押井守が“評判の悪い”実写映画を撮りたい理由。『ボトムズ』ファンの不安に「そう思うのも仕方ないかと(笑)」【押井守連載「裏切り映画の愉しみ方」最終回『バーン・アフター・リーディング』後編】

押井守が“評判の悪い”実写映画を撮りたい理由。『ボトムズ』ファンの不安に「そう思うのも仕方ないかと(笑)」【押井守連載「裏切り映画の愉しみ方」最終回『バーン・アフター・リーディング』後編】

「『ボトムズ』は実は一瞬、バカになりかけた。でも、ギリギリ踏ん張った!」

――『女と男のいる舗道』(65)や『気狂いピエロ』(65)等、有名な作品ですが、そういうのも赤字?

「赤字です。ゴダール唯一のハリウッド映画『軽蔑』(63)もまっかっか。なぜこの仕事を受けたのかは知らないけど、その理由はわからないでもない。多分、『ハリウッドでオレ流の映画が撮れるのか、試してみよう』『違うことをやってみようか』だったんじゃないかと。一応、当時の人気俳優、ブリジット・バルドーやミシェル・ピコリを起用していて、ゴダール作品のなかではわかりやすい。とはいえ、案の定というか、やっぱりわけのわかんない映画になっていた。

で、肝心なのはそこ。映画監督は、時に自分自身のイメージを裏切りたくなるものなんです。それもまた、私があんな評判の悪い実写映画をたまに撮る理由です。ファンの間で、そういうのを観ることを“年貢”とか“税金”とか言われているというのは途中で知ったんだけど!私の仕事がなくなると『攻殻機動隊』も『パトレイバー』も観られなくなるから、みんなで押井監督を支えようっていうんでしょ?」

押井監督最新作となる『装甲騎兵ボトムズ 灰色の魔女(ヘクセ)』
押井監督最新作となる『装甲騎兵ボトムズ 灰色の魔女(ヘクセ)』[c]SUNRISE

――押井さん、ちゃんとわかっていらっしゃるようなので、今度の『ボトムズ』は大丈夫ですよね?

「いまの段階では詳しいことは言えませんが…実は一瞬、バカになりかけた。でも、ギリギリ踏ん張った!」

――よかったー!みんなほっとしますよ!

「いまの宣伝のやり方は、情報を公開まで小出しにして、絶対にネタバレがないようにしている。最初のティザーを流した時、6割がたが『唯一の心配材料は押井守』だって言っていたよね。『また、やらかすんじゃないか』とか『キリコが立食い蕎麦に行くんじゃないか』とか『アクションは5%くらいで、あとは能書きなんじゃないか』とか。みんながそう思ってしまうのは、まあ仕方ないかと(笑)。

でもさ、私のなかでもバカをやるバランスと、真面目に勝負するバランスというのがあって、今回は真面目に勝負するほうに向いている…まだ揺れてはいるんだけど。絵コンテ切りながらバカやりたいなって感じになったりして…」

【写真を見る】戦火を駆けるスコープドッグ!ファンが不安するのは「キリコが立食い蕎麦に行く」こと?
【写真を見る】戦火を駆けるスコープドッグ!ファンが不安するのは「キリコが立食い蕎麦に行く」こと?[c]SUNRISE

――絶対にダメです!そのまま真面目な方向でお願いします!

「いやあ、そうだよね。『イノセンス』(04)とか『スカイ・クロラ The Sky Crawlers』(08)の時も揺れていたんですよ、踏ん張ったけど。最近の私、バカをやりたい欲求と、エロいことをやりたい欲求があるんだよね」

――押井さん、もう晩年なのに……。

「いや、晩年だからこそなの。私は(デビッド・)リーンのように、若いころにエロいことをできなかったからだよ」


――まさか『殺しのドレス』(80)のように、おばさんのシャワーシーンを入れたとか?やめてくださいよ。

「いやいやそういうんじゃなく、背徳的なこと、エロチシズムをやりたいってことです。さまにならないことはやりませんから、みなさん一応、安心してください(笑)。『ボトムズ』もちゃんと真面目にやってますから!」

押井守連載「裏切り映画の愉しみ方」

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