映画『#拡散』に込めた願いとは?白金監督と脚本・港岳彦が語る「なにを信じるか、どう生きるか」

映画『#拡散』に込めた願いとは?白金監督と脚本・港岳彦が語る「なにを信じるか、どう生きるか」

「情報とどう付き合うか、それこそが『#拡散』で描いていること」(港)

主人公の信治を演じた成田、新聞記者の福島役の沢尻。2人の演技についても「最高です」とコメントしている港。「成田さんはもともとすごく大好きな役者さんで怪優のイメージがあります。『スマホを落としただけなのに』を観た時に、『こういう役者を待っていた!』と思ったくらい大好き。一方で『愛がなんだ』で下北にいそうな兄ちゃんみたいな役も演じる、どっちもできる役者さんです。信治役が成田さんと聞いた時は正直、イケメンすぎると思ったんです。でも、映画では出てきた瞬間にしょんぼりとした兄ちゃんが出てきて(笑)。これはリアルだ!と思いました。成田さんは無理しない人。それがすごく良かったと思うんです。もっと派手にパフォーマンスできる場面はいっぱいあるのに、全部抑えて、実在の浅岡信治ならこうするじゃないかというところに徹しているのが本当にすばらしい。一番好きなのは、ライブ配信のシーン。信治に傾倒する男たちの一人とどんな話をしたかを部屋の中で語る場面で、質問に対して『えーっと…』と話し始めるあの高い声。調子に乗っている信治を見事に表現していると感じた瞬間です。細胞レベルでキャラクターを理解して、単語レベルで発声までなりきる。びっくりしました、本当に」と役になりきる成田を絶賛。

【写真を見る】『死ねよ、クソ田舎』は沢尻エリカに当て書きしたセリフ?
【写真を見る】『死ねよ、クソ田舎』は沢尻エリカに当て書きしたセリフ?[c]2026 #VIRAL PRODUCTION COMMITTEE

沢尻については「改稿中に、福島美波が沢尻さんと聞いて、言わせたいセリフをたくさん足しました(笑)。『死ねよ、クソ田舎』とかポンと投げる感じとか最高ですよね。独り言で毒づいているセリフは、沢尻さんが演じると決まってから足したものばかり。僕が単純に見たい!と思ったので、たくさん追加させてもらいました。最初はジャーナリズムとはなにか?みたいなことばかりを言っているキャラクターにしようと思っていたのですが、沢尻さんが演じるなら、それだけではもったいない。はみ出ることをやっていただきたいという想いもありました。本読みにも参加したのですが、沢尻さんが喋った瞬間に、言葉が音楽みたいに聞こえて惚れ惚れしました。天才だと思いました。出てくれたことに感謝しかないです!」。

“嘘と噂は拡がる”、虚実あふれる情報に翻弄された男の物語が描かれる本作。港にも自身の嘘と噂との向き合い方についても尋ねてみた。「嘘と噂に翻弄されてばかりです。リテラシーもなにもなく、たやすく騙されるし、そうなの?ってすぐに本気にしてしまいます。なので、人に教訓を述べる立場ではまったくない(笑)」と冗談混じりで笑い飛ばしつつ、SNSとは距離を置くのではなく、うまく付き合うようにしたいとも語る。「事実上、SNS自体が現実を作り出していく大きな装置になってしまっています。そこから離れて生活することは不可能だと思っています。情報とどう付き合うか、それこそが『#拡散』で描いていること。僕はインターネットの専門家でもないので、どう向き合うかの正解はわかりませんが、ものすごく平凡なことに戻るというのが僕は結構大事な気がしていて。人の体温、対面であること、実在するもの、現実にあるものを重視していくという、すごくアナログな意見だけどそこに尽きると思っています。SNSに文章を書く時、自分もそうなのですが、力を込めて書いたにせよ、気軽に書いたせよ、感情的になったにせよ、別物なんです。もはや書いた時点で、なにか違うことになっている。そして受け取る人間はさらに別のこととして受け取っていく。それがSNSというかインターネットの特性のように感じています。見る分にはいいと思っていますし、見ないと時代がわからないとも思っているので、避けることはしていません」。

映画『#拡散』は2月27日(金)公開
映画『#拡散』は2月27日(金)公開[c]2026 #VIRAL PRODUCTION COMMITTEE

『#拡散』は「失敗の歴史の話」と話す港。「人がどう失敗するのかという話を描いている気がします。映画を観て、インターネットでの距離の掴み方を学べるかと言ったら、別にそういうことは描いていないし、教えていません。ただ、人は失敗するということがわかってほしいかなとも思っています。信治は人の死を悲しめず、身の丈以上のことをやる。そういう人間の限界みたいなことを詰め合わせているつもりです。とても平凡な話ですが、平凡だからこその怖さもある、身近に感じていただけるのではないかなと思っています」。


取材・文/タナカシノブ

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