ただ怖いだけじゃない!実は感動できる「死霊館」ユニバースのエモーショナルな家族ドラマ
愛娘ジュディに受け継がれたロレインの強い霊感
話は逸れるが、このあとに製作されたユニバースの一つ、「アナベル」シリーズの第3作『アナベル 死霊博物館』(19)は、ウォーレン夫妻の自宅を舞台にした“死霊館2.5”とも呼べる作品。主人公は夫妻の幼い愛娘ジュディ(マッケナ・グレイス)で、彼女は母ロレインと同様に強い霊感を持っている。そんなジュディが、年長のベビーシッターやその友人たちと共に悪魔と対峙する。こちらもキャラクター個々に家族のドラマを纏っているのでぜひチェックを。
時に悪魔は夫婦のつながりを引き裂こうともする
「死霊館」シリーズに話を戻そう。3作目『死霊館 悪魔のせいなら、無罪。』(21)は、コネチカット州で起きた悪魔裁判の実話を基にしている。1981年、ウォーレン夫妻はグラツェル家の8歳の少年の悪魔祓いを行うが、悪魔は少年の姉の婚約者アーニー(ルアイリ・オコナー)に乗り移り、憑依された彼は知人を殺した罪で裁判にかけられてしまう。悪魔の仕業と確信した夫妻が法廷でアーニーの無罪を訴える一方で、グラツェル家を呪う魔物にも立ち向かっていく。前2作とはパターンは異なるが、本作でも一組の家族に受難が降りかかり、それを救おうとするウォーレン夫妻もまた、エドが呪いによってロレインを殺そうとするなど絆の力が試される。手に汗握るドラマがあることに変わりはない。
新たなファミリー共闘の構図で挑む最後(?)の悪魔祓い
そして注目の新作が『死霊館 最後の儀式』だ。1986年、エドの心臓病の悪化によりウォーレン夫妻は一線を退くことに。時を同じくして、ペンシルベニア州の三世代が同居する敬虔なスマール一家は、呪われたアンティークの鏡を手にしたことで悪魔に侵食されようとしていた。さらに、成長した娘ジュディ(ミア・トムリンソン)が一家を襲った超常現象に関わったことで、夫妻は戦線復帰を余儀なくされる。
先述したとおり、ジュディは母譲りの霊感を持つ。エドとロレインはそんな彼女を悪魔から守ろうとするが、老いという現実に苦しめられている。そこにジュディの婚約者であるトニー(ベン・ハーディ)という青年が助太刀に入り、新たなファミリー共闘の構図が出来上がっていく。その共闘は言うまでもなく前3作以上に壮絶で、誰もが命を失いかねない危機に直面する。
結末は観てのお楽しみだが、シリーズファンにはうれしいサプライズが用意されていることは断言しておこう。そしてそれは、「死霊館」シリーズが家族のドラマに根差していたとことに、改めて気づかせてくれるに違いない。
文/相馬学