狂気的な“執着”の行く末を描く『オブセッション 災愛』監督カリー・バーカーが演出へのこだわりを語る!「キャラクターを一人の人間として“真実味があるもの”にしたかった」
「すべての映画にはコメント欄があり、それが私たちの生きている世界」
先述の通り、バーカーはYouTubeからキャリアをスタートさせたクリエイター。そして近年、本作と同じく社会現象級のヒットを記録している『バックルームズ』(9月4日公開)のケイン・パーソンズ(バーカーよりもさらに若い現在20歳!)、『TALK TO ME/トーク・トゥ・ミー』(22)や『ブリング・ハー・バック』(公開中)のダニー&マイケル・フィリッポウ兄弟とYouTube出身の監督の躍進が目立ち、しかもそれぞれの作品が常に大きな話題を巻き起こしている。
YouTubeを通して作った作品を世の中に発信し、うまくいけば一気に知名度を上げることにもなるが、再生回数や投稿コメントによってダイレクトに反応や評価を突き付けられることにもなるはず。こういったプラットフォームを利用できる環境が整えられている状況について、バーカーはどのように捉えているのだろうか。幸運、もしくは、プレッシャー?
「それはとても興味深いテーマです。YouTubeやInstagramには投稿した動画へのコメント欄があって、そこにはリアルタイムのフィードバックがあふれています。私自身、ひとたび劇場公開される映画を作れば、コメント欄からは解き放たれ、もう目にする必要はなくなるんだとずっと思っていたんです。ですが、実際はまったく違いました。いまの時代、すべての映画に“コメント欄”が存在すると思います。それが(映画レビューのソーシャルメディア)『Letterboxd』のスコアであれ、『Rotten Tomatoes』の評価であれ、あるいは(インターネットで閲覧できる)映画の予告編や監督自身がSNSに投稿したテキストであれ、そこには必ずコメント欄があります。いまのすべての映画にはコメント欄があり、それが私たちの生きている世界なんです」。
「私たちはただ、YouTubeというプラットフォームが存在する時代に生きているだけ」
たしかに、テレビや新聞、雑誌がおもな媒体だった時代とは違い、現代はSNSやYouTubeに投稿されたプロモーション映像に向けて、誰もが自由な感想を言い合える社会になっている。
「ですから、私がYouTube出身であるかどうかが、自分に悪影響を与えているとも、逆に好影響を与えているとも、実はそれほど感じていません。それに私の歩んできた道のりが、デヴィッド・フィンチャーやスティーヴン・スピルバーグと大きく異なっているとも思いません。もちろん、自分を彼らのような巨匠と比較しているわけではありませんよ!ただ、彼らのキャリアの歩みという点で見れば、若き日のクリストファー・ノーランの短編映画を観ることもできますし、初期作品からその後の成長の軌跡を辿ることができますよね。私たちはただ、YouTubeというプラットフォームが存在する時代に生きているだけです。まず、フィリッポウ兄弟がその道を切り拓きました。続いて、私も自分の短編映画を映画会社の幹部のデスクにこっそり忍び込ませる代わりに、プラットフォームに公開することを選んだんです。見いだされ方のルートが変わったというだけのことですね」。
今後、『オブセッション 災愛』に続いてブラムハウスと組む『Anything But Ghosts(原題)』で監督と脚本、主演を務め、A24が『悪魔のいけにえ』(74)をリブートするプロジェクトにも参加予定のカリー・バーカー。さらなる飛躍が約束された新鋭の、ターニングポイントとなる本作をぜひともチェックしておいてほしい。
取材・文/平尾嘉浩

