狂気的ヌルヌル…南沙良の体当たり演技がヤバすぎる!変態VS怪異が楽しい『禍禍女』をレビュー
お笑い芸人、俳優、ラッパー、声優、ラジオパーソナリティとマルチに活動するゆりやんレトリィバァの初監督作『禍禍女』が公開中だ。自身の恋愛経験を投影させた本作は、愛を暴走させていくヒロインと謎めいた存在“禍禍女”を中心に、ホラーや恋愛映画の枠を超えた予測不能なドラマを繰り広げる。
正直、私はこの映画を完全に舐めていた。「ゆりやんレトリィバァの初監督作だなんて、彼女のお笑いの世界をちょっと膨らませたくらいだろう」。そう思い込んでいる節があったのだ。ところが、蓋を開けてみてビックリ。これはエンタテインメントとして非常に発想豊かでおもしろい。次にどんな展開が飛びだすのかワクワクするあまり、私は途中からゆりやん監督作であることさえすっかり忘れていたほどだ。
彼女に愛されたら終わり?男たちを恐怖のどん底に陥れる“禍禍女”
皆さんは“禍禍女”をご存知だろうか?もしも夜道で「パッ…パッ…」と謎の破裂音が聞こえてきたならどうか気をつけて。それはどこかで彼女がじっと見つめているサインだから。身長2メートルを超す巨体に、ボッサボサのロングヘア、しかもピンクなドレスに身を包んだ人影。好意を寄せる男性の元に現れては、様々な方法で自分の気持ちを受け入れてもらおうとアピールするのだが…。彼女に愛されたら(=憑かれたら)命だけでなく、両目まで奪われてしまうのだから恐ろしい限りである。
南沙良というもう一人の怪物、ここに爆誕
本作は、無数の男たちが次々と禍禍女の餌食となりゆくさまをチャプター形式で描いていく。彼らはまったく関係性のない人たちなのに、なぜ一様に犠牲者となったのか?そしてそもそも禍禍女とは何者なのか?
同じ美術大学に通う、大好きな「ひろしくん」(前田旺志郎)を亡くしたことをきっかけに、この謎をひたすら追究し始めるのが本作のヒロイン、上原早苗だ。演じるのは南沙良。『志乃ちゃんは自分の名前が言えない』(18)をはじめ揺るぎない演技で我々を魅了する実力派女優である。
なるほど、主演の彼女は、まさに我々の目となり耳となり、本作を解決へと導く頼もしい存在…なんて安心できると思ったら大間違い!クールで物静かな存在感を逆手に取り、物語が進むごとに我々を驚愕させ、衝撃を与え続ける。
もはや怪演という言葉では足りない。怪人と呼んでもいいくらいだろう。なぜなら早苗は禍禍女に匹敵するくらいの異様なストーカーで、自宅内にはひろしくんをかたどったオブジェが並ぶ。指を打ち鳴らし、彼への愛を表現するミュージカル然としたステップを披露したかと思えば、今度はまさかのローションを頭からかぶり、ヌルヌル状態になったまま、巨大な顔面オブジェの口へ…自分でなにを書いてるのか頭が痛くなってきたが、とにかく変態である。恍惚の表情で純愛に身を捧げる変態。これほどぶっとんだ南を観るのは初めてである。

