『箱の中の羊』でも新たな逸材を発掘!柳楽優弥、広瀬すずらの魅力を引きだしてきた是枝裕和監督の子役演出
ヒューマノイドの子どもを描いた『箱の中の羊』
最新作となる『箱の中の羊』は、最新のテクノロジーで亡き人を蘇らせるというニュースから着想を得たという是枝監督が、少し先の未来を舞台に、テクノロジーによって進化した日常やそこに生きる夫婦、新たな家族のかたちを描くSFヒューマンドラマ。
息子の翔(桒木)を亡くして2年、建築家の音々(綾瀬)と工務店の二代目社長を務める健介(大悟)の甲本夫婦は、不慮の死を受け入れられない人向けにRE birth社が提供する、最新鋭の生成AIと工学技術が詰まったヒューマノイドを息子として迎え入れることに。
息子と同じ姿をしたヒューマノイドの翔が到着し、「おかえり」と喜ぶ音々に対し、健介は「いらっしゃい」と戸惑いを隠すことができなかったが、家族としての時間が動きだし、成長を見せる翔を少しずつ受け入れ始める。その一方で、音々は思い出のなかの翔との乖離に違和感を覚えるなど、一家に波乱の影がちらつきだすなか、翔もまた密かにほかのヒューマノイドの仲間たちとつながり…。
夫婦のすれ違いや再生が描かれるなか、その鍵を握るヒューマノイドの翔を演じる桒木は、200人のオーディションのなかから選ばれた逸材。今作が本格的な演技は初めてだというが、子どもらしい愛らしい一面をはじめ、ヒューマノイドであることに自覚的な達観した様子、仲間たちと行動するしたたかさなど、これまでの是枝作品の子どもたち以上に複雑なキャラクター像を見事に演じている。
今作では台本を渡すスタイルで撮影が行われ、桒木は家で母親と一緒に必死に台本を覚えたそうだが、カンヌ国際映画祭の囲み取材で桒木が「(是枝監督から)『セリフ通りじゃなくてもいい』と言われた」と語ったように、その場の感性を重視。だからこそヒューマノイドの翔にも、どこか自然な温かみが漂っている。
またヒューマノイドたちのリーダーとして大人びた一面を見せる柊木陽太という自身が見いだした俳優も名を連ねるなど、『箱の中の羊』の随所から是枝監督の子どもへの信頼、尊敬の念が感じ取れる。
この新作に加え、6月2日(火)から28日(日)には国立映画アーカイブで、キャリア初期のドキュメンタリーからキャリアを振り返り、作家像をひも解く特集上映「映画監督 是枝裕和」も実施される。併せてチェックしてその手腕、魅力を再確認したい。
文/武藤龍太郎
