Aマッソ加納&3時のヒロイン福田麻貴が『箱の中の羊』で感じた“俳優”大悟の凄み「感情がたかぶるシーンは本当に役者そのもの」
カンヌ国際映画祭コンペティション部門に出品され、是枝裕和監督、キャスト陣らが映画祭での公式上映で喝采を浴びた『箱の中の羊』が、5月29日(金)に公開される。本作は近い未来の日本を舞台に、息子を亡くした喪失感を抱えた夫妻がヒューマノイドの子どもを息子として迎え入れることによって始まる家族の物語だ。
主人公の音々を『海街diary』(15)でも是枝監督とタッグを組んだ綾瀬はるか。そして、その夫・健介を映画初主演となる大悟(千鳥)が演じていることでも話題となっている。初主演作にしてカンヌ映画祭に出品され、是枝監督から後ろ姿が「『菊次郎の夏』のビートたけしが重なった」と絶賛された大悟。その演技を芸人仲間たちはどう観たか。そこで、日ごろからバラエティ番組などで交流の深いAマッソ加納と3時のヒロインの福田麻貴がいち早く本編を視聴し、“俳優”大悟と作品の魅力を語ってくれた。
「“家族って意外とぼんやりした定義なのかもしれないな”って思いました」(福田)
――まずは『箱の中の羊』をご覧になった率直なご感想をうかがえますか?
加納「是枝監督の作品は『怪物』などを拝見していましたが、子どもたちを主体にしたストーリーはこれまでの作品と通ずるところがありますよね。『箱の中の羊』はAI搭載のヒューマノイドの子どもが登場しますが、だからこそ醸し出せる人間ドラマの圧倒的なリアリティがすばらしかったです。こんなヒューマノイドなんておるわけない、と思うはずなのに、綾瀬さんが演じた音々と大悟さんが演じた健介の夫婦が醸し出す空気感とコントラストがすごくマッチしていて驚きました」
福田「ヒューマノイドが出てくるSFではあるんですが、めちゃくちゃ普遍的なことが描かれているな、と感じました。しかも観る人によってとらえるところが変わるような、様々な問題提起がされていたことがすごい。私は家族の定義、家族の境界線というところに着目したんですけど、これを観てより一層“家族って意外とぼんやりした定義なのかもしれないな”って思いました」
――それはどうして?
福田「本当の親子関係のほうがうまくいってなかったり、仲間を“家族“と表現する描写などがあったからです。こないだ同世代の友達と話していた時、彼女は子どもが生まれてからは、自分にとっての“家族”は自分が生まれ育った家族よりも、自分が形成した家族のほうだと感じるようになったそうなんですよ。でも、それを将来、子どもから言われたらどう思う?って聞いたら“めっちゃ寂しい”って言うんですよね。親から親離れして、今度は子離れしないといけない時が来る。家族はそうやってスライドしていくんだなと考えていた時に、この作品を観たこともあって、このテーマは刺さる人がたくさんいそうだ、と感じたんです」
加納「『箱の中の羊』は本当の子になりたかった、したかった擬似親子の関係だけど、そういう見方もあるよね。これまで、是枝監督作に限らず人工知能や人型ロボットと人間の対話を描く映画は数々作られてきたけど、それってもうSFとも言いにくくなってきましたよね。だって今の技術がこのスピード感で進んだら、この映画の翔(かける)くんのようなヒューマノイドが出てくるのも時間の問題。そう考えると、リアルな私たちの世界での現在地ってどこにあるのかな、という恐怖もありつつ、2026年のいま、これがつくられた意味もあるな、って思いますよ」
「ある種の恐れを表現されている大悟さんには驚きました」(加納)
――では、お2人とも普段からお仕事でお付き合いのある大悟さんのお芝居はいかがでしたか?
加納「いつもの大悟さんとは全然違うはず…と思って本編を拝見したんですが、意外とそうでもなかったんですよ。普段から大悟さんは優しいんですが、そういった部分はもちろん、人間味あふれるところとか、素の大悟さんなんですよね。AIや子どもにどう接したらいいのかわからない大人、というのが健介だと思うんですが、そういった人が抱くある種の恐れみたいなところを表現されている大悟さんには驚きましたし、すごいなと素直に思いました」
福田「人間味、すごい出てましたよね。普段から人に真剣に向き合っている方っていうイメージだったので、それがそのまま出つつ、難しいお芝居をされていて。実は亡くなった父が大悟さんにめちゃ似てるんですよ。しかも私が小さいころに母が再婚した相手で、映画のなかの健介みたいに“突然父になった”人で。本当の親子ではないけど、お互い親子を演じているような戸惑いや距離感を経験しているので、大悟さんの演技のリアリティには驚きました。私の場合は、いまでは心から本当のお父さんだと思っているので、大悟さんのシーンを見ながら、演じることから本当の関係になっていくことってあるよな、と思っていました」
加納「思い出した。この映画に大悟さんが出るって告知が初めて出た時に、ちょうど『漫才ギャング』を観てたんですよ。そこで初めて、大悟さんのお芝居を拝見したので、告知を見て“これはすごいことになる”って思ったんですよね」
福田「しかも、是枝監督で綾瀬はるかさんと共演って!あ、ついに大悟さんの芝居のうまさが知れわたる、って思いましたね。長年漫才をやられているので、日常のシーンでセリフが自然なのは予想していたのですが、感情がたかぶるシーンでの気持ちの積み重ねとか、本当に役者さんそのものでしたよね」
