狂気的な“執着”の行く末を描く『オブセッション 災愛』監督カリー・バーカーが演出へのこだわりを語る!「キャラクターを一人の人間として“真実味があるもの”にしたかった」
「感情の起伏について徹底的に話し合い、何度もテイクを重ねた」
劇中のニッキーは、嫉妬したり、怒ったり、と思ったら急に笑顔になるなど表情変化が激しい。演じるインディ・ナヴァレッテに対して、バーカーはどのような演出をしたのだろうか?
「かなり具体的に指示を出し、初日からほぼすべてのシーンを彼女と一緒に確認していきました。いくつかホラー映画も参考にしていて、その一つが『Pearl パール』です。ミア・ゴス演じるヒロインは映画スターになることに“執着”していて、夢を叶えるためなら手段を選ばないからです。彼女のあの演技は見事でした。そういった感情の起伏について徹底的に話し合い、自分たちが目指すレベルに達するまで何度もテイクを重ねました。これは地道なプロセスです。また、大勢のスタッフの前で、時には客観的に見たら恥ずかしいような演技も求められるわけで、精神的にも肉体的にも非常に負荷のかかる作業だったはずです。だからこそ、私は撮影現場のトーンをできるだけ明るく保つように心がけました。お互いに笑い合えるような雰囲気を作り、深刻になりすぎないようにしたのです」。
「最も重要だったのは、すべてのキャラクターにリアルなリアクションをしてもらうこと」
バーカーは、本作でイアンを演じたクーパー・トムリンソンと共に登録者数150万を超えるYouTubeチャンネル「that's a bad idea」を運営している。特に制作費800ドルのファウンド・フッテージ・ホラー『Milk & Serial』は380万回以上の再生回数を記録するなどカルト的ヒットに。そういう意味でもキャリアを着実に積んできたホラークリエイターといえる。ストーリーテリング、ホラー的演出におけるこだわりについては以下のように語っている。
「私にとって最も重要だったのは、この映画に登場するすべてのキャラクターに『現実の人間ならこんな反応をする』というリアルなリアクションをしてもらうことでした。ベア役のマイケルを演出の例に挙げると、一般的なホラー映画では、リアクションがどこか“お決まりの表現”になりがちです。恐ろしいものを見た時、なぜかそれに近づいていって、顔をこわばらせて驚くだけだったりしますよね。でも、もし自分の部屋で本当に恐ろしいものを見たら、おそらくパニックになって部屋から飛び出すはずです。ですから、今回の挑戦はストーリーを前に進めつつ、同時にいかにリアルなリアクションを維持するかという点にありました。そして、キャラクターを一人の人間として“真実味があるもの”にしたかったのです」。
続けて、劇中のムード作りにも言及。メロディアスな音楽が流れたと思ったら物語が急展開するなど、ジェットコースターのような起伏があって心が落ち着く暇がない。「劇伴はとにかく、圧倒されるほどせつなく、絶望的なものにしたいと考えていました。常に恐怖へと向かうのではなく、むしろ悲しみや痛切さ、そしてある種のおぞましさ、予期せぬ恐怖へと向かう音楽です。そのため、作曲を担当してくれたロッキーとも話し合い、“ロマンス映画のスコアに擬態した、ホラー映画のスコア”を作ろうと決めました」。

