「パトレイバー」は「サザエさん」!?出渕裕監督が語る、最新作『EZY』制作背景と“1話完結モノ”の流儀
「何話から観てもまったく支障が無い。途中から入って来てくれても大歓迎」
――会話劇もパワーアップしているように思いましたが、会話や言葉に対するこだわりは?
「なんでしょうね(笑)。声優さんのなかでキャラクターが見えたりつかんだりすると、その部分の掛け合いや空気みたいなものが自然に生まれるのかなと思います。感覚的なものなので言葉で説明するのは難しいのですが、声優さんやシナリオライターさんとやりとりするなかで、お互いを見て『こういうふうに育てていけばいいんだな』とつかんで、それをまた『こういうふうにしよう』とか、『こうしたらもっとおもしろく膨らんでいくんじゃないか』と育てて行く感じです」
――アドリブも結構あるのですか?
「ありますよ。ほかの現場がどのくらいあるのか知らないので、多いとか少ないとか言えませんけど、アドリブには寛容な現場です(笑)。おもしろいなと思ったら採用する。そこは、声優の皆さんが早い段階でキャラクターをつかんでいたからこそ、そういうことができていたと思います」
――サブタイトルもいいですよね。
「『File 1』で言うと、『EPISODE ; 1トレンドは#第二小隊』と『EPISODE ; 3ホンモノが一番』は伊藤さん、『閑中妄あり』は片山くんが名付け親です。『File 2』は『EPISODE ; 4 ワインと銃弾』は脚本の横手(美智子)さん、『EPISODE;5 あさき夢みし』は自分で、『EPISODE ; 6 恋のサバイバル』は水上(清資)くんですね」
――「EPISODE ; 6 恋のサバイバル」は、災害救助のお話です。タイトルの「恋のサバイバル」は、実際にそういうタイトルのディスコソングが1970年代にあって。
「水上くんが、その曲が好きだと聞いたことはなかったけど、きっと好きだったんじゃないですか(笑)。アフレコ現場で『これって本当にある曲だよね?』って、調べた覚えがあります」
――また、出渕監督が手掛けた「EPISODE ; 5 あさき夢みし」は、ロボットものでありながらスピリチュアルな物語が展開されて意外性がありました。天鳥桔平には霊的なものが見えて。
「見えるような、見えないような。呼んだような、呼ばれたようなね(笑)」
――天鳥は部屋でアナログレコードを聴いているシーンがあったり、古いものが好きで大事にできていた人だから、見える人に選ばれたのかなと。
「それはもう、想像を膨らませて、いろいろに解釈してもらえたらうれしいです(笑)。天鳥はメカに対する知識はあっても、決して最先端のものが好きというわけではないのです。いまの若い人はCDよりレコードだったりしますよね。観て受け取って消化するだけじゃなくて、想像することが楽しい。それこそが、本来の視聴することの喜びだと思います。『おもしろかった!』で終わりじゃなくて、引っかかったり、『これってどういうことかな?』と思っていただけるような、それだけの余白は作っているつもりなので、存分に想像を膨らませて楽しんでもらえればと」
――「世にも奇妙な物語」のような感じだなと。
「そういう“幻想奇譚”みたいなこともできてしまうのが、『パトレイバー』というフォーマットの魅力です。過去のテレビシリーズもOVAもそうでした。“ロボットもの”だと思って初めて観る人はミスマッチに感じるかもしれないけど、実際この作品ってそれくらい懐が深いんです。最近の作品だとカチッとした設定とストーリーラインがあって、大河ドラマのように連続性があって、シリーズを通して一貫した物語性がある作品が主流になっていますが、これはそういうタイプの作品ではない。逆にそういう1話完結ものが少ないからこそ、新鮮に感じてもらうことができるかなという気がします」
――基本的に1話完結というのも、観やすくていいですね。
「『ルパン三世』とか『うる星やつら』みたいなものです。もっと言えば『サザエさん』(笑)。つまり、どこから入ってもOKな作品ということ。前の『パトレイバー』を観ていなくても大丈夫だし、何話から観てもまったく支障が無い。途中から入って来てくれても大歓迎です」
――では最後に『File 2』の3つのお話のなかで、お気に入りのシーンを教えてください。
「『恋のサバイバル』に出てくる、イノシシのシーンの作画はいいですよ!そこは劇場版第1作の作画監督だった黄瀬(和哉)くんがイノシシのデザイン込みで担当していて、好きな人なら観れば動きや芝居のよさがわかるんじゃないかと思います」
取材・文/榑林史章

