主要スタジオの戦略と、観客の需要に“ズレ”あり?CinemaCon 2026の総括から浮き彫りになったハリウッドの問題点と、新たな3つの潮流

主要スタジオの戦略と、観客の需要に“ズレ”あり?CinemaCon 2026の総括から浮き彫りになったハリウッドの問題点と、新たな3つの潮流


会期中盤には、興行団体Cinema Unitedが主催する「フィルムメーカー・リーダーシップ評議会」のパネルが開催された。登壇したのは、「パイレーツ・オブ・カリビアン」「トップガン」シリーズなどの大ヒット作プロデューサーとして知られるジェリー・ブラッカイマー、クリストファー・ノーラン監督作品の長年のプロデューサー(かつ妻でもある)エマ・トーマス、そしてCinema United会長兼CEOのマイケル・オリアリーの3名。このパネルは事前には、パラマウントによるワーナーの買収に反対する場として喧伝されていた。だが蓋を開けてみれば、議論の大半はやはり劇場独占期間の伸長に集約されていった。買収反対のメッセージは打ち出されるどころか、業界全体がそれを既定路線として消化しつつあるかに見える。

全米の映画館を代表する業界団体「Cinema United」
全米の映画館を代表する業界団体「Cinema United」David Becker/Getty Images for CinemaCon

象徴的だったのは、最終日のパラマウントのプレゼンにデヴィッド・エリソンが登壇した際の反応。プレスエリアからはブーイングが起きた一方、会場の興行主たちは拍手で迎えた。45日間の独占期間への明確なコミットメントが、業界内で一定の信頼を生んだことが見て取れる。買収後の体制をめぐる温度差は、業界内部とジャーナリズムの間で明確に分かれている。総じて言えば、新生“ワーナーマウント”は既に興行界に受け入れられ始めているということだろう。

パラマウントのCEO、デヴィッド・エリソンによる大胆発言には、賛否の声が
パラマウントのCEO、デヴィッド・エリソンによる大胆発言には、賛否の声がDavid Becker/Getty Images for CinemaCon

各スタジオの2026年公開ラインナップをおさらい

各スタジオのプレゼンには、はっきりとした濃淡があった。最も気合いが入っていたのはワーナー・ブラザースとディズニー。前者は『スーパーガール』(公開中) 『デューン 砂の惑星PART3』(12月18日公開)『DIGGER/ディガー』(2026年公開)など14本の2026年公開ラインナップを誇示し、後者は『プラダを着た悪魔2』『スター・ウォーズ/マンダロリアン・アンド・グローグー』(ともに公開中)『トイ・ストーリー5』(7月3日公開)『アベンジャーズ/ドゥームズデイ』(12月18日公開)という鉄壁の布陣で大トリを飾った。ユニバーサルはクリストファー・ノーラン監督『オデュッセイア』(9月11日公開)、スピルバーグ監督『ディスクロージャー・デイ』(10月1日公開)という2大巨匠の新作を中軸に据えた。

長編映画で史上初、全編がIMAXフィルムカメラで撮影された『オデュッセイア』
長編映画で史上初、全編がIMAXフィルムカメラで撮影された『オデュッセイア』photo by Melinda Sue Gordon [c] Universal Studios. All Rights Reserved.

ラインナップを語る前に、もうひとつ触れておきたいトピックがある。NEONプレゼンの前座として、GKIDS/Toho International枠で山崎貴監督が登壇し、新作『ゴジラ-0.0』(ゴジラマイナスゼロ、11月3日公開)の初映像と舞台裏映像が初披露されたのだ。前作『ゴジラ-1.0』(23)は日本作品として初めてアカデミー視覚効果賞を受賞し、山崎監督は『2001年宇宙の旅』(68)のスタンリー・キューブリック以来55年ぶり、史上2人目の「監督による視覚効果賞」受賞者となった。新作は日本映画として初めて「Filmed For IMAX」基準を満たして制作された作品でもある。「ゴジラは映画館で体験されて初めて、ゴジラになるのです」と語る山崎監督のスピーチは興行関係者から大きな拍手で迎えられた。会期後半には、業界関係者向けのレセプションで山崎監督がスピルバーグやノーランらと言葉を交わす姿も目撃されている。前作で日本映画の新たな扉を開いた山崎監督が、今度はIMAXという最大スクリーンの土俵でなにを見せてくれるのか、2027年の第99回アカデミー賞に向けて、大きな期待が高まる一作となりそうだ。

ゴジラと共に会場に現れた山崎貴監督
ゴジラと共に会場に現れた山崎貴監督Monica Schipper/Getty Images for CinemaCon

一方、ほかのスタジオのプレゼンには明確な温度差もみられた。SPEは『スパイダーマン:ブランド・ニュー・デイ』(7月31日公開)『バイオハザード』(10月9日公開)『Jumanji: Open World』(12月25日全米公開)などビッグタイトルを揃えた。Amazon MGM はマイケル・B・ジョーダン監督・主演のリメイク『The Thomas Crown Affair』(2027年3月5日全米公開)、『マスターズ・オブ・ユニバース』(公開中)、『Spaceballs: The New One』(2027年4月23日全米公開、『スペースボール』続編)など、派手な演出で押し切ろうとしたが、結果的にゲームIPと既存IPリブートに偏重したラインナップの薄さを露呈する形となった。パラマウントは体制変更直後ながら『ストリートファイター/ザ・ムービー』(10月16日公開)『Call of Duty』(2028年6月30日全米公開)の新規IPと『A Quiet Place Part III』(2027年7月30日全米公開)と『Top Gun 3』(公開日未定)のフランチャイズで興行主から好意的な反応を得ていたと思う。


『罪人たち』のマイケル・B・ジョーダンは新作『The Thomas Crown Affair』で監督と主演を務める
『罪人たち』のマイケル・B・ジョーダンは新作『The Thomas Crown Affair』で監督と主演を務めるDavid Becker/Getty Images for CinemaCon

ラインナップ全体を俯瞰すると、各社ともゲームIPの実写化およびZ世代に目配せしたタイトルを多数並べる傾向が顕著だった。ただし、興行主の反応は決して芳しいものではなかった。「観客が劇場まで足を運ぶ理由」という根本的な問いに対する説得力に欠ける、というのが多くの興行主の本音である。ワーナーとディズニーが「劇場主導」を強くアピールしたのに対し、SPEやMGMは「次の一手」が見えにくい状態でCinemaConを終えた。

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