「ウェス・アンダーソンの作家性が爆発」「ひと言で言うなら、観る美術館」原点回帰的最新作『ザ・ザ・コルダのフェニキア計画』に魅了されるワケ
「ベニチオ・デル・トロがイケ渋オジ」「ヘビースモーカーなリーズルが最高にクール」…おなじみの演技派たち&初参加の新星が織りなすマリアージュ
アンダーソン作品には、いわゆる常連俳優と呼ばれる過去作に出演したキャストたちの再出演が多い。一人一人が主役でもおかしくない演技派たちが結集し、ほかの作品では見られない役柄でシュールな演技を披露し観客を楽しませてくれる。
主人公のザ・ザを演じるのは『フレンチ・ディスパッチ ザ・リバティ、カンザス・イヴニング・サン別冊』(21)に出演したベニチオ・デル・トロ。さらに、『アステロイド・シティ』のトム・ハンクスがアメリカ人実業家でバスケットボールが得意なリーランド、スカーレット・ヨハンソンがザ・ザのいとこで水力発電所の建設を監督しているヒルダを演じているほか、義理堅いギャングの親分役のマチュー・アマルリック、アメリカ人の海運王役のジェフリー・ライトらおなじみの面々も参加している。Netflix配信の短編集「ヘンリー・シュガーのワンダフルな物語」での風変わりなキャラクターがハマっていたベネディクト・カンバーバッチもザ・ザと因縁のある異母兄弟のヌバルおじさん役で出演しており、詳細はぜひ劇場でチェックしてほしいが、クライマックスで見られるキレッキレぶりは必見のひと言。デル・トロの渋みのあるルックスから繰り出すシュールな言動、普段は紳士然とした役柄も多いカンバーバッチのギャップに魅入られるファンが続出しているようだ。
「ベニチオ・デル・トロが完璧!」
「ベニチオ・デル・トロがイケ渋オジですてき~」
「ベネ様最高~!」
「なんといってもセリフの言い回しと会話のテンポが最高!」
「脇を固める俳優陣が豪華すぎてお腹いっぱい!」
一方、ザ・ザと共に旅をする2人には、初参加組をキャスティング。娘のリーズル役は若干24歳で主役経験がほとんどないミア・スレアプレトンが、同じく家庭教師ビョルン役は『JUNO ジュノ』(07)、『スコット・ピルグリム VS. 邪悪な元カレ軍団』(10)などに出演してきたマイケル・セラが演じている。特にスレアプレトンは重要な役に抜擢された期待に応えて、父ザ・ザへの複雑な想いと移りゆく心情変化を見事に体現し、観客からも「修道服にルージュ、無機質な目でパイプをぷかぷか吸うヘビースモーカーな娘リーズルが最高にクール」という感想が寄せられている。名だたる俳優たちに負けない、唯一無二な存在感にクギ付けになるはず。
どのシーンを切り取っても絵になる美術作品のような映像美、豪華キャストたちが体現するおかしさ、せつなさにもあふれた唯一無二の家族ドラマはスクリーン映えすること間違いなし!ウェス・アンダーソンにしか創出できない映像体験に『ザ・ザ・コルダのフェニキア計画』で存分に浸ってほしい。
構成・文/平尾嘉浩