新感覚の青春ホラー『とれ!』人気動画クリエイターのコウイチ監督と主演の中島瑠菜が語る、撮影の裏側「同じことをやり続ければ、大きな力になる」

新感覚の青春ホラー『とれ!』人気動画クリエイターのコウイチ監督と主演の中島瑠菜が語る、撮影の裏側「同じことをやり続ければ、大きな力になる」

――たくさんの人が集まって挑む映画制作を通して、新たな発見や醍醐味を味わったことがあれば教えてください。

コウイチ「YouTubeでは、基本的に1人でカメラを置いて、録画ボタンを押して撮影をするだけ。一方、映画ではアングルを変えるたびにセッティングをして、それを繰り返していくという本当に地道な作業だなと思いました。そんななかでカメラマンさんがアングルについて提案をしてくれて助けられたり、また芝居の解釈においては人それぞれ違うものがあったりと、そういった部分もすごく興味深くて。文化祭のような熱気と言いますか、1本の映画を撮るという同じ目標に向かって、ものすごい人数が動いているという状況がとてもおもしろかったです。僕は映画って、主演や監督のものだというイメージがあったんですが、みんなで作り上げるものなんだということを痛感しました。ただそこですべての責任を負うのは、監督。みんなで作って、みんなのものだけれど、責任は監督が負う必要があるなと感じています」

撮影中にカマキリを見つけて喜ぶ無邪気な一面を見せてくれたコウイチ監督
撮影中にカマキリを見つけて喜ぶ無邪気な一面を見せてくれたコウイチ監督撮影/河内彩

中島「私もみんなで一つの方向に進んでいる時はとても楽しいですし、1人ではできないことをやらせてもらっているなと思うと、ありがたいと同時に、幸せだな、恵まれているなとうれしくなります。本作の終盤で、皐月ちゃんが太鼓をドンドコと叩いている除霊シーンがあります。私はそのシーンを外から見ていたんですが、キャストの皆さんだけでなく、スタッフさんもものすごく楽しそうに臨んでいて、カットがかかるとみんなで笑顔になって。ものすごい一体感を覚えて、この楽しさやおもしろさは、映画を観ている方にも伝わるんじゃないかなと思いました」

コウイチ「ものすごく笑えるシーンですよね。太鼓の音が鳴り響くなかで霊能者の浅野が激しく動いて、霊に取り憑かれたおじさんの背中をぶっ叩いて(笑)。浅野役の和田雅成さんには、事前に織田無道さんの除霊動画を観てもらったんです。和田さんは、声が枯れるくらい全力でやってくれました。やはりああいうシーンでも、まじめにやればやるほどおもしろくなるものなんだなと感じました」

霊能者、浅野斗真役を和田雅成が演じる
霊能者、浅野斗真役を和田雅成が演じる[c]2025 「とれ!」製作委員会

――「kouichitv」もシュールな世界観が人気ですが、笑いを巻き起こす秘訣は「まじめにやること」にあるのでしょうか。

コウイチ「そうですね。『これ、おもしろいでしょう?』とやらないこと。『ここは笑わせに来ている』という思惑を隠すと、シュールな笑いが生まれるのではないかなと。いやらしさを消すのが大事かなと感じています。僕は基本的に、動画にはツッコミを用意しないようにしていて。自分で自分にツッコむと寒くなってしまうような気がするので、作り手としてはツッコまず、皆さんに自由に笑ってもらうのがいいのかなと思っています」

「撮影が終わる時にも、自然と感慨深い気持ちになっていました」(中島)

――本作を撮りあげ、これから取り組んでいきたい方向が見えて来たことはありますか。

コウイチ「無駄な雑談など、会話劇が好きなんだなと思いました。もっと会話劇を作ってみたいという想いもありますし、怖さに特化したホラーもやってみたい。また青春ものに振り切って、文化祭の1日を切り取った映画も撮ってみたいですね。いろいろとやりたいものはありますが、まだ監督としては若いほうなので、まずはちゃんと売れるものを作りたいです。そこから、マニアックなものも作れるような監督になれたらすごくうれしいです」

中島瑠菜は、演じた美咲から「背中を押された」と話した
中島瑠菜は、演じた美咲から「背中を押された」と話した[c]2025 「とれ!」製作委員会

――等身大の役柄で単独主演を務めた中島さんにとって、本作はどのような作品になりましたか?

中島「私が現役でできる、最後の高校生役です。高校生活が終わるという節目を美咲と一緒に経験できたことは、とても大切な思い出になりました。進路を決める時期に出会った作品ですが、前向きに進んでいく美咲ちゃんから、私自身、背中を押された部分もあります。きっと思い出すことが多い作品だろうなと、撮影が終わる時にも自然と感慨深い気持ちになっていました」

――コウイチ監督は動画クリエイターとしての活動が、スクリーンで上映される長編映画の監督業につながりました。どのように歩んできた結果、いまがあると感じていますか。

コウイチ「同じことをずっとやり続けていると、大きな力になるものなんだなと感じています。YouTubeを始めて13年が経ちましたが、たくさんの人に観てもらえるようになったのは本当にここ数年の話で、自分としてはなにかすごいことをやっているという感覚はなくて。今回の映画についても、お話をいただいたことに対してきちんとやり遂げようという想いで進んできたので、すべては目の前のものにコツコツと取り組んできた結果かなと思っています。予告編を公開してからは、地元の友だちや親戚からも『映画を撮ったのか』と連絡が来たりして、気付いたらすごいことになってきたぞと。これからもっと『とれ!』がたくさんの劇場で観てもらえるように広まって、家族や友だちにも『僕も頑張っているよ』と伝えられるような映画になったらとてもうれしいです」

――ホラー映画の撮影では、恐ろしい現象が起きることもあると伺います。本作の撮影現場はいかがでしたか?

コウイチ「皐月の家のシーンで、そこにいるはずのない女性の声が入っていたんですよ。仕上げの際にスタッフさんが消去しているので、本編には入っていませんが…。あと、まいきちさんと和田さんは霊感が強いらしく、喫茶店のシーンで『キッチンのほうになにかいる、なにか感じる』みたいな話をしていましたね。僕はそのあたりに待機していたので、怖かったです!あと霊的なものかはわかりませんが、終盤で和田さん演じる霊能者が除霊をするシーンで『それだ!』と声を上げる場面で、ノイズが入っています。それは編集で追加したものではなく、テープに入っていたノイズを活かそうということでそのまま使用しています」

恐ろしいものがいた(?)という噂の喫茶店のシーンにはコウイチ監督も出演しているので必見!
恐ろしいものがいた(?)という噂の喫茶店のシーンにはコウイチ監督も出演しているので必見![c]2025 「とれ!」製作委員会

中島「たしかにまいきちちゃんは、『ここは大丈夫だよ』『ここはヤバいかも』とよく話していました。実はいろいろとあったんですね…。そんななかでも撮影は幸せに、楽しくやらせていただきました!」


取材・文/成田おり枝

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