山田杏奈が異色作『NEW GROUP』の撮影で発揮した、俳優としてのしなやかさ「役に集中し、テーマについて考えすぎない」
想像を超える作品に出くわした時、俳優はいかにしてその世界の住人になるのだろう?『ミスミソウ』(17)や『樹海村』(21)といったホラー作品、近未来を舞台にした「17才の帝国」、あるいは第48回日本アカデミー賞の優秀助演女優賞と新人俳優賞を受賞した『正体』(24)ほか、経験豊富な山田杏奈をもってしても、下津優太監督の作家性がスパークした主演映画『NEW GROUP』(公開中)は驚きの連続だった。
SFサイコエンタテインメントと定義された本作は、「組体操」をモチーフに集団意識の恐ろしさを突き付ける野心作。ある日、校庭で1人の生徒が突如として四つん這いのポーズを取り始める。教師たちが説得を試みても聞く耳を持たず、次の日、また次の日と参加人数が少しずつ増えていく。まるで“感染”していくように…。引っ込み思案で自分の意志をうまく伝えられない女子高生・愛(山田杏奈)は異変におびえ、転校生の優(青木柚)と共に状況を打破しようとするが…。このあらすじを聞いただけでも、本作が異様な独自性に満ちていることは言うまでもない。
「自然と愛と同じような精神状態になっていた」(山田)
祖父母の家に里帰りした女性が恐るべき“しきたり”や“理”に遭遇する「持続可能な幸せ」の裏側をシニカルに捉えたSDGsホラーとでもいうべき斬新な下津監督の商業デビュー作『みなに幸あれ』(23)を観賞してその世界観に惹かれ、オファーを快諾したという山田。彼女自身がサイコホラーのジャンルファンであり、『ロブスター』(15)から『ブゴニア』(25)までヨルゴス・ランティモス監督作を追いかけ、『ゲット・アウト』(17)のジョーダン・ピール監督や『ミッドサマー』(19)のアリ・アスター監督をお気に入りに挙げているが、俳優として異界に足を踏み入れるのはまた別の感覚だった。「撮影はトータル2週間ほどの短さだったのでぐっと集中して臨みましたが、やはり“わからない”と思いながら演じている瞬間もありました」と告白する。お互いに「わからないけど、いいんだよね?」と共有しあえた青木の存在が支えだったといい、不可解さや異常さが際立つシーンの数々に挑んでいった。下津監督とも「今回は理屈で説明できない部分も多い作品です。言葉だけだとなかなかつかみきれないので、頭の中にあるイメージを教えていただくやり取りが多かった気がします」と振り返る。
ただ、『NEW GROUP』においてはその違和感が見事に寄与している。山田が演じた愛は、右へ倣え状態で人間ピラミッドに加わっていくクラスメイトたちやある秘密を抱えた家族といった、集団意識に染まらない自己(役名の“愛”は“I=私”から来ているそうだ)の持ち主であり、これまで行動にこそ起こせなかったものの他に左右されない芯の強さを有しているからだ。山田自身がいわば“異物”や“異端者”であり続けることが、主人公としての属性を纏わせるに至っている。本人も「私は役が抜けないことがあまりなくて家に帰ったら忘れてしまうタイプなのですが、今回はずっと作品の世界の中にいたため、自然と愛と同じような精神状態になっていたかもしれません」とシンクロ状態にあったと語る。同時に「愛は奇抜な世界と現実を繋げてくれる存在です。そのため大前提として人間味がしっかりあって、徐々に進化していく流れを意識していました」と本人も“わからなさ”を巧妙に演技へと変換していた。

