「誰も見たことがない舘さんと郷敦くんを撮れた」。藤井道人&舘ひろし&眞栄田郷敦が『港のひかり』の始まりから舞台裏まで語り合う
「今回の作品を通して、自分たちがやってきたことは間違っていなかったと確信も得られました」(藤井道人)
――現場の初日にお邪魔させていただきましたが、これまでの藤井組を拝見してきた人間からすると確かにイレギュラーでした。藤井監督はどうしてここまでのチャレンジに踏み切ったのでしょう。
藤井「僕はいま39歳ですが、30代の内になにを出来るかと考えた時に、このままでいいのだろうかという悩みがありました。僕は俳優部を通して映画の歴史を教えてもらってきましたが、自主映画を通してキャリアを積んできたこともあって自分たちの世代のことしか知らないなとも思っていて。今回の作品を通して、本当に多くのものを得られましたし、自分たちがやってきたことは間違っていなかったと確信も得られました。今回は、スタッフが30代と60代しかいないような環境で、かつ定員が40人と決まっていたんです。いつもの現場のように『この日から(スタッフが)増えます』みたいなこともなく、最初から最後まで決まった集団でやりきらないといけない。初めてのこと尽くしで確かに不安はありましたが、おもしろいことに徐々に慣れてくるんですよね。僕からすると、一番怖いのは慣れてしまうことでした。せっかく新鮮な環境に身を置いた意味がなくなってしまいますから」
――モニターがない状況だと、演者の芝居を生で見て演出をされるわけですよね。
藤井「自分の演出を俳優部が体現してくれているのかどうか、やはり最初は戸惑いがありました。画があれば一目瞭然で“これを自分は狙っている”という意図が明確ですが、大作さんを信じて委ねることへの矯正期間はやはり必要でした。ただ、ふと思ったんですよね。“映画を混乱させてやろうというスタッフは1人もいない”と。その想いに至ってからは楽しめるようになって、俳優部が一番いいと言われるように演出を頑張ろうと切り替えられました。その結果、誰も見たことがない舘さんと郷敦くんを撮れたと思います」
取材・文/SYO

