「カルトではなく、オカルトを参考にした」フィリッポウ兄弟が明かす『ブリング・ハー・バック』着想の源や“ナイフ咀嚼”シーンの撮影秘話
「ナイフは様々な素材のものを用意しました」(マイケル)
――もう一つ、ショッキングなシーンに子役のジョナ・レン・フィリップスがナイフをかじる場面があります。あのシーンの舞台裏について教えてください。
マイケル「ナイフはもちろん本物ではありません。様々な素材のものを用意しました。たとえば、発泡スチロール製のナイフは柔らかすぎたので箸を付けて補強しています。ジョナには折れる歯を装着してもらい、無事に撮影を終えることができました」
ダニー「ジョナがナイフを噛む時の音は、私が実際にナイフを噛んで、それを録音したものです」
――撮影時、お2人はどのように役割分担をしているのですか?
マイケル「基本的に撮影現場には一緒にいます。俳優とのコミュニケーションなどメインの部分はダニーが担っています。私は普段、脇からそれを観察し、“こうしたほうがいいんじゃないか?”という部分があれば、追加撮影を行います」
ダニー「私は撮影後の色調整やVFXにもかかわっています。とはいえ、編集は一緒に行っています。同じシーンの異なるバージョンを用意して、見比べたりしながら作業を進めている。編集担当もそこに加わるので、三者三様のバージョンを出し合い、すり合わせていきます」
「ホラージャンルの最前線にいられることをうれしく思います」(ダニー)
――『罪人たち』『WEAPONS/ウェポンズ』(ともに25)と近年中身の濃いホラーが高い評価を受けています。その一端を担ってきた監督として、いまのホラーシーンをどう見ていますか?
マイケル「僕らはもともと、ホラーの中にドラマがある作品が大好きで、リスペクトしてきました。だから自分たちでホラーをつくるなら、やはりそういう作品を撮りたかったんです」
ダニー「『ローズマリーの赤ちゃん』のような中身の濃いホラー映画は昔からありましたが、決して多くはなかった。僕らが子どもだった2000年代、ホラーというジャンルは映画の中でもずっと下に見られていましたから。いま、その状況が多くの優れた作品によって改善され、その最前線にいられることをうれしく思います」
――母国オーストラリアに腰を据えて活動されていますが、オーストラリアのホラーも『ババドック ~暗闇の魔物~』(14)や『TOGETHER トゥギャザー』『デンジャラス・アニマルズ 絶望海域』(ともに25)など優れたホラーが増えていますね。それは刺激になっていますか?
マイケル「もちろんです。『ババドック~』では私はプロダクションランナーとして制作に携わり、ダニーも照明担当で現場にいましたが、すべてのショットに情熱を注ぎこむ監督のジェニファー・ケントの姿勢にはとても感銘を受けました。セットで見ていて、“彼女がこれほどまでに入れ込んでいるのだから、駄作になるはずがない”と初めて思えたんです。彼女の作品作りへの情熱は、私たちの中にも染み込んでいます」
戦慄を引き起こす描写はもちろん、キャラクターの感情に迫るエモーショナルな場面や、絵的な美しさにも唸らされる『ブリング・ハー・バック』。そこにはフィリッポウ兄弟の情熱が確かに刻み込まれている。怖い場面は徹底して怖い。しかし、それだけでは終わらず、観る者の心になにかを残すのが本作の魅力。その凄みを映画館の暗闇の中で、ドキドキしながら味わってほしい。
取材・文/相馬学
