“夫婦あるある”を超えた「“人類あるある”!」アルコ&ピース×天野千尋監督、『佐藤さんと佐藤さん』のヒリヒリするリアルな共感を語り尽くす!

“夫婦あるある”を超えた「“人類あるある”!」アルコ&ピース×天野千尋監督、『佐藤さんと佐藤さん』のヒリヒリするリアルな共感を語り尽くす!

「子育てが始まった時の、めちゃくちゃ大変だった経験から生まれた」(天野)

平子「監督、この映画って、淡々とした日常を描いてるように見えますけど、実際は、ものすごく細かく計算されてるんですか?それとも自然にできたものですか?」

天野「あれは、結果として出来上がったものですね。『日常におけるなんでもないことを描きたい』という想いから生まれました。だからこそ、作っている側としては正直不安もあったので、ジェットコースターみたいに楽しんでいただけて、とてもうれしいです。ところどころお2人の感想の表現が盛りすぎな気もしますが…(笑)」

平子「結婚や夫婦関係を題材にされた理由は?」

天野「やっぱり、自分自身の体験から発想することが多いんです。10年前ぐらいに結婚して、子育てが始まった時の、めちゃくちゃ大変だった経験から生まれています」

息子のフクが誕生し、幸せに包まれるサチとタモツ
息子のフクが誕生し、幸せに包まれるサチとタモツ[c]2025「佐藤さんと佐藤さん」製作委員会

酒井「ちなみに、タモツは平子さんがモデルではないんですか…?」

天野「…(笑)」

平子「別にモデルでもいいですよ?パーセンテージ、いらないので」

酒井「…だそうなので(笑)。この際、イエスかノーかではっきりお答えいただいて」

天野「平子さんがモデル…というわけではないですね(笑)。実際、世の中にもこういう人は意外といるだろうな、という要素をなるべくたくさん入れたかっただけなので」

平子「…ってことにしときましょう」

酒井「たしかに。世の中にタモツと似ている人は平子さん以外にもたくさんいますよ」

平子「それにしても似てましたよね。タモツの骨格もなんとなく僕に近かったし…」

酒井「え、あんなにシュッとしてる宮沢さんと!?」

天野「たしかに、髪型はちょっと近いかもしれないですね(笑)」

平子「そうですよね。身長もほぼ一緒!」

酒井「メガネも似てる…かな?」

アルコ&ピースの平子とタモツの共通点のひとつとして挙げられたのは、故郷が福島であること
アルコ&ピースの平子とタモツの共通点のひとつとして挙げられたのは、故郷が福島であること[c]2025「佐藤さんと佐藤さん」製作委員会

平子「いやぁ。実際に僕もタモツと同じく東北の福島出身で。まさしく33、4歳まで芸人としての下積み期間があって。その間に結婚して、子どもが生まれ、奥さんだけが働いていて…みたいな時期もありましたから。そのころの後ろめたい気持ちとか、それこそ親族が集った時の独特の空気とか、めちゃくちゃ共感する部分がありました」

天野「そうだったんですね。平子さんが結婚を決められたきっかけは?」

平子「僕の場合は奥さんがすごく結婚したがってくれたんです。僕はお金もないし、責任も持てないから、『ダメだ、ダメだ』と言ってたんですが、奥さんが1年半も『結婚したい』と根気強く言い続けてくれたので、そこまで言ってもらえるなら…と。もちろん両親には大反対されましたけど。だからこそ、タモツの故郷が東北だっていうのもめちゃくちゃリアルで。地方には『男が仕事をして責任を持つ』といった結婚観がいまだに根強いですから。まだ司法試験に受かってもない状況にあるタモツが結婚に踏み切れない葛藤が、言葉で説明しなくても自然と伝わるんですよね」

天野「そうなんです。タモツ自身その価値観の狭間で苦しんでいるところもあって…。最初、クールなビジュアルの宮沢さんに情けない役をやってもらったらギャップがあっておもしろいんじゃないかと思ってオファーしたんですけど、タモツに宮沢さんご本人の誠実さがにじみ出て、まじめなんだけど空回ってしまう応援したくなるキャラクターになりました」

活発なアウトドア派のサチを岸井ゆきの、正義感が強くまじめでインドア派のタモツを宮沢氷魚が演じる
活発なアウトドア派のサチを岸井ゆきの、正義感が強くまじめでインドア派のタモツを宮沢氷魚が演じる[c]2025「佐藤さんと佐藤さん」製作委員会

「語尾とか接続詞には、マジで気をつけないと!一番間違いやすいんだ。僕みたいなヤツが(笑)」(酒井)

平子「あのビジュアルで男のどうしようもなく情けない部分を滲み出せるなんてね」

酒井「それこそ、俳優さんの力と監督の感性のすべてが合致してできた映画だと思うんですが、あれはかなり細かく演出されたんですか?」

天野「撮影に入る前に、1週間ほどかけてリハーサルをし、岸井さんと宮沢さんとかなり細かい部分まで動きを確認したので、きっとその成果も出ているんじゃないかと。岸井さんって生で観ると圧倒されるぐらい芝居の密度が濃くて、すごいんですよ。『サチってこういう人なんだ!』って、私が納得して驚かされたくらい。あとは、私自身の経験としても、サチとタモツの両方の気持ちがわかるというか。出産直後はワンオペで子育てしてたこともあれば、いざ撮影が始まると夫に子育てを全部任せて家を長く空けることもあって…。家の中で待ってる人の気持ち、外で働く人の気持ち、その両方を理解していたのも大きかったかもしれません。サチとタモツに限らず、現実でも人の気持ちは一枚岩ではないじゃないですか。なんかズレてるな…と感じても、頑張ればまだどうにかやれるんじゃないかと思って努力する。だけど、やっぱりうまくいかなくて…」

愛妻家であるアルコ&ピース、『佐藤さんと佐藤さん』を観て、「一歩でも道を踏み外したら、サチやタモツと同じ轍を踏みかねない」と共感の嵐!
愛妻家であるアルコ&ピース、『佐藤さんと佐藤さん』を観て、「一歩でも道を踏み外したら、サチやタモツと同じ轍を踏みかねない」と共感の嵐!撮影/Jumpei Yamada(ブライトイデア)

酒井「監督のご家庭はいまも円満ですか…?」


天野「うちの夫婦は割と溜め込む前に吐き出すタイプで。『なんでこんなバカみたいな喧嘩しなきゃいけないの?』とは思うんですが、小出しにすることでお互いの気持ちをぶつけ合えてるという意味では、日々の小競り合いがデトックスにはなってる気はしますね」

平子「うちも多少の小競り合いはありますけどね。ただ、それは別に悪い意味での小競り合いじゃないというか。あくまで善に向かおうとしてる2人の小競り合いで」

酒井「その時間って大事ですよね。それだって、たった1度でも角度がズレて変わると、とてつもない方向に行っちゃいますけどね。それこそ、劇中の2人のケンカのきっかけになる、『トイレットペーパーないよ』みたいに、語尾がちょっと違っただけで。そういえばうちの奥さん、ハッピーな時のサチに似てるんだよな。僕になにかいいことあった時なんかに、一緒に喜んでくれるところとか。だからこそ、いつかキレたらうちの奥さんもあんなふうになるのかなってちょっと怖くなったりして…。語尾とか接続詞には、マジで気をつけないと!一番間違いやすいんだ。僕みたいなヤツが(笑)」

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