“型にはまらない俳優”ク・ギョファンが語る『サヨナラの引力』の魅力「愛は一度は誰もが経験すること」
「映画が終わったあとも、自身の経験や感情を重ね合わせながら、愛について考え続けてくださっているように感じます」
『サヨナラの引力』は単純に結末を言い切ることのできない、深い余韻を残す作品だ。そのためク・ギョファンは、ウノがジョンウォンと別れたあとの人生については多くを語らない。その姿勢からは、ク・ギョファンが本作が持つ余白を大切にしていることがうかがえる。
「観客の皆さんのレビューを読んでいると、本当にそれぞれに愛の物語がたくさんあるんだと気づかされました。映画が終わったあとも、自身の経験や感情を重ね合わせながら、愛について考え続けてくださっているように感じます。この映画は、スクリーンのなかで完結する作品ではないのかもしれません。愛は一度は誰もが経験することなので、観客の皆さん一人ひとりの物語が加わることで完成するのだと思います。最終的なエンディングは観客の皆様が作り上げてくださるものではないでしょうか」
ウノとジョンウォンの物語が、観客たちのストーリーでさらに紡がれ、また別のエンディングを持ってほしいと望むク・ギョファン。そういえば本作のなかに、ウノが「ゲームはマルチエンディングだから好き」というセリフがある。様々な捉え方ができる映画もまた、マルチエンディングを持つ芸術とも言える。もしかすると、ク・ギョファンが映画を愛し続けているのも同じ理由なのだろうか。
「おっしゃる通り、映画もまたマルチエンディングなのだと思います。でも、私が演技を続けているのはそれだけではありません。私は撮影現場という場所がとにかく好きなんです。俳優という職業をとても愛しています。私にとって現場は楽しい遊び場であり、大切な仲間たちと時間を共有できる場所でもあります。それぞれが自分の持ち場で力を尽くし、1つの作品を生み出していく。その創作の過程そのものを心から愛しているんです。物語を愛し、物語を表現するプロセスに私が俳優として参加できること自体が本当に幸せなんです」
ソウル芸術⼤学映画学科卒業後、インディペンデント映画を中⼼に演技だけでなく脚本、演出、編集などにも携わりながらキャリアを積んできたク・ギョファン。今年5月に開催された第22回ミジャンセン短編映画祭の公式トレーラー『最高の観客(原題:최고의 관객)』はク・ギョファンが監督を務め、宣伝映像でありながらも彼特有の味わいが詰まった短編映画のような作品だった。本人に今後出演したい作品を尋ねた際、「私が監督を務め、主演も演じる作品に挑戦したいです」と嬉しそうに語ったところを見ると、やはり映画作りに対して強い思いがあるようだ。
「ジャンルにこだわりはなく、自分が惹かれる物語や、興味を持てる人物であることが大切ですね。まだ具体的には決まっていませんが、そんな作品で皆さんにお会いできればうれしいです」
取材・文/荒井 南

