【ネタバレあり】『劇場版モノノ怪 第三章 蛇神』中村健治総監督&越田智明監督がシリーズ完結編に込めた想いと、思い描く「モノノ怪」の今後の展開

【ネタバレあり】『劇場版モノノ怪 第三章 蛇神』中村健治総監督&越田智明監督がシリーズ完結編に込めた想いと、思い描く「モノノ怪」の今後の展開

「ちょっとカジュアルな方向も意識したところはあります」(中村総監督)

——作品が好きな越田監督は第三章のお話をどのように感じましたか?

「モノノ怪」の作り方に慣れたところ!と振り返った越田監督
「モノノ怪」の作り方に慣れたところ!と振り返った越田監督撮影/興梠真穂


越田「作品を作っている間に子どもが生まれたこともあって、子ども絡みの話は身につまされるというか。独身の時に作品に携わっていたら、違う向き合い方をしていただろうなとは感じていました。テーマがテーマだったので、より作品に入り込めて作ることができた気がしています」

——今回は最終章となりますが、新生「モノノ怪」として届けてきた『劇場版モノノ怪』へのここまでの反響をどのように捉えていますか?強く記憶に残っている反響は?

中村「思ったより新しい人が観てくれていることにびっくりしました。最初はTVシリーズファンに向けての新しいコンテンツという意識が強かったのですが、反響を見ているうちに『あれ?』みたいな感覚になって…」

越田「海外の方からの反響も大きかったですよね」

中村「そこも含めて『あれ?』みたいな(笑)。劇場版で初めて『モノノ怪』に触れた方が思った以上に多くて、ちょっと意識を変えたところもありますね」

——意識を変えたという点を具体的にお聞かせください。

 中村総監督の願いは「モノノ怪」が広がること
中村総監督の願いは「モノノ怪」が広がること[c]ツインエンジン

中村「ずっと作品が好きと言ってくださっている方に向けて『どうだ!』という感じで作るだけではなく、劇場版で初めて触れた方にはちょっと優しくしてあげたいというか。激辛カレーを作っているつもりだったのですが、意外と普通のカレーを食べたい人も入ってくる雰囲気を感じたので、“普通”とか“1辛”も置いておこうみたいな感じです。「唐傘」が8辛だとすると、「蛇神」は3辛くらいになっているかもしれません。今後も斬る「モノノ怪」と「情念」によって辛さは決まるとは思いますが、ちょっとカジュアルな方向も意識したところはあります」

越田「食べる人によって味が変わるみたいなところもありますしね」

中村「そうそうそう!」


——越田監督は制作時にそのあたりは意識されていましたか?

越田「どのキャラに感情移入するかは、観ている方の人生や環境によって変わることはどの作品においても大なり小なりあるものだと思います。特に『モノノ怪』という作品に関しては、そういう成分がちょっと多いなということは感じていたし、そんなことを考えながら作っていました」

——キャスト陣も「言うことないくらいすばらしいお芝居をする方ばかり」とのお話も前回のインタビューの際に出ていましたが、第三章でのアフレコはいかがでしたか?

迫力の映像美
迫力の映像美[c]ツインエンジン

越田「ただただ幸せな時間を過ごさせていただきました。キャストごとに中村総監督が毎回キャラクターの説明をするのですが、自分が打ち合わせで聞いている言葉と違う言葉がどんどん出てきて。そこで初めての情報に触れたりする、みたいなこともありました」

中村「基本的には、初めて登場するキャラクターの説明ですね」

越田「第三章だと、例えば、最後に大奥にやってくる女の子たちとか」

中村「こちらの子は落ちついたしっかり者で、こちらの子はポジティブな子です…みたいな?」

越田「そうですね。あとは、中村総監督の過去作品からくる文脈もあったりして」

中村「声をお願いしたのが過去に監督させていただいた『ガッチャマン クラウズ』の主役のお二人だったので、そこにあわせてガッチャマンのモチーフである鳥をデザインに入れていただいたり、両作品共通のスタッフもいたのでさりげない遊び心もありました。一度ご一緒していると現場のノリを理解されているので、のびのびと演じていただけたかなと思います」

越田「『モノノ怪』に関しては、ゆかなさんが一番分かっているので、第三章で初めて入られる沢城(みゆき)さんと一緒に録っていただいて。ゆかなさんには『モノノ怪』の現場はこんな感じです、大奥はこんな感じです、みたいなレクチャーを委ねて」

中村「声優界の言語だと、こういう説明になるのか…なんて思いながら楽しく聞いていました。役者さんの引き出しにどのくらいのものが詰まっているのか、僕たちには正直計り知ることはできません。だから、できるだけみなさんの心をノックするような言葉を様々な角度からたくさんお伝えして、そのなかでその役者さんの“今日しか録れないなにか”に辿り着ければいいかなという気持ちでした。計算してやるというより、なにかに出会いたいみたいな心境です」

越田「こう来たか、みたいに感心させられることに出会える喜びというか」

中村「無理やり出してもらうよりも、お芝居のサポートをできればいいなという気持ちでした」

——緻密な作品なので、積み重ねて、微調整してというイメージを持ってしまいがちですが、第一章の時からわりとお任せしているようなお話をされていたのが印象的でした。もちろん、演じる方のタイプによるとも思いますが。

キンセンカの映像も圧巻
キンセンカの映像も圧巻[c]ツインエンジン

越田「ストーリーバイブルをちゃんと作って、それを頭に入れてもらうところで、もう仕事は終わっているという感じです」

中村「あれを読むこと自体が結構大変。前回もお話したかと思いますが、すごいページ数なので(汗)。説明はほぼ大体書いてあって、あとは『自分だったらどうする?』みたいなところを考えてもらって、現場でキャッチボールして調整する感じ。こういうキャラクターですと細かく書いてお渡ししたものに対して、役者さんからの疑問がビシバシと飛んでくる。それが刺激的でした。違うと感じることも出てきていい。そこで僕たちも考えて、なるほどとなれば調整する。そういう感じで作っていきました。アフレコ現場にはディレクターが全員集合しているので、監督陣、キャスト陣が皆で、ああしよう、こうしよう、なるほど、となり、じゃあキャラクターの表情も変えようみたいなことにもなる。こういうことをやるべきと思っている人たちが集まっている現場だったから、意見が出てもわりとスムーズにことが進む感じはありました」

越田「もちろん、大変ではありましたけどね(笑)」

中村「確かに(笑)。よくもまぁみんなしれっと『じゃあ、そこは変えて、こうしましょう!』みたいになるなと思ってはいました。普通はもっと緊迫するはずだけど」

越田「めちゃくちゃ尖っている作品なので、作品と同じくらい尖っている人が集まっていた印象はありますが、そういう手間をよしとする人ばかりでした。僕はどちらかというと尖っているというより、丸いタイプなのですが」

中村「アハハハ!でも、こういう現場をキャリア前半の頃に経験した演出さんたちが、これが当たり前と思っていたら…」

越田「『劇場版モノノ怪』に関わった演出さんの今後が楽しみです」

——スタッフさんのクレジットを細かくチェックしておいたほうがいいですね。

中村「間違いないです、出てきます」

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