“震災前の能登”を残した『港のひかり』、輪島に戻ってきた1日に密着…舘ひろし「感謝と応援の気持ちを伝えたい」

“震災前の能登”を残した『港のひかり』、輪島に戻ってきた1日に密着…舘ひろし「感謝と応援の気持ちを伝えたい」

約700人の喝采が鳴り響く!ジャパンプレミアでレッドカーペットを闊歩

眞栄田郷敦&尾上眞秀、大歓声を浴びながらレッドカーペットを闊歩
眞栄田郷敦&尾上眞秀、大歓声を浴びながらレッドカーペットを闊歩

夜にはいよいよジャパンプレミアが行われ、舘や眞栄田、尾上だけでなく、黒島結菜、斎藤工、笹野高史、藤井道人監督がズラリと出席。当初は野外での上映が予定されていたが、大雨の影響で日本航空高等学校石川の体育館に場所を移して実施され、集まった約700人の喝采が鳴り響くなか登壇者がレッドカーペットを歩いた。

「プレミア試写会は、輪島でやりたかった」と力を込めた
「プレミア試写会は、輪島でやりたかった」と力を込めた

「この映画は一昨年の11月、12月、輪島を中心とした能登半島で撮らせていただいた映画です。その直後に震災があり、皆さんきっと、大変だったと思います」と口火を切った舘は、「いや、僕らが想像するよりももっと大変だったと思います」と改めて述べるなど地元の人々の心情に寄り添い、「この映画には、震災前の美しい能登がいっぱい残っています。最後まで楽しんでいただければと思っています」と挨拶。「プレミア試写会は、輪島でやりたかったんです。実現できて、本当によかったです。ありがとうございます」と喜びをにじませると、舘の熱意を受け取った会場から大きな拍手が上がった。

眞栄田郷敦、舘ひろしへの憧れを吐露
眞栄田郷敦、舘ひろしへの憧れを吐露

そして中橋委員長が本作に“希望のバトン”を感じたように、舞台挨拶でもそれぞれが“継承”の想いを胸にしていたことが明かされた。眞栄田は「舘さんと出会わせていただいて、僕の価値観は本当に変わりました」と告白。「男としても役者としても、いろいろなことを学ばせていただいた。いろいろな言葉をかけてくださった。今回は舘さんが主演ということで、言葉以上に、主演はこうあるべきなんだと背中で見せていただいた。周りへの気配り、やさしさ、ユーモアなど、本当にステキな方だと改めて思っています」と演じた幸太と同様に、舘からもらった愛情は宝物だという。

手を振って歓声に応えた眞栄田郷敦
手を振って歓声に応えた眞栄田郷敦

『ヤクザと家族 The Family』(21)でも舘とタッグを組んでいた藤井監督は、「父のようなやさしい姿で、たくさんのことを教えていただける」と舘に最敬礼。「石原プロの時代のものづくりや、おもしろい映画体験をたくさんお話ししてくださる。今回も楽しかったなという思い出しかない。舘さんと脚本を一緒に作る時には、舘さんの部屋に行けるんです。バスローブの舘さんと打ち合わせをしていた時は、すごく幸せな時間でした」と裏話を披露すると、会場も大盛り上がり。続けて「郷敦さんは、10代のころから注目していて。いつかご一緒できればと思っていました」と眞栄田とは念願の共同作業になったといい、「精神年齢が、僕の10個くらい上(笑)。こんなに頭のいい、20代の俳優はいないです。こんなにカッコよくて、こんなに真面目で、やさしくて、それでいてやんちゃで。次にどんな役でオファーしようかなと悩んでいます」と自身にとって、ワクワクするような俳優である様子。

「とてつもない継承の現場に立ち会えるという、興奮があった」と話した斎藤工
「とてつもない継承の現場に立ち会えるという、興奮があった」と話した斎藤工

それぞれの世代の俳優の魅力を捉えた藤井監督だが、撮影現場では86歳の木村キャメラマンと共闘した。藤井監督は、「これから自分が映画界にできることはなんだろうと思った時に、自分たちの世代だけではなく、先輩たちから教わること。“継承”ということを考えた。先輩たちがやってきた歴史をリスペクトして、盗んでいく。そして下に伝えていく。そういう想いで挑んだ」と力強くコメント。ヤクザの組員である八代龍太郎役の斎藤は「藤井作品で、大作さんと舘さんがいて。とてつもない継承の現場に立ち会えるという、興奮があった。食らいついていくしかないと思った」と奮い立つものがあったそうで、自身の眉毛を剃り落として役作りにトライ。「剃ったあとに、生えてこない場合があると聞いて」と会場を笑わせながら、「かろうじて生えてきたのでよかったんですが、生えてこなくても(いいと思うくらい)、この先の仕事を考えない時間だったなと思います」と充実感を握りしめた。

観客と一緒にフォトセッションに臨んだ
観客と一緒にフォトセッションに臨んだ

幸太の恋人である浅川あやに扮した黒島や、三浦と幸太を見守る荒川定敏役の笹野も映画を届けられる幸福を抱き、ジャパンプレミアの締めくくりには会場と一緒にフォトセッション。ここでもメンバーは、至近距離で対面が叶ったファンとハイタッチや握手を交わすなど、最後まで気さくな笑顔で会場を熱狂させていた。この日、舘は自ら歩み寄り、常に地元の声に耳を傾けていた。眞栄田は、「こちらが元気をもらった」と歓迎が身に染みたと何度も伝えていた。町には笑顔があふれ、スターの存在や魂のこもった映画、そして温かな触れ合いは、人々の元気を呼び覚ますものだと実感できるような1日となった。


取材・文/成田おり枝

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