ホラーだけどワンコにとってはラブストーリー!?大好きな飼い主を守ろうとする姿が健気な『GOOD BOY/グッド・ボーイ』
犬を飼ったことがある人なら、誰しも愛犬が“虚空をじっと見つめて”いたり、“いきなり吠えたり唸ったり”する姿に、思わず「そこになにかいる!?」とゾワッとした経験があるだろう。そんな“ワンコあるある”をベースにした、ホラー好きも、ワンコ(動物)好きも狂喜すること間違いなしの異色のホラー映画『GOOD BOY/グッド・ボーイ』が公開中だ。
異例の快挙を達成!スターダムを駆け上ったワンコ、インディの名演に迫る
監督ベン・レオンバーグの実生活での愛犬が主演を務め、ごく少人数で3年の月日をかけて撮り上げたこの低予算映画は、なんとSNSで話題沸騰となって急遽拡大公開され、2週連続で全米トップ10にランクイン。しかも“異例”の記録を次々と打ち立ててしまった。そう、主人公インディを演じた監督の愛犬インディが、多数の映画祭で動物演技賞を受賞したのみならず、アストラ映画賞における「ホラーまたはスリラー部門」では、『ブラックフォン2』(25)のイーサン・ホークをはじめとした人間の名優たちを差し置いて、最優秀演技賞まで受賞してしまったのだ!さて、その名演ぶりとは――。
大好きな飼い主を守りたい…健気なワンコの奮闘が始まる!
レトリバーのインディは、飼い主のトッドとアパートで暮らしていたが、トッドの体調が吐血するほどひどく悪化し、病院に運び込まれる。ほどなく退院したトッドは、妹ヴェラの心配と反対をよそに、インディを連れて片田舎の亡き祖父の家に移り住む。祖父が謎の死を遂げて以来、空き家となっていたその家に着いても、インディはなかなか車から降りようとしない。トッドに促されてしぶしぶ家に入るものの、インディは家の中になにかを感じ取ったらしく、そわそわと落ち着かない様子だ。そんな様子にトッドはヴェラに、祖父とこの家に呪いでもあるのかと電話で話す。病状の浮き沈みに苦しむトッドに戸惑いながらも、インディは家周辺にまとわりつく邪悪な“なにか”から、飼い主を守ろうと必死で奮闘する。
カメラはインディを追いかけてその姿や表情にフォーカスし、同時にインディの見つめる先を映しだす。家の中も周囲の森も、ひんやり湿気が立ち込める不気味さだ。そもそも近所の男から自家発電機を借りて暮らしが成り立つという、半ば朽ちたような家の佇まいが怖い。そんななか、インディは具合の悪そうなトッドを背や尻尾で感知しながら、鋭い嗅覚や聴覚、あるいは第六感で家のそこかしこに“邪悪な存在”を感じ取り、時に鼻を鳴らしてベッドの下に潜り込み、時に吠えたり唸ったり。そんなインディの様子に、我々観客は薄暗い空間にじっと目を凝らし、鳥肌を立てるしかない。
当然ながらインディが大きく表情を動かすことはないのに、その瞳によぎる感情の豊かなこと!具合の悪いトッドに、“いまはダメだ、あっちへ行け!”と追い払われる姿に我々は胸を痛め、くぅんと丸くなる姿に愛しさが込み上げて泣きそうになる。かと思えば、必死に、そして本能的に“禍々しいもの”に敢然と立ち向かう姿に惚れ惚れし、もはや一秒たりともインディから目が離せない。そんなふうに我々観客の想像力を最大限に喚起し、“インディ自身が感じる恐怖”や“トッドを守るために勇気を振り絞る健気さ”などで、大いに感情を揺り動かしてくるのだから、これはもう世界の映画祭や映画賞でいくつもの演技賞を獲得したのも納得だろう。
