「カルトではなく、オカルトを参考にした」フィリッポウ兄弟が明かす『ブリング・ハー・バック』着想の源や“ナイフ咀嚼”シーンの撮影秘話
低予算製作ながらホラーファンを熱狂させ、世界中でスマッシュヒットを飛ばした『TALK TO ME/トーク・トゥ・ミー』(22)。YouTuberとして知られていた双子のダニー&マイケル・フィリッポウ兄弟は、この初長編で映画監督としての才をも証明してみせた。そんな彼らの新作が、A24と再びタッグを組んだ『ブリング・ハー・バック』(公開中)だ。親と死別したハイティーンの兄アンディ(ビリー・バラット)と目の不自由な妹パイパー(ソラ・ウォン)が、人当たりのよい里親ローラ(サリー・ホーキンス)に引き取られる。ところが、彼女には恐ろしい秘密があった!豊かなドラマ性、リアリティ重視の演出、そしてもちろん衝撃的なショック描写。『ブリング・ハー・バック』は、前作以上にフィリッポウ兄弟の才能、さらには確かな成長を感じさせる。彼らは、この独創的なホラーをどのようにして作っていったのか?オンラインで話を聞いた。
「僕らはサイコ・ビディ映画に恋しています」(ダニー)
――『ブリング・ハー・バック』は、目の不自由な妹がいる、お2人の友人から発想を得て作ったそうですね。
ダニー「友人の妹は目が不自由ですが自立心が強く、一人でバスに乗って出かけたいと家族に訴えていて、彼女の家族は心配していました。そんな自立したい子どもと、それを止める保護者という関係性に興味を持ったんです。アンディのモデルは友人、パイパーのモデルはその妹です。撮影前には彼らにセットに来てもらい、“この局面では、どんな動きをするのか”を実際にやってもらいました。僕らはそれをカメラに収め、アンディを演じるビリー(・バラット)に見せて演技の参考にしてもらいました」
――アカデミー賞ノミネートの実力派女優サリー・ホーキンスが演じたローラのヒントは、発想のもとになったという『何がジェーンに起ったか?』(62)からでしょうか?
ダニー「そうです。僕らはこの手のサイコ・ビディ映画(注:僻地に住み、家族や来客を脅かす欲求不満の年配女性を描いた、ホラーのサブジャンル)に恋しています。『何がジェーンに起ったか?』のベティ・デイヴィスはそれまでドラマ作品に出演していましたが、この映画でいきなりホラーに転向して観客を驚かせました。このように、従来のイメージとは異なる役をサリーが演じてくれたらおもしろいと思ったのです」
――発想を得た作品の一つに、ポン・ジュノ監督の『殺人の追憶』(03)も挙げておられましたが、これはどのような点でしょう?
マイケル「トーンを融合させ、かたちづくっていく手法です。例えば、『殺人の追憶』には陰鬱な場面であるにもかかわらず、同時に笑ってしまうような場面があります。そしてまた、この描写があるためにキャラクターへの共感も深まる。『殺人の追憶』に限らず、ポン・ジュノ監督はこのようなトーンの融合がとても巧いと思っています」
――冒頭のカルトな儀式の映像からして、かなり怖かったのですが、あの場面はどのようにつくっていったのですか?
ダニー「オカルトを信じている人々に話を訊きました。彼らが実際にしている儀式とはどういうもので、私たちはそれをどこまで参考にできるかを考えたんです」
マイケル「さすがにカルト教団には取材できませんでした(笑)」
ダニー「カルトではなく、“オカルト”を参考にしたんです(笑)」
