下津優太監督が長編第2作『NEW GROUP』で確立した作家性とハリウッドへの出発点「“中身”と“撮り方”の掛け算を、自分ならではのラインに」
「市場分析と自分の個性をミックスさせてたどり着いた形」
彼は「監督もキャストも僕は椅子取りゲームだと思っています」と続けた。「日本でホラーをやるなら先輩監督たちとの勝負に勝たないといけません。でもそれはなかなか大変なので、だったら椅子を作ってしまえばいいという発想に至りました。撮り方や編集のつなぎ方ならフィンチャー、ストーリー展開ならジョーダン・ピール、奇妙さならヨルゴス・ランティモスなど、ちょうど僕の好きな作品の系統も合致していましたし、市場分析と自分の個性をミックスさせてたどり着いた形です」
この言葉が示す通り、下津監督は強烈な作家性を有する反面「見せ方」に対して極めて自覚的だ。愛=I、優=YOU、人間ピラミッド=三角形と対立する存在として球を出すなど、インパクトこそ絶大なものの思考自体はコンセプチュアルで理論的。「少し語弊があるかもしれませんが、僕は日本映画はちょっと演技至上主義すぎるきらいがあると思っています。演者さんがいいお芝居をしてくれることは大前提ですが、感情表現についても演技に全振りするのではなく、撮り方や編集の仕方を駆使して画面全体で作っていけるはず。自分は演技の演出家ではなく映像の演出家だと思っているため、そういったアプローチを採っています」と自負する。
そのクリエイティブも、個性をぶん回すスタイルとは大きく異なっている。「CMを企画、演出してきた経験から、僕は映画でも撮影前に“写真コンテ”を作成するようにしています。仮の役者さんに入っていただいて『こういうアングルで撮りたい』といったイメージをシーン1から終わりまで作って配りました。また山田さんと青木さんは基本的に巻き込まれていく役柄ですから、敢えて大枠の説明に留めました。そのため、いわゆる演技演出というものはほぼ行っていません」との言葉からも、キャストやスタッフ間での認識のズレや摩擦をいかに減らし、あるいは利用し、作品に収斂させていくかというしたたかな計算が感じられる。
「1本目を撮っている時から海外に行くことを目標にしていた」(下津監督)
「わかる人にだけわかればいいという感覚がどこかにあった」という第1作の個人的な反省から「次は皆が楽しめるエンタメ作品にしてやろう」と決意して取り組んだという下津監督。日本公開に先んじて上映されたカナダの第29回ファンタジア国際映画祭では審査員特別賞を受賞し、以降も各国の映画祭で賞賛が続いている。「日本の同調圧力がどこまで伝わるか心配もありましたが、しっかり届いてくれてホッとしました。生のお客さんのリアクションが非常によく、節々で笑ってくださったり、欧米などだと上映後に『ポー!』コールが湧きあがりました」
『みなに幸あれ』が米ローリング・ストーンが選ぶ「The 20 Best Movies of 2025」に選出されるなど、その才能は国外からも注目されている。『NEW GROUP』の日本公開を待たずして下津監督はハリウッドのプロダクション兼マネージメント会社「Kaplan Perrone Entertainment」、そして国内でも株式会社ロボットとのマネジメント契約締結を発表するなど、既に次のフェーズへと歩を進めている。
「1本目を撮っている時から海外に行くことを目標にしていたので、遂にスタート地点に立てた気持ちです。自分は幸運なことに、名だたる監督でもなかなかオリジナル作品を実現できないなか、2作続けて自由に制作させていただきました。だからこそこれからもオリジナリティと社会批評を組み合わせていくスタイルは変わらずに続けていきたいと思っています。そのなかでワンチャン、ブラムハウスなどで1本撮れたら最高ですね」
取材・文/SYO
