佐藤二朗、原作&脚本&主演『名無し』公開に「非常に感慨深い。今日はふざけません!」 丸山隆平も“怪物”ぶりにシビれる
佐藤二朗が原作・脚本・主演を務めた映画『名無し』の公開記念舞台挨拶が5月23日にTOHOシネマズ六本木ヒルズで行われ、佐藤をはじめ、丸山隆平、MEGUMI、佐々木蔵之介、城定秀夫監督が出席した。
佐藤が初の漫画原作を手がけた作品を、自ら脚本と主演を兼ねて実写映画化した本作。白昼のファミレスで無差別大量殺人事件が発生。防犯カメラには容疑者の中年男の姿が残されていたが、被害者が鋭利な刃物で刺される瞬間は映っているのに、凶器の姿だけが目視できない。目に見えない力の秘密に隠された、恐るべき真実が描かれる。
観客から大きな拍手が上がるなか、登場したこの日のメンバー。すべての生みの親である佐藤は会場を見渡しながら上映後の熱い反応を浴び、感無量の表情を浮かべた。
「5年前、二子玉(二子玉川)に家族3人で行って。妻と息子がラーメンを食っている間、ダイエット中の僕はラーメンを食べられないので、なんとなく歩いて、公園でみんなが遊んでいるのをボーッと見ている時に思いついた話」と誕生の瞬間を回顧。「一人でうじうじと考え、こしらえた作品が、こうやってたくさんのプロの人たちの力を借りて、皆さんに観ていただける日が来た。非常に感慨深いです」としみじみと語り、「今日はふざけません!ふざけそうになったら、つねります!」と宣言して会場を笑わせていた。
過酷で壮絶な世界観が広がる作品となり、登壇者のもとにも濃密な感想や反響が寄せられているという。「劇中の凶行やパニックを、対岸の火事に集まる野次馬のような気持ちで楽しんで観ていた」という感想を目にしたという佐藤は、「不謹慎を恐れずにいうと、それでいいんじゃないかなと思うんです。でも映画を観終わって、劇場をあとにした時に、大切な人、人じゃなくてもいい。犬や猫でも、お気に入りのプラモデルでもいいです。大好きな推しのグッズでもいいです。“大切なものに触れたい、抱きしめたい”と思って、家路についていただけたらなと思い、この映画に携わらせていただいた」と本作に込めた切実な想いを打ち明けた。
容疑者の名付け親となるキーパーソンを演じた丸山は、「僕も、こういった考えさせられたりする世界観の映画が好き。出演できて光栄」と喜びを吐露。「(主人公の)太郎の気持ちになって、感激してくださったという感想も聞いた。育ってきた環境は人によって違うけれど、(主人公と)重なる部分のある方が観て、なにかを感じてくださった声というがあるのはうれしい。この作品が観ていただける意味が、そこに表れていると思った」と映画の力を実感したとのこと。
容疑者の最大の理解者にして、トリガーでもある正体不明の女性を演じたのが、MEGUMIだ。MEGUMIは「二朗さんとのラブシーンがある。二朗さんと、“邦画史上、もっとも汚いラブシーンにしましょう”と打ち合わせをした」とぶっちゃけつつ、「“本当に汚かった”という、ご感想をいただいた。私たちの願いが届いた。“汚い”と言われて、初めてうれしいと思った」と茶目っ気たっぷりに感激を伝えると、佐藤が「美のカリスマが!」と重ねて、会場も大笑い。
そして異常な執念で容疑者を追いかける刑事役の佐々木は、ダークな役柄を演じる佐藤について持論を述べた。本作の公開前には、「二朗さんが今回は、怖い役をやるんだ。この間の『爆弾』も怖かった」という周囲の声を耳にしたと振り返った佐々木。「俺は、“いまさら、なにを言うてんの”と思っている。25年前から、二朗は狂気を持った芝居を全然やっているし、俺は知っているぞと。“みんなより先に知っているぞ。いまさらか!”という想いをずっと持っていた。そのころから、いい役者やなと思っていた」と佐藤のすばらしさを誰よりも先に知っていると、自慢するように声を弾ませていた。
また「名前」がキーとなる作品にちなみ、それぞれが「名前をつける際の印象的な思い出」について発表する場面もあった。「僕たちには、大きな転機があった」と口火を切った丸山は、「それはグループ名を変える時。ファンの方と共有している名前、共有するべきものだったりするので、メンバーで何日もかけてホワイトボードの前で“ああでもない、こうでもない”とやっていた。そういう時間によって、グループの絆がより強くなった感じがする。それぞれの場所で活躍しているので、5人でじっくり話すこともライブの打ち合わせくらいしかなかったりする。そういった機会をいただけて、グループが強くなった」とSUPER EIGHTというグループへの愛情を傾けると、佐藤は「すごくいい話だった。名前をつけるっていうのは、大事なこと」と感銘を受けていた。
続けてMEGUMIは、いつまでこの名前で「やればいいんだろうと思っています」「60、70歳になってローマ字でMEGUMIってどうなのかなって」と悩みを告白。「勝手に、前の事務所の社長が“お前は、これだ”と。(MEGUMIという芸名は)気に入ってはいます」としつつも、「なにがいいと思います?考えてもらってもいいですか」とお願いをした。頭をひねった丸山は「かきつばた」、佐藤は「佐々木。もしくは清水」と提案。MEGUMIは「とてもいい!検討させていただきます」と乗り気になっていた。
“名前のない怪物”が主人公となることから、「自分のなかに潜んでいる怪物はいますか?」という質問も投げかけられ、これには佐藤が「『そのいのち』という舞台をやった時に、それを観た鴻上尚史さんが“蜷川幸雄さんの言葉を思い出した”と言ってくださった。蜷川さんは、“心に怪物を飼え。決して安住するな”と言い続けていた。“二朗さんのなかには怪物がいて、それが暴れて出て来ないようにふざけて、ひょうきんなことをしていると思った”と言ってくださった。そうなのかな…と思った」と鴻上のコメントから自己分析。
丸山は「(劇中で)何者かわからない表情が映し出されるシーンがある。あれにシビれた。怪物がいるからこそ、できた表現なのかなと思う。それを役や作品として昇華させている」と本作の主人公を熱演した佐藤に惚れ惚れとしながら、自身の怪物については「満月と新月が、あまりよろしくないんですよ」と満月や新月にはイライラしたり、やさしくされても皮肉として受け止めてしまうとのこと。「満月に暴れ出す怪獣がいる。僕、そういうイメージないじゃないですか。かわいくて、キュート。だからその時には極力、人に会わないようにしないといけない」と意外な一面を公開していた。
佐藤は「いいスタートを切れました」と改めて感謝しながら、「感想も濃厚なものが多い。なるべく読んでいますので、遠慮なくつぶやいていただけたらと思います。大きな規模の作品ではありませんが、皆さんの口コミでさらに育てていってほしいなと思います」と希望を込め、大きな拍手を浴びていた。
取材・文/成田おり枝

