『箱の中の羊』でも新たな逸材を発掘!柳楽優弥、広瀬すずらの魅力を引きだしてきた是枝裕和監督の子役演出
のちに活躍する逸材が集結した『奇跡』
両親の離婚により離ればなれになった兄弟が「いつかまた家族4人で暮らす」という願いを叶えようとする様を描いた『奇跡』(11)。当時小学生お笑いコンビとして注目を集めていた「まえだまえだ」の前田航基、旺志郎兄弟をはじめ、橋本環奈、内田伽羅、平祐奈らのちに俳優として羽ばたいていく子どもたちが集った本作でも、台本を用いないスタイルを続投している。
「九州新幹線の『つばめ』と『さくら』がすれ違う瞬間に願いを唱えると奇跡が起こる」という話を信じる子どもたちが繰り広げる、微笑ましい冒険を活写するにあたり、是枝監督は、状況やセリフは伝えるが、キャラクターの感情については指定せず、子どもの自由な感性を尊重。
「映像もなるべく枠にはめないようにしているので、子どもが走ったらカメラも追いかけて走る。そういう感覚でやっていました」と当時のインタビューで語った通り、子どもに合わせる形で撮影。校庭で虫を追いかけて縦横無尽に走る龍之介役の旺志郎のフレームからはみ出そうなほど奔放な姿は自然そのものだ。
また是枝監督は子どもから聞いたエピソードも数多く物語に採用している。例えば、主人公兄弟が喧嘩し、仲直りするシーンでは「ポテチのカスをどっちが食べるかで喧嘩する」という「まえだまえだ」の2人の日常から着想を得るなど、子どもに寄り添う形でリアリティを生みだした。
『怪物』では台本を用いたベーシックな演出も
その後も、家族ぐるみでの軽犯罪を重ねながら暮らす一家を描き、第71回カンヌ国際映画祭で最高賞のパルム・ドールを獲得した『万引き家族』(18)では、偶然雨が降ってきた際に、その場の思いつきで子役の城桧吏と佐々木みゆを雨のなか走らせるなど、台本に縛られない演出で、是枝監督は映像に説得力をもたらしてきた。
『海街diary』(15)では、当時15歳だった広瀬すずに台本を渡すやり方と口頭で伝えるスタイルを試し、広瀬が選んだ後者の方法で撮影を行ったように、決してそのスタイルに固執しているわけではない。『怪物』(23)では、物語の中心となる2人の少年を演じた黒川想矢と柊木陽太には台本を渡すベーシックな方法を選んでいる。
それでもセリフの意図を聞かれた際には、すぐに答えを教えるのではなく考えるように促したり、撮影外で子どもたちが電車を使って遊んでいる様子を見て、劇中に取り入れたりと、子どもたちをコントロールせず、全面的に信頼。“生”の感覚を宿した演技を引きだすことで、作品の世界観を作り上げた。
