佐藤二朗、丸山隆平が『名無し』大ヒットに感激「日本映画界の未来に、言葉にできないほどの光を感じています」

佐藤二朗、丸山隆平が『名無し』大ヒットに感激「日本映画界の未来に、言葉にできないほどの光を感じています」

俳優、脚本家、映画監督としても活躍する佐藤二朗が原作、脚本、主演を務める映画『名無し』の大ヒット御礼舞台挨拶が6月7日にkino cinéma新宿で開催され、佐藤、共演の丸山隆平が舞台挨拶に登壇した。公開後だからこそ語れる撮影秘話や、観客から寄せられた反響への想い、いまも拡大を続ける“名無し現象”について、たっぷりと語った。

原作、脚本を手掛け、さらに主人公・山田太郎を演じた佐藤二朗
原作、脚本を手掛け、さらに主人公・山田太郎を演じた佐藤二朗[c]佐藤二朗 永田諒 / ヒーローズ [c]2026 映画「名無し」製作委員会

5月22日に封切られた本作は全国各地で満席が続出する大ヒットを記録中だ。SNS上では、「今年一番ヤバい映画」「観たあとに誰かと語らずにはいられない」「佐藤二朗のキャリア史上最恐」「こんな邦画は見たことがない」など絶賛と衝撃の声が上がっている。

満員の客席を見渡した佐藤は「昨日、私は川崎のTOHOシネマズ 川崎に1人でこっそり観に行きました。実は以前『爆弾』(22)という映画が公開された時期も3回ほど観に行きまして、『爆弾』で演じたスズキタゴサクは人を直接殺めない役だったので、映画を観終わったあとに見つかってもいいかと思っていたら、実際に何人かにバレてしまったんですね。でも、今回の『名無し』は見終わったあと、『これはなにがなんでもバレないで帰ろう』と思いました。こうやって(顔を隠す仕草をして)、歩いていたら、余計目立っちゃうんですけど。『怪しいやつだ』と思われながらも、なんとかバレずに済みました」と自身も映画館で作品を体験したことを明かす。

【写真を見る】山田太郎の名付け親となる巡査、照夫役を演じた丸山隆平
【写真を見る】山田太郎の名付け親となる巡査、照夫役を演じた丸山隆平[c]佐藤二朗 永田諒 / ヒーローズ [c]2026 映画「名無し」製作委員会

丸山も「僕も、六本木の映画館に上映3日目に観に行きました」と語ると「僕もまったくバレなかった。それだけ皆さんが作品に没入して観てくださっている感じがしました」とうなずく。

公開から時間が経過し、様々な意見が作品に寄せられているが、佐藤は「公開の時にもお話ししましたが、賛否あっていいと思っています。“賛”でも“否”でも遠慮なくSNSに書いてくださいと言ったのですが、本当に評価が二分していて」と観た人の心に、なにかを訴えかける作品であることに手応えを感じているというと「自分で書いていても気づいていないような考察をしてくださる方もいて。もう僕や監督、出演陣、スタッフ陣の手を完全に離れて、まるで生き物のように作品が育っている感覚がします。それはそれで作品としては幸せなことだなと思う」としみじみ語っていた。

映画の大ヒットを喜び合った2人
映画の大ヒットを喜び合った2人[c]佐藤二朗 永田諒 / ヒーローズ [c]2026 映画「名無し」製作委員会

現在116館の上映ながら、早くも興行収入2億円を突破するという大ヒットとなった本作。この日もすでに5回以上観ているという観客も多数いるなど、観れば観るほど、様々な想いを想起させる映画となっている。

佐藤は「5年ほど前に1人でウジウジとこの作品を書いて、30人ほどのプロデューサーに見せました。なかには本当に親身になって実現に向けた方法を模索してくれたプロデューサーも何人かいて、すごく感謝しているんですけど、結局最後は『オリジナル作品はやっぱり難しい』という結論になるんです。いまの日本映画界では、有名な漫画や小説といった原作が担保になるので、それがないとオリジナルは後回しになる。それがずっと定説になっていました」と語ると「でも賛同してくれる方がいて、こうして実現しました。テイスト的にも、決して多くの人が好むようなものではないと思うのですが、オリジナル脚本で、しかもこの小規模公開としては異例のヒットになっている。僕はこれに、日本映画界の未来として、言葉にできないほどの光を感じています」と前を向く。

丸山も「こういった映画が注目されるというのは、うれしいですね。映画って、もともとは“余白の芸術”だと思うんですよ。考察したり、ラストでなにかのピースが欠けていたり。この作品にはそういう要素がすごく詰まっています。いまはどちらかというと、エンタメ性の高い、最後にはちゃんと解決する分かりやすい作品が多く観られているなかで、二朗さんがおっしゃったように、こういう映画が多くの皆さんに届いているという現状には意味がある」と熱い思いを吐露する。

その後、何度も作品を観てくれている人に向けて、佐藤があるシーンへの解釈についてトークを展開。会場は多くのリピーターが訪れていたが、初めて本作に触れる人もいる。佐藤と丸山は壇上で会議を行いネタバレにならないように「映画を観たことがない人は耳をふさいで“アー”って声を出していて!」と提案して物語の核心について観客に問う場面に会場が沸いた。

また本作の重要なテーマのひとつである「人と繋がりたいという願い」にちなみ、2人がいま、人との繋がりを感じたエピソードについて語った。佐藤は「今回、徹底的に絶望を描こうとしたのは、『人と繋がっているうちは、まだ明日も生きてみようと思えるのではないか』ということです。まったく人と繋がれなくなった、あるいは自分でそう思い込んで、繋がることを諦めてしまった人間はどうなるのか、という視点で書き始めました。だから、人と繋がるということは、実はものすごいことだと思うんですよね」と作品に込めた想いを述べると「ちなみに私、家では割と毎日、妻にハグを断られております」と発言し客席を笑わせる。

丸山は「僕はもう月並みですけど、やっぱり人生で一番長く一緒にいるSUPER EIGHTのメンバーですね。昨日も一緒に仕事をしていたんですけど、裏でもずっと笑っていますから」と語ると、それぞれのメンバーについてのほっこりするエピソードを明かしていた。

最後に丸山は「映画が始まってしまったらもう逃げられないので、しっかりと目と記憶に焼きつけて、何かを感じ取っていただければと思います。なにも感じなくても、皆さんの自由な心の目で観ていただければ幸いです」と語ると、佐藤も「上映が始まる前はこうして明るくお話ししていましたが、作品のなかにはこの明るさはまったくありません(笑)。でも、あっという間の82分だと思います。昨日観た感じでは、本当にジェットコースターのように過ぎ去ると思います」と呼びかけ「皆さん一人ひとりの“賛”でも“否”でも、あるいは考察でも、SNSで広めてくださることが、こうしたオリジナル作品のヒットに繋がると思います。何年か後、また名もなきオリジナル作品が新しく生まれるきっかけになるかもしれませんので、遠慮なく感想を広めてください」と舞台挨拶を締めた。


文/山崎伸子

作品情報へ

関連作品