榎木淳弥と櫻井孝宏が振り返る「呪術廻戦 『渋谷事変』」。2人が込めたこだわりと意外な見どころは?
「映像に任せつつ、罠っぽい分岐点を仕掛ける」(櫻井)
――虎杖は成長という面で変化もあれば、「渋谷事変」の終盤でも垣間見えていましたが、新章に入ると印象が変わります。夏油は偽夏油との違いという意味での変化もあります。虎杖、夏油、それぞれの“変化”の演じ方についてお聞かせください。意識的なスイッチのようなものはあるのでしょうか。
榎木「東堂(葵)が助けに来てきてくれるあたりは、いままでは気づいていなかった自分の行動理由に気づいてしまって、ちょっと自己嫌悪に陥っているような、心境に変化があったところ。なので、意識的にという感じではないですが、虎杖はそこからなにか変わったんじゃないかなと思いながら演じていました」
櫻井「僕はケースバイケースでやっているかもしれません。たとえば、五条封印の一連の企みの中で本人と相対した時に、彼に引っ掛かりを残せるようわかりやすく違和感を作りました。偽夏油が夏油傑の感覚や記憶が全部わかると発言していて、それって要するに完コピもできるということじゃないですか。だけど、私の演技のアプローチとしてはそうせず、夏油っぽいけれど?みたいな曖昧な表現にしたいと思ってやっていましたね。芝居を変えるのではなくカラオケで半音下げるような音をいじる方法と言いますか。そうすることで、観ている側が『なにか違う』と思ってくれたんじゃないかなと」
――そのとおりになっています、これはどっち?みたいに。
櫻井「なので、僕が夏油と偽夏油の表現を変えたというよりも、映像に任せつつ、罠っぽい分岐点を仕掛ける狙いで、その都度ニュアンスをちょこちょこ変えたりはしていました。どこをどう調整したのかもう覚えてませんが、ニュアンスとしてはそんな感じです」
「夏油に感情が乗っていると感じたのがすごく意外」(榎木)
――劇場版は見どころがギュッと詰まっていますが、お互いが演じるキャラクターの好きなシーンや表現はありますか?
榎木「『渋谷事変』で印象的だったのは、加茂憲倫の話が出た時に、なんだか夏油が嫌そうだなと感じて。基本、何事も相手にしない人だと思っていたら、意外とハッキリ拒絶していたことがすごく気になったし、自分のアイデンティティのようなものがなにかあるのかなとも思いました。感情が乗っていると感じたのがすごく意外で、ちょっと気になったところです」
――櫻井さん、そのあたりは意識的に?
榎木(櫻井の代わりに)「もちろん!(ニヤリ)」
櫻井「もちろんなの?」
榎木「もちろんです!」
櫻井「だ、そうです(笑)。確か、あのシーンは演出が入ったんじゃないかな」
榎木「そうだったんですね。結構嫌そうに聞こえて、すごく印象に残っています」
櫻井「後々、わかることではあるけれど、あのシチュエーションにおいて偽夏油はもっと先のことまで考えています。確信めいた発言をした脹相は偽夏油からしてみれば、『はいはい、そうですね』みたいな感じっていうのかな…」
榎木「偽夏油にとってはものすごくつまらない話なんですよね。君が誰かで僕が誰かみたいなことって」
櫻井「なんだろうな。偽夏油ってみんなにわかるように話をしてくれないというか。ただただ、ここから大変なことになるよって、今から始まるよってメッセージを残して去って行く。え?まだ始まってなかったの?ってなるよね (笑)」
榎木「もう、だいぶ始まっているけれど?という感じですよね」
櫻井「そういう情報格差や目線の違いがあって、会話になっているんだか、なっていないんだかわからないシチュエーションなので、演出を入れて整えたんじゃないかなって思ってます」
榎木「なるほど、そうだったんですね…」
