榎木淳弥と櫻井孝宏が振り返る「呪術廻戦 『渋谷事変』」。2人が込めたこだわりと意外な見どころは?
「虎杖悠仁は健やかなクレイジー」(櫻井)
――櫻井さんから見た虎杖の好きなシーンもお聞かせください。
櫻井「虎杖悠仁ってクレイジーじゃないですか」
榎木「ちょっとネジが外れている感じはありますよね」
櫻井「健やかなクレイジーという不思議な内訳。そのバランスが成立することを体現しているキャラクターで、確かな答えを手繰り寄せてちゃんと必然性を持って生きているんだけど、その出どころがクレイジーなんですよ(笑)」
榎木「あー、わかります!」
櫻井「五条とは種類の違うクレイジーですね。脹相との戦いでのめくるめく優勢、劣勢が変わるなか、勝負をかける瞬間の虎杖がヤバくて」
榎木「ヤバい感じ、確かにありました」
櫻井「考え方やロジックが反則すぎておもしろい。そして、そこに理解不能の怖さがある。主人公だし、ヒーローっぽい立ち位置のキャラクターだけど、なんかそうじゃないんだよね」
榎木「そうですね。戦うのは世界平和のためとかではないですし」
櫻井「野良の怖さというのか、野蛮な感じ?」
榎木「そうかもしれないです」
櫻井「それが脹相との戦いによく現れていましたね」
「釘崎の登場回でみんなで帰るところは、数少ない日常の平和なシーンでとても印象に残っています」(榎木)
――虎杖は現役の高専生、夏油も元高専生としての姿が「懐玉・玉折」で描かれました。これまでに登場した「高専(時代)シーン」でのお2人のお気に入りをお聞かせください。
榎木「実は学校でのシーンって本当に序盤くらいで。そのなかでも釘崎の登場回で呪霊を倒してみんなで帰るところは、数少ない日常の平和なシーンでとても印象に残っています」
櫻井「僕は『懐玉・玉折』が好きで。呪術高専という学校があるという前提が、まずおもしろい。呪術を学ぶための専門学校があって、そこで学生生活を送っている。個々人の理由や事情はいろいろあるけれど、それだけで青春だなと感じて。すてきな場所だし、いいものとして高専の存在を捉えていました」
――夏油の制服の着こなしは虎杖たちとはだいぶ違いがありますが、夏油の着こなしはいかがでしょうか?
榎木「短ランにボンタン!」
櫻井「あのスタイルは『ビー・バップ・ハイスクール』のトオルを彷彿とさせます。そういう自分の記憶や経験に紐づけることができるディテールが落とし込まれているようにも感じて。もしかしたら文脈的な見方もできる作品なのかな、と思ったりもしました」
榎木「なるほど!」
櫻井「夏油を見てヤンキーだとは思わないじゃないですか」
榎木「やんちゃというか…」
櫻井「悪ガキって感じだよね。そういうくすぐりがそこかしこにあると思います。僕のようなおじさんが観ると自分の記憶に触れてくるような感覚があるというのかな」
榎木「そういう楽しみ方もできるなら、もっともっと幅広い層の方に観てもらえそうですね」
櫻井「観る人によって刺激されるところが違うのも、この作品のおもしろさかもしれません」
取材・文/タナカシノブ
