伝説のB級ホラーがまさかのリメイク!『トキシック・アベンジャー』メイコン・ブレア監督が語る、「手作り感」に宿したオリジナル版のDNA
「余計な口出しはしない、ノーランの演出法には監督としてとても刺激を受けた」
物語も、基本的にオリジナル版を踏襲している。邪悪な巨大製薬会社に牛耳られ、暴力と環境汚染に蝕まれた街、セント・ロマ。気弱な清掃員ウィンストン(ピーター・ディンクレイジ)は、企業が雇ったギャングに襲われ、有毒廃棄物のプールに投げ込まれる。だが彼は、超人的なパワーを秘めたミュータント“トキシック・アベンジャー”として復活し、街のならず者たちを一掃しながら、諸悪の根源である製薬会社CEO、ボブ(ケヴィン・ベーコン)とその弟フリッツ(イライジャ・ウッド)ら一味との大乱戦に身を投じていく。
ブレア監督はキャスティングについて、こう語る。「ピーターとは数年前に映画祭で出会い、その後も連絡を取り合っていました。正直なところ、最初は彼を悪役にしたいと考えていたんです。きっと最高におもしろいだろうと。ところが、資金を集めて映画にゴーサインを出してもらうには、主演に有名な俳優が必要だということになり、どうしたものかと考えていたとき、突然ひらめいたんです。『待てよ、ピーターがいるじゃないか。彼を主演にしたらどうだろう?』と。第一の理由は彼の声、そして、彼は観客を一気に味方につけてしまうでしょう。『ゲーム・オブ・スローンズ』でも、いちばん好きなキャラクターはティリオンだと答える人が多いと思います。ドラマチックにも、コメディにも、身体を使った演技もできる。ピーターに脚本を送ったら、彼はニュージャージー州出身で、オリジナル版のファンだったことがわかり、すぐに『やる』と返事をくれたんです。ピーターのような人が中心にいてくれると、映画に正当性が生まれ、ほかのキャストたちも参加したいと思ってくれるようになりました」。
そして、ヴィランを演じる2人の名優については、こう明かす。「イライジャの役は、以前一緒に仕事をして大好きになった彼のために当て書きしました。ケヴィン・ベーコンとは一緒に仕事をしたことがありませんでしたが、アメリカ映画の古典的なスターが堕落した悪役を演じるというアイデアがきっとおもしろいだろうと、思い切って脚本を送ったんです。彼もこの映画のノリをおもしろがってくれて、一緒に仕事ができてすばらしい経験でした」。
ブレア監督の俳優としてのキャリアは、演出にも生きている。「『人はみなそれぞれ違う』という理解が大切でした」と、彼の演出哲学を語ってくれた。「撮影現場に入る前に、できる限りその俳優のことを理解しようと心がけます。立ち位置を決めたら、あとは小さな調整だけにしてそっとしておいてほしいタイプの俳優なのか、それとも、自分はどんなことを感じているのか、撮影状況はどうなっているのかなどについて、たくさん話をしたいタイプなのか。どちらのタイプもすばらしいですが、スタイルが違うので」。
その姿勢には、『オッペンハイマー』で、キリアン・マーフィが演じたオッペンハイマーの弁護士ロイド・ギャリソンを演じた際に、クリストファー・ノーラン監督の現場で学んだことも影響していると言う。「私の出番はかなり少なかったのですが、撮影現場にできるだけ残って、ノーランの仕事ぶりを見て学ぼうと努めました。いちばん感銘を受けたのは、彼が俳優をいかに信頼しているかということです。ノーランは、裁判の参照源から法律用語まで、シーンのすべての細部を把握していて、すらすらと口から出てくる。それなのに、俳優の演技にはほとんど口出しをしません。『立ち位置まで、もう少し早く』、『もう少しゆっくり』と配置を整える程度で、役の解釈は俳優にすっかり任せてくれる。まるで、交響楽を指揮するようなやり方でした。駒を動かして必要なかたちに整えるけれど、余計な口出しはしない、ノーランの演出法には、監督としてとても刺激を受けました」。

