注目の米アカデミー賞で作品賞を筆頭に4部門にノミネートされた話題作『ブゴニア』が2月13日(金)に公開される。ヨルゴス・ランティモス監督と製作のアリ・アスターのタッグに、ランティモス作品には5度目の出演となるアカデミー賞女優エマ・ストーン、『憐れみの3章』(24)に続いてランティモスと組む怪優ジェシー・プレモンスが加わり、やり手の女性社長と陰謀論者の狂信がぶつかり合う!?ブラックユーモア満点、ひと筋縄ではいかないエンタメ作品が誕生した!
陰謀論者のぶっ飛んだ言動の数々に戸惑いを隠せない人もいるかもしれないこの映画…。物価高に政治不信、世の中の様々な変化に疑念を持ち始めたMOVIE WALKER PRESS編集部員のAは、「ランティモスにアリ・アスターに、陰謀論者が絡むってどういうこと?そもそも陰謀論って?」と気になってすぐに試写会で本作を鑑賞した。鑑賞後、「どうして陰謀論のことがずっと頭から離れないんだろう…」という想いを抱いた編集Aは、都市伝説や宇宙陰謀論などのコンテンツで人気のYouTuber、ナオキマンに、陰謀論について、そして映画の見どころまで解説してもらうインタビューを相談。「でも忙しいから、きっと難しいだろうな…」と思いきや、ナオキマンはすぐに快諾の返事をくれ、「ランティモス作品はぜんぶ観てます!」と意気込みたっぷりに試写会へやってきてくれた。
ナオキマンへのインタビューは、ネタバレなし編とネタバレあり編と2回に分けてお届けするので、『ブゴニア』をより楽しむためのヒントにしてほしい!まずはネタバレなし編から。
「僕の活動を映しているような作品だし、おもしろかったとしか言いようがない」
まずは映画『ブゴニア』のあらすじから紹介しよう。
人気絶頂のカリスマ経営者であるミシェル(ストーン)は、仕事終わりで帰宅したところ、突然覆面の男2人に誘拐されてしまう。その正体は、ミシェルを“地球を滅ぼす宇宙人”と妄信する陰謀論者のテディ(プレモンス)と従弟のドン(エイダン・デルビス)。彼らは宇宙船と連絡を断つためと称し彼女の髪を丸刈りにすると、自宅の地下室に監禁。「地球から手を引け」と支離滅裂な要求をしてくる。「私は超有名人。このままだとFBIが動きだすから!」と犯人に詰め寄るミシェルと、「お前は宇宙人だ。騙されない」と言い張る陰謀論者たち。まったく会話がかみ合わない駆け引きのなか、知能も話術も交渉術も完璧な女社長ミシェルは、狂信的な2人の陰謀論者にどう挑むのか?
映画を観終わったばかりのナオキマンに、「映画はいかがでしたか?」とドキドキしながら編集Aが尋ねると、「僕の活動を映しているような作品だし、おもしろかったとしか言いようがないです」と、率直に感想を口にしてくれた。主人公である誘拐犯テディは、拉致監禁したミシェルのことを、地球に害をおよぼす宇宙人と信じているが、ナオキマンは、このような陰謀論を振りかざすキャラクター性にリアリティを感じたという!
「僕はアメリカ生まれですが、向こうではテレビで普通に陰謀論が語られたりしています。それを信じてしまうのは、純粋な方、さらにいえば動物的な方が多いんですよ。カッとなったら飛びかかっちゃう、みたいな。テディはまさにその典型で、この陰謀論がすべてだとなれば、それ以外は頭に入らなくなっちゃう。そういう方はいまのアメリカにもたくさんいると思います」。もちろん、これはアメリカだけの話ではない。日本でも陰謀論を信じている人の数は多く、ナオキマンのもとにもそれを思わせる反響が時々舞い込むのだそう。
陰謀論が拡大しているのは、ネットやSNSの普及が影響している。陰謀論にハマるのは、どんな人が多いのだろうか?ナオキマンの見解を聞いてみた。「自立性が低い方だと、陰謀論を扱うのは難しいと思います。例えば、親はナイフを自立性のない子どもに与えませんよね。でも、ネットだと、18禁の映像は子どもでもクリックひとつで見られてしまう。それに近い感覚で、ネット社会になったことで、外部からの影響を受けやすい人たちがより陰謀論に触れやすくなっていると思うんですよ」。
なるほど…自立性が高ければ、陰謀論を正しく扱うことができるということなのか。加えて、『ブゴニア』のリアリティの要素として踏まえておきたいのは、アフター・パンデミックの話であることだという。「コロナが大流行したころは皆、家にいる時間が増えて、ネットにアクセスする時間が増えました。ただでさえ家にこもって不安を募らせているわけだから、コロナやワクチンに対する政府の対応に懐疑的になったりする人も多かったですよね。僕のチャンネルもあのころ、視聴者が増えたので、そこからハマった方もいると思います」。確かに、コロナ禍はステイ・ホームだったから誰にも会えず、ぼんやりネットサーフィンする時間が長かった。編集Aも、孤独で不安に思ったらSNSでのほかの人の意見やニュースに頼り切っていた当時の自分を思い出した。
陰謀論を「エンタテインメント」として楽しむ人がいる一方、「真実」として捉える人も現実にはいる。現代社会を様々な視点から見つめることができるという意味で、陰謀論はメリットがありつつ、テディのような常軌を逸した行動へと発展していく危険性もあると、本作で思い知らされた。そんな編集Aに、さらに「陰謀論と宗教ってまったく同じだと思ってるんです」というナオキマン。「例えばキリストがいるのかいないのかで、2000年もの間、戦争しているのももはや陰謀論といえますよね。実際、テディのような思想を持った宗教もあるんですよ。宇宙船が2000年に迎えに来てくれると思って、教団者全員で集団自殺した事例もある(ヘブンズ・ゲート)。映画の中にもそういった“迎えに来てくれる”ことを臨む描写がありますよね」。
「え!宇宙人を信じる宗教まであるんですか!?」と編集Aは驚きを隠せない。「これは…まだまだ深堀りしないわけにはいかない!」と陰謀論というコンテンツにさらに興味が湧いてくる。

