日本語を習得して挑んだハン・ヒョジュが振り返る「匿名の恋人たち」の撮影の日々。信頼する“オッパ”小栗旬は「本当にありがたい存在」
「春のワルツ」「華麗なる遺産」「トンイ」といった主演ドラマで韓国を代表する俳優となったハン・ヒョジュ。近年も日本の映画『太陽は動かない』(21)やディズニープラスの大ヒットドラマ「ムービング」など、話題作に立て続けに出演している。そんな彼女が日本に1年住み、日本語を特訓して臨んだ最新作がNetflixシリーズ「匿名の恋人たち」だ。
『ビューティー・インサイド』(15)のプロデューサー、イム・スンヨンや『君の膵臓をたべたい』(17)の月川翔監督ら日韓のトップクリエイターが集結して制作された本作でハン・ヒョジュが演じるのは、過去のトラウマが原因で他人の視線に恐怖を感じて目を合わせられない天才ショコラティエのイ・ハナ。ハナの恩師が遺したチョコレート店を潔癖症の御曹司・藤原壮亮(小栗旬)と協力しながら立て直すうち、2人が惹かれあっていくラブストーリーだ。かつて『ビューティー・インサイド』でもハン・ヒョジュにインタビューをした経験のある西森路代が、久々のロマンス作への出演となった彼女に日本語の特訓の日々や相手役を務めた小栗旬との関係系、さらに韓国エンタメ界の現状を聞いた。
「撮影現場のみんなと別れるのがつらくて、20年間俳優をやっていてこんなに泣いたことないってくらい泣きました」
――実は『ビューティー・インサイド』でもハン・ヒョジュさんにインタビューしたことがあったんです。今回、『匿名の恋人たち』の作品のオファーを受けて、やってみようと思った決め手はどんなところにありましたか?
「この作品のプロデューサーがまさに『ビューティー・インサイド』のプロデューサーさんだったんです。その後も何本も一緒にお仕事もしていて、信頼関係もありました。ちょうど私がCMの撮影でヨーロッパにいたときに、そのプロデューサーから電話が来て、『ちょっと代わるね』って言って出てきたのが小栗旬さんだったんです。それで私も驚いていたら、プロデューサーに『来年のスケジュール空いてる?』って聞かれて、オファーされたんです。信頼していたプロデューサーからの話だし、私も機会があれば日本でもっと仕事がしたかったし、いい挑戦になりそうな作品だと思いました。そして脚本をもらい、それがおもしろかったので、やってみよう!と思ったんです」
――劇中、乗っていた車が動かなくなったところでの小栗さんとのやりとりがすごく自然でコミカルでよかったです。
「現場に行くと、その場の空気感とかでお芝居が変化することは多かったです。特に(小栗)旬さんも赤西仁さんもナチュラルな人で、お芝居もすごく自然にやっているんですよね。だから、お芝居とかコメディをやっているとか全然そういうことを考えないで演じていました。編集をしたものを見たら、おもしろくなっていて良かったです。それはもう、共演している俳優さんたちと、その場の雰囲気によるものだと思います」
――撮影現場では、アドリブもあったんでしょうか?
「私の場合は母国語ではない日本語でお芝居しないといけないので、撮影する前にイントネーションなどを日本語の指導の方に録音してもらって毎日それを聞いて練習して全部覚えて撮影に臨んでいました。なので最初のうちはアドリブで演技をすることは難しかったですね。でも、ちょっとずつ慣れてきて、後半の撮影では、アドリブもできるようになりました。『地獄耳ですね』というセリフがあるんですけど、それはアドリブです。撮影に入る前に、脚本をアップデートするための会議をたくさんしたのですが、毎日のようにセリフの更新があったので本当に大変でした。私の場合、その作品が終わるとセリフのことはすぐに忘れるタイプなんですけど、今回は今も覚えているセリフが多いです」
――作品に入るまでにも、相当、日本語を習得する努力を重ねたんじゃないでしょうか。
「そう言ってもらえて本当によかったです。とても心配していましたし、プレッシャーでした。迷惑をかけたくないじゃないですか。これまでにも日本語を話す作品には何度か出演したことはあったんですが、そこまで長い撮影期間ではなかったんです。でも、今回この作品で長い間日本で過ごしていくうちに少しずつ日本語の能力が伸びていった感じです。去年1年間は特に頑張りました。福永朱梨ちゃんという俳優さんが、私のために1年間日本語を指導してくれたんですね。本当に一生懸命でありがたかったし、私も頑張ろうと思えました。本当にたくさんの方たちに支えてもらって感謝しかないです。韓国の俳優として日本に来て、うまくやりたいという気持ちと、これを見て頑張ったんだなと思ってほしかったし、実際に頑張ってきたから、無事に終わった安堵感で何度も泣きました。みんなと別れるのもすごくつらくて、これまで20年間俳優をやっていて、作品が終わるときにこんなに泣いたことないってくらい泣きましたね」
――小栗さんというのは、どんな存在でしたか?
「本当にありがたい存在でしたね。よくおいしいご飯を食べにいこうと言ってくれました。私は旬さんのことを『オッパ』と呼んでるんですけど、ただの共演者ではなく、友だちのようになれたと思いますし、これからももっと仲良くしていけるんじゃないかと思います」