“夫婦あるある”を超えた「“人類あるある”!」アルコ&ピース×天野千尋監督、『佐藤さんと佐藤さん』のヒリヒリするリアルな共感を語り尽くす!

“夫婦あるある”を超えた「“人類あるある”!」アルコ&ピース×天野千尋監督、『佐藤さんと佐藤さん』のヒリヒリするリアルな共感を語り尽くす!

「大事なのは『ありがとう』と『ごめんなさい』の魔法の言葉と肩が触れ合う程のスキンシップ」(平子)

——お2人が夫婦円満でいるために、日頃から意識していることはありますか?

平子「この映画に出てくる、アメリカ人の妻を持つサチの会社の先輩じゃないですが、僕も常日ごろから、ちゃんと言葉にして行動に移すようにしています。大事なのは『ありがとう』と『ごめんなさい』。この2つの魔法の言葉と肩が触れ合う程のスキンシップがあるだけで、どの夫婦も本当は死ぬまで上手く渡り合っていけるはずなんです。映画の中でも小さな『ありがとう』がちょっとずつ消えていく瞬間があって、復活の兆しのあとに、ダムの崩壊につながっていく…。その1mmの落石が一番怖いんですよね」

酒井「僕もめちゃくちゃ『ありがとう』は言いますし、家事も言われる前に率先してやるように心掛けています。うちは子どもがまだ3歳と1歳で小さいので、仕事に行く前に僕が掃除をしたり、洗濯ものをたたんだりしないと回らない。言葉にせずとも自然と分担される感じですね」

「ありがとう」「ごめんね」が次第に2人の間で減っていく…
「ありがとう」「ごめんね」が次第に2人の間で減っていく…[c]2025「佐藤さんと佐藤さん」製作委員会

天野「それでうまくいっているということは、相手がなにをしてほしいかちゃんと察して、的を外していないということですよね? それができるなんてすばらしいです!」

酒井「もしかすると、自分だけがそう思っているだけかもしれないですけどね(笑)」

平子「そうだね。50年後、ベンガルさん演じる菅井さんみたいになっている可能性もあるしね。奥さんから『圧しかなかった』って言われる可能性が(笑)」

サチの顧客の一人、菅井は50年連れ添った妻から熟年離婚を言い渡されていた
サチの顧客の一人、菅井は50年連れ添った妻から熟年離婚を言い渡されていた[c]2025「佐藤さんと佐藤さん」製作委員会

「タモツがちゃんと腹を割って素直な気持ちを吐き出す場所があるだけで、あの夫婦は幸せになる」(酒井)

——お2人から、サチとタモツにアドバイスはありますか?

平子「うちの場合は特殊だからあまり参考にならないと思うんですが、赤ちゃん言葉で話すことが日課になってます。『ネンネする?』『ギュウギュウ』って自然に使う。それを聞かないと子どもたちも『あれ?ケンカしてるのかな』って思うくらい。付き合いたてのころに生まれた文化が、47歳になったいまでもまだ続いています。2人の間で赤ちゃん言葉が出ているうちは大丈夫という、バロメーターみたいなものですね」

酒井「僕はタモツの地元の友だち役の一人として映画に出演して、タモツの愚痴を聞きながら、『それはお前、奥さん怒るだろ!』って、タモツを諭してやりたいです。タモツがちゃんと腹を割って素直な気持ちを吐き出す場所があるだけで、あの夫婦は幸せになると思うから。佐々木希ちゃんが働いてる居酒屋の常連にもなれるしね(笑)」

天野「(笑)」

平子「僕もそれがいいです。カウンターで飲んでる時に、女将の佐々木希ちゃんがのれんをしまって、『これで今日は飲めるよ~』って希ちゃんが言ってきて、『俺はもう帰るぞ』って言いながらも飲んで酔っぱらって、希ちゃんから頭を肩にちょこんってされた時に、『酔っぱらってんだったら俺は嫌だからな』って言ってスッと肩を引く。酒井は佐々木希ちゃんから好かれてると勘違いしながら通い続ける常連役ね(笑)」

佐々木希が演じたのは、タモツの故郷にある飲み屋の女将
佐々木希が演じたのは、タモツの故郷にある飲み屋の女将[c]2025「佐藤さんと佐藤さん」製作委員会

——妄想も広がりますね(笑)。では最後に、お2人からこの映画の魅力を改めて。

平子「結婚している人も、これからする人も、我が身を振り返る材料になるはずです。若い人ほど『自分は大丈夫』と思っているものだけど、誰もがこの2人みたいになる可能性があるという、“通過儀礼映画”です。何事も知っておくことが大事!」

酒井「中高生が見たらどう思うんだろう…(笑)。R15+くらいでいいんじゃない?」

平子「確かに!『知りすぎ注意!』ってポスターに貼っておいたほうがいいかもね(笑)。本当に、日本中の夫婦・カップルを救う可能性があります。これを観てなにも思わない人は論外ですが、観れば後戻りできる最後のチャンスになるかもしれません」

アルコ&ピースの鋭くもユーモラスな感想と、天野千尋監督の情熱あふれる制作秘話。日常の地味な衝突や言葉にならない感情を、まるで静かな爆弾のように描き切った『佐藤さんと佐藤さん』。MOVIE WALKER PRESSのYouTubeチャンネルで連載中のアルコ&ピースの「酒と平和と映画談義」では、「『ジョーカー』を観たあとと同じくらい(⁉)誰かと語り合いたくなる、人生の教訓が詰まっている」と平子が語る本作を、さらに深堀りする動画を前後編で公開!こちらもお楽しみに。


取材・文/渡邊玲子

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