「誰も見たことがない舘さんと郷敦くんを撮れた」。藤井道人&舘ひろし&眞栄田郷敦が『港のひかり』の始まりから舞台裏まで語り合う

「誰も見たことがない舘さんと郷敦くんを撮れた」。藤井道人&舘ひろし&眞栄田郷敦が『港のひかり』の始まりから舞台裏まで語り合う

「スタッフさんが皆生き生きとしているように見えました」(眞栄田郷敦)

――藤井監督はこれまで、同年代か下の世代の主人公を描いてきたかと思います。三浦のように倍近く年が離れている人物を描くにあたり、どんな工夫をされたのでしょう。

第48回日本アカデミー賞最優秀監督賞を受賞した藤井道人。次々と挑戦的な作品を世に送り出し続けている
第48回日本アカデミー賞最優秀監督賞を受賞した藤井道人。次々と挑戦的な作品を世に送り出し続けている撮影/興梠真穂

藤井「正直、半分は舘さん頼みでした。今回はオリジナルで作れたこともあって、舘さんに『こういう時はどういう感情になりますか?』とお聞きして脚本に反映していくこともありました。これは僕の一回りぐらい下の幸太においてもそうで、郷敦くんから出てくる感情を教えてもらっていきました。ディスカッションを重ねて見えてくるものは多かったように思います。あとはそれを自分が演出でどう嚙み砕いて、どう導けるかのチューニングを頑張りました」

――藤井監督は「感情を撮る」を大切にされていて、そこには確固たる理論があるように感じますが、舘さんは藤井監督の演出方法のどういった部分に惹かれたのでしょう。

舘「でも僕からすると、理詰めな感じはまったくないんですよ。むしろ、自然な感じがいいなと思っていました。特に今回はキャメラマンが木村大作さんじゃないですか。現場にはモニターがありませんし、きっと藤井監督にとっては初めての経験だったでしょうから、不安なまま演出をされている感じは見受けられました。ただそんななかでも、子どものように無邪気な大作さんを大人として上手くいなしていました」

名キャメラマン、木村大作の現場は「スタッフさんが皆生き生きとしている」と語る眞栄田郷敦
名キャメラマン、木村大作の現場は「スタッフさんが皆生き生きとしている」と語る眞栄田郷敦撮影/興梠真穂

眞栄田「芝居をやっているほうからすると、モニターがあっても普段からそこまで観る機会もありませんから、あまり変わりませんでした。よく『フィルムだと撮り直しが難しいから緊張されたのでは?』と言われますが、別にデジタルであっても“もうワンテイクできるぞ”と期待して臨むことは僕の場合はありません。大作さんの現場は時代の空気に流されない、まっすぐな言葉が出る瞬間もありましたが、全部に愛があるので逆に活力をもらえて、スタッフさんが皆生き生きとしているように僕には見えました」

舘「そうなんですよね。きっと一番違和感を持ったのは藤井監督なんじゃないかな。フレームになにが映るかわからないまま演出をすることはこれまでなかったでしょうし、その“どんな画になるんだろう”という不安さがよかったような気はしています。だって、三浦と幸太のツーショットを片側だけからカメラ4台で撮るんですよ。あまり聞いたことがないですよね」

――通常の撮影だと、引き、寄り、返しといったように複数パターン撮るものですよね。


『ヤクザと家族 The Family』以来、藤井監督との再タッグを熱望したという舘ひろし
『ヤクザと家族 The Family』以来、藤井監督との再タッグを熱望したという舘ひろし撮影/興梠真穂

舘「そしてカメラが動くものだと思いますが、大作さんの場合はほとんどフィックス(固定)です。しかも本人がああいう元気な人だから、大人として冷静に対処しなければならなかったでしょう。すごく苦労された作品だと思いますよ」

藤井「舘さんに本当に感謝しているのは、僕が現場でつらそうにしていると絶対に声をかけてくださったことです。どうしても自分が上手くハンドリングできないと悩んでしまいますが、『大丈夫?』『疲れてない?』と気遣ってくれて。心配させちゃってすみませんと思いながらも、舘さんのお声がけが自分のお守りになって堂々とできました。そして、ずっと前からご一緒したい俳優の一人だった郷敦くんとこういう環境で出会えたことで、短期間で距離を縮められた気がしています。『いつかこういう作品をやりたいね』『このドラマがおもしろかったから観てみて』みたいにいろいろと話せました」

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