ジャッキー・チェンがツルツルの20代に!デ・ニーロ、ウィル・スミスなどディエイジング技術で若返った世界のおじさん俳優たち
パトリック・スチュワート&イアン・マッケラン…『X-MEN:ファイナル ディシジョン』
このように近年、多くの作品で用いられている“ビューティーワーク”と呼ばれるVFXによるディエイジング処理。そのなかでも最初に注目を浴びたといわれるのが『X-MEN:ファイナル ディシジョン』(06)だ。冒頭の“20年前のシーン”でプロフェッサーXとマグニートーを演じるパトリック・スチュワートとイアン・マッケランの顔が、その道のエキスパートであるLolaVFXの技術によって若返っている。
ブラッド・ピット…『ベンジャミン・バトン 数奇な人生』
この映像が話題を呼ぶと、80歳で生まれ、年を重ねるごとに若返っていく青年の波瀾万丈の人生を描いた『ベンジャミン・バトン 数奇な人生』(08)では「Mova」というカメラシステムを用いて、ブラッド・ピットの表情を何台ものカメラで撮影。膨大なデータを集積しデジタル加工を施すことで、年老いた姿から若い姿までを作り上げ、数奇な物語を実現した。
ロバート・ダウニー・Jr.…『シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ』
『シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ』(16)では、トニー・スターク(ロバート・ダウニー・Jr.)がマサチューセッツ工科大学での過去を拡張し再構成する最新のテクノロジーを実践するスピーチシーンで、20代のトニーが登場。数分間のためにおよそ4000フレームをも費やし、VFXで若きダウニー・Jrを作り上げた。
サミュエル・L・ジャクソン…『キャプテン・マーベル』
同じくMCU(マーベル・シネマティック・ユニバース)では『キャプテン・マーベル』(19)でもディエイジングを実施。ニック・フューリー役のサミュエル・L・ジャクソンが25歳ほど若い姿で登場する。もともとシワなどが少ないサミュエルは、単純にシワを取れば若返るという余白が少なかったそう。そのため筋肉組織や肌のきめ、首やあごへの重さのかかり方など、より生理学的な変化に基づいてVFXが作られていったそうだ。
ウィル・スミス…『ジェミニマン』
また、ウィル・スミス演じる主人公が自分自身の若いクローンと戦うことになる『ジェミニマン』(19)では、カメラで徹底的にスミスの表情をスキャンしたうえ、テレビシリーズ「ベルエアのフレッシュ・プリンス」や『バッドボーイズ』(95)など、かつての作品から集めた表情をデータ化。さらに表情の変化を捉えるために顔にドット模様をつけたウィルの演技とデータを組み合わせることで、23歳のウィルを作り上げてみせた。
ロバート・デ・ニーロ、アル・パチーノ…『アイリッシュマン』
1949年から2000年までのアメリカの裏社会を、ロバート・デ・ニーロ、アル・パチーノ、ジョー・ペシの共演で描いたマーティン・スコセッシ監督作『アイリッシュマン』(19)。本作ではトラッキング・ドットでの撮影をスコセッシが嫌ったため、監督用の標準型カメラの横に赤外線画像を撮るためのカメラが2台付いたカメラを新たに開発。
さらに赤外線撮影による情報とメインカメラの映像を合体させて顔を作り上げていく「FLUX」というシステムもILM(インダストリアル・ライト&マジック)が開発し、40代から80代まで様々な見た目の役者たちを作り上げた。
ハリソン・フォード…『インディ・ジョーンズと運命のダイヤル』
最近では『インディ・ジョーンズと運命のダイヤル』(23)で、撮影時79歳だったハリソン・フォードが、物語の鍵を握るダイヤルをめぐる冒頭のシーンで37歳まで若返り。ルーカスフィルムが持つあらゆるフォードの出演作にアクセスし、実際の演技に被せていく手法で自然な映像を作り上げた。
おじさん俳優のかつての姿をよみがえらせるディエイジングをはじめ、テクノロジーの発展によって様々なことが可能となっている昨今。今後さらなる進歩により、どんな映像を見ることができるのだろうか?
文/サンクレイオ翼