映画『#拡散』に込めた願いとは?白金監督と脚本・港岳彦が語る「なにを信じるか、どう生きるか」

映画『#拡散』に込めた願いとは?白金監督と脚本・港岳彦が語る「なにを信じるか、どう生きるか」

富山県のとある小さな町を舞台に、虚実あふれる情報に翻弄された男が深い喪失と疑念に苛まれていく物語を描いた映画『#拡散』(2月27日公開)。主人公の介護士、浅岡信治は、妻の明希をワクチン接種直後に亡くし、医師を責め遺影を掲げて訴え続ける。その姿は、「夫婦愛の象徴」として報じられるも、いつしか反ワクチンの象徴として利用されるようになり、信治は孤立と狂気を深めていく。その姿は愛か狂気か、観客に静かに問いを投げかける。主人公の信治を成田凌、信治が遺影を掲げる姿を「夫婦愛の象徴」として紹介する新聞記者の福島美波を沢尻エリカが演じている。

映画『ゴールド・ボーイ』(24)で製作総指揮を務めた白金(KING BAI)が原案、企画、監督を手掛け、『宮本から君へ』(19)や『正欲』(23)などで知られる港岳彦が脚本を務める。富山県オールロケを行った本作が、撮影地の上市町に凱旋したその日に、企画の立ち上げを振り返りながら、作品に込めた想いを白監督と港に語ってもらった。

「自分が生きている時代で一番大きい出来事をテーマにしたいという想いがあった」(白)

承認欲求を満たすためならなんでもするという妻に、嫌悪感は抱きながらも抗えなかった信治
承認欲求を満たすためならなんでもするという妻に、嫌悪感は抱きながらも抗えなかった信治[c]2026 #VIRAL PRODUCTION COMMITTEE

情報があふれる社会において、「なにを信じるか」「どう生きるか」を考えるきっかけになってほしいという願いを込めたという本作のテーマを思いついたのは、コロナ禍だったと白監督は振り返る。「いつ収まるかわからないコロナ禍は、僕自身非常に不安だったし、まるでSFの映画の世界にいるような感覚がありました。間違いなく21世紀上半期で、人類史上一番大きな出来事のはず。初めて監督として映画を撮るなら、自分が生きている時代で一番大きい出来事をテーマにしたいという想いがあったのと、辛いことは忘れたいというのが人間としての心情ですが、少し記憶から消えかけている感じがあるいまだからこそ、きちんと振り返って向き合う必要があると考えたのが、この映画を作ろうと思ったきっかけです」。

撮影・照明の宗賢二郎のアイデアで白監督、脚本の港らがシナリオハンティングに訪れた富山県上市町を中心に、富山県でオールロケを敢行した。「山もあれば海もある。田んぼもあって町もある。映画に詰め込みたい要素のすべてが集まった場所でした。立山連峰を見た瞬間、映画に説得力を与えられると確信しました」とシナハンでの印象を語る白監督。山は本作においていろいろな意味を持つ存在だ。「山は映画でとても重要な要素の一つです。主人公の信治の趣味は山でキャンプをすること。非常にきれいな景色でありながら、山の向こう側には海があってアジア大陸も広がっている。山が、“壁”にもなると感じました。山に始まり山に終わるという映画の象徴的なシーンに登場するという意味でも、観る人がいろいろなことを感じ取ってくれるような存在になると思っています」と説明した白監督は劇中のセリフに触れ、「『きれいな風景のなかで、人間はなにをやっているのか』。自然に恵まれ、すごく美しい風景に囲まれているにもかかわらず、その風景を無視してネット上のことや、現実の社会に振り回される人間の無力さを描きたいと思いました」と想いを明かす。


果てしなく続く山景色のなか、妻の遺影を手にさまよう信治
果てしなく続く山景色のなか、妻の遺影を手にさまよう信治[c]2026 #VIRAL PRODUCTION COMMITTEE

メインロケ地となった富山県上市町の人々のあたたかさにも触れることができたと、撮影時の町の様子を振り返る。「皆さんが熱心に作品を応援してくれました。毎日誰かしらが差し入れをしてくれるし、撮影しているのを見かけると、『頑張って!』と遠いところからでも声をかけてくれる。フィルムコミッションの方はもちろんですが、地元に住んでいる方も、あたたかく迎えてくれたのは僕たちの力になりました」。特に印象に残っているのは神社で行ったお祭りのシーンだという。「12月のとても寒い時期の雨の中で、しかも、地元の皆さんが住んでいる場所からは少し離れたところにある神社での撮影だったのですが、駆け付けてくれて、普段のお祭りで行われていることを全部再現してくれました。道具も食器も鍋も、全部現地のお祭りでいつも使われているものを出してくれて、映画にリアリティをもたらしてくれました」と笑顔で感謝を述べる。

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