「結局、世の中見た目?」ゆりやんレトリィバァが赤裸々に語る、SNSでの批判と『サブスタンス』から得た“活力”

インタビュー

「結局、世の中見た目?」ゆりやんレトリィバァが赤裸々に語る、SNSでの批判と『サブスタンス』から得た“活力”

「“見た目”は大事とあらためて突きつけられる。それが活力にもなる」

年齢を重ねるにつれ人気が低迷し、世間から忘れ去られていったエリザベス
年齢を重ねるにつれ人気が低迷し、世間から忘れ去られていったエリザベス[c]2024 UNIVERSAL STUDIOS

――本作の大きなテーマの一つとして“ルッキズム”があります。先ほどお話にあったクライマックスシーンについて、コラリー・ファルジャ監督はインタビューで「魂の解放」と表現されていますが、ゆりやんさん自身はどのように解釈しましたか?

「自分が年老いていくことを受け入れられずに抗って、“いま”というものを無視して過去の栄光や若さにすがるのは醜いとか、若さや美しさがすべてじゃないなんてことが最近はよく言われていますが、私がこの映画を通して感じたことは、あえて言葉を選ばずに言うと『結局、世の中見た目やん』ってことです。“見た目”というのはルックスの美醜だけではなく、その人が与える印象なんかも含めてという意味です。実際、深く知らない他人のことなんて上っ面の部分しかわからないよね、と感じることがあります。

デミ・ムーアは『サブスタンス』の演技で、キャリア初のゴールデン・グローブ賞を受賞し、完全復活!
デミ・ムーアは『サブスタンス』の演技で、キャリア初のゴールデン・グローブ賞を受賞し、完全復活![c]Everett Collection/AFLO

私自身、アメリカに来てから仕事をゲットするためにいろんなところへ挨拶に行ったりオーディションを受けたりしているのですが、日本にいた頃は吉本興業という大きな会社に所属しているから、それに甘えさせてもらうことができました。それこそ『インスタのフォロワーが100万人いるから』なんて理由でお仕事ももらえていた。

でもアメリカでは、これまでの全部が『だからなに?』と一蹴されてしまっていて。そうなると自分の実力はもちろん、華やかさだったりといった見た目も審査される。自分がいまできることを追求していきたい、自分の良さを見てほしいと思っても、結局は上っ面の評価があってこそだと思うんです。本作のクライマックスで、とんでもない姿になっていたぶられているエリザベスを見ていると、いくら反ルッキズムを掲げたとしても、やっぱり見た目は大事なんだとあらためて突きつけられたような気がしました。

最近、アメリカでようやく免許を取ることができて、うれしくなって踊ってる動画をインスタにアップしたんです。それでネットニュースを見ていたら、その投稿がいつのまにか記事にされていて。なんでわざわざ?と思ったんですが、見出しに『45kg減量したゆりやん』『美ボディ披露』とか書かれていて。わざとそういう見出しをつけて、私を叩かせようとしているんだろうという意図はわかりますよ。減量も何年も前の話だし…。案の定コメント欄には、『女芸人をブスいじりできなくした張本人』とか書きこまれていました。

でも見た目が重視されるのって仕方ないことでもあって、『サブスタンス』は反ルッキズムの流れのなかであえて、『人は見た目じゃない』とか『すべての人が、ありのままで美しい』みたいなことに対して『みんな本当に思ってる?』『そろそろしんどくない?』と囁いてくれているような気がします。女性の多くが思っていたとしてもなかなか言えないことを、代わりに言ってくれているような。それを女性のファルジャ監督が物語のなかで表現してくれたということが大きい気がします。『綺麗なもんは綺麗やし、ブサイクなもんはブサイクやねん』って。その潔さがすごく気持ちいいんです」

ゆりやんは、反ルッキズムの流れのなかで出てきた本作について、「潔さが気持ちいい」と魅力を熱弁
ゆりやんは、反ルッキズムの流れのなかで出てきた本作について、「潔さが気持ちいい」と魅力を熱弁[c]2024 UNIVERSAL STUDIOS

――最後に、『サブスタンス』が気になっているけれどまだ観ていないという人に向けて、一言お願いします。

「『とにかく観ろ』の一言に尽きますね(笑)。年齢や性別を問わず、成功したいともがいている人にとっては、間違いなくパワーや生きる活力がもらえる映画です。私も『もっと売れたい、めっちゃ売れたい』と毎日空に願っていますが、エリザベスの選んだ道を反面教師として、こうじゃない方向で頑張ろうと思います」

――ゆりやんさんのネタのシュールさやシニカルさと、『サブスタンス』という映画の狂気じみた笑いには非常に近いものを感じます。

「そうですね、できれば大笑いして観てほしいですね。これは私の考えですが、創作物を観る時に“いい子”になんてならなくていいと思います。あくまでフィクションなので、『可哀想だから笑っちゃいけない』とか、『これはこういう教訓なんだから』とか、自分の感情にリミッターをかけなくていいと思うんです。“いい子”にならずに、ただ笑いながら観てほしい。ショックを受ける人はショックを受ける映画やと思います。でもその絶望も含めてこの映画でしか味わえない経験なので、とにかく観てほしいですね」

『サブスタンス』は公開中
『サブスタンス』は公開中[c]2024 UNIVERSAL STUDIOS


取材・文/PRESS HORROR編集部

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