“芸術は世界を変える”カンヌで示された映画の力。パナヒ監督が三大映画祭制覇の快挙、アワード戦略が得意なNEON、MUBIの躍進も
デビュー作に続き、早川千絵監督『ルノワール』がカンヌで話題に
日本映画は公式セレクションに複数の作品が出品され、存在感を示した。コンペティション部門には早川千絵監督の『ルノワール』(6月20日公開)が唯一の日本映画として選出され、ワールドプレミア後には主演の鈴木唯のみずみずしい演技や浦田秀穂の撮影に賞賛の声が上がった。早川監督は、映画祭会期中にケリングが主催した「ウーマン・イン・モーション」のトークイベントで是枝裕和監督と対談し、主人公フキと同じ年齢の頃に映画を撮りたいと思い始めたきっかけについて、「自分がこれまで言葉にできなかった感情が映画で描かれているのを観て、“この映画を作った人は私の気持ちをわかってくれて、こういう誰かが世界のどこかにいるんだ”と思いました。その誰かは別の国の人かもしれないし、自分とは違う時代に生きていた人かもしれない。場所と時間を超えてソウルメイトのような、誰かと気持ちがつながる経験をして、映画に惹かれていきました」と語った。10代の頃の早川監督のように、『ルノワール』を通じて、90年代の日本の少女に共感する観客もいるだろう。見知らぬ誰かとつながる感覚、それが映画祭に参加する醍醐味である。
そのほか、「ある視点」部門に石川慶監督の『遠い山なみの光』(9月5日公開)、「カンヌ・プレミア」部門に深田晃司監督の『恋愛裁判』(2025年冬公開)、「ミッドナイト」部門に川村元気監督の『8番出口』(8月29日公開)、「監督週間」に李相日監督の『国宝』(6月6日公開)と団塚唯我監督の『見はらし世代』(2025年秋公開)などが出品された。また、映画学校の学生作品を対象としたラ・シネフ部門では、田中未来監督の『ジンジャー・ボーイ』(24)が3等賞を受賞した。日本映画が公式セレクションの複数部門に多数選出されたことは、国際的な映画界における日本映画の地位向上を示している。