて『パディントン』に触れたことで「やっぱり家族の愛っていいな」と共感を深めた。「全シリーズを通してずっと家族の絆が描かれてはいるんですが、特に今作はよりみんなのつながりが強くなって、絶大な愛が感じられました」と松坂が答えるのには理由がある。

本作では、パディントンのある秘密が明かされる。迎えた、家族の岐路。「パディントンのことを見守るブラウン一家の表情が、なんとも言えないような悲しさと、パディントンに対する慈愛に満ちていて。この表情はやっぱりずっと一緒に暮らしてきた家族ならではのものだなと思いました」。

 本作では、英国にやってくる前のパディントンのルーツが描かれる
本作では、英国にやってくる前のパディントンのルーツが描かれる[c] 2024 STUDIOCANAL FILMS LTD. – KINOSHITA GROUP CO., LTD. All Rights Reserved.

パート1では反抗期だった長女のジュディ(マデリン・ハリス)も、いまでは大学進学を控える年頃に。大学に入れば、ジュディは家を出る。母のメアリー(エミリー・モーティマー)は子どもの巣立ちに寂しさを隠せない。歳月と共に家族の形は変わる。だが、「たとえ物理的に離れても、ちゃんと帰れる心の場所があるなら、それは家族なんだと思う」と松坂は言う。「たとえば実家がなくなったら、物理的な帰れる場所というのはなくなるのかもしれない。でも人には心の原点というものがあって。そういう帰れる場所を分かち合える相手を、僕は“家族”と呼ぶのだと思っています」。

頻繁に連絡をとるわけじゃない。一緒に過ごす時間なんて、1年の中でほんのわずか数時間かもしれない。それでも、心にいつも灯り続ける暖炉のような温かいぬくもり。それが、松坂の思う家族だ。「そんなふうに帰れる場所があるから、離れた場所で暮らしていても、みんな自分の毎日を頑張れるんじゃないかな」。


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