「ウェス・アンダーソンの作家性が爆発」「ひと言で言うなら、観る美術館」原点回帰的最新作『ザ・ザ・コルダのフェニキア計画』に魅了されるワケ
「父と娘の歪な家族の魅力にあふれた大傑作」…父娘のギャップが埋められていく家族ドラマとしてのおもしろさも
離散した家族が父親の嘘をきっかけに再び一緒に暮らし始める『ザ・ロイヤル・テネンバウムズ』(01)、絶交状態の3兄弟がインドを列車で旅する『ダージリン急行』(07)など家族の絆と再生を描いてきたアンダーソン監督だが、本作でもザ・ザのビジネスと並行して彼と娘リーズルの関係性にスポットが当てられ、ある意味で原点回帰的な作品としても見て取れる。
「ウェス・アンダーソンの家族のお話、相変わらずジョークたっぷりでよい」
「真実がどうかは関係ない親子愛」
「父と娘の絆を通して描かれる家族の歪な魅力にあふれた大傑作」
「悪いオヤジ×不良シスターのバディ感に心を撃ち抜かれた」
リーズルはザ・ザのあくどい仕事ぶりを嫌悪しており、財産を相続することにも後ろ向きだ。さらに、彼が母親を殺したのでは?という疑いも抱いている。この娘と父のギャップが奇想天外な旅のなかでどのように埋められ、絆が芽生えていくのかも見どころに。一方、ザ・ザも事あるごとに生と死の狭間を行き来する場面に直面し、彼の人生観が揺さぶられるほか、謎めいた過去もしだいに明かされる。
「目が離せないスピーディな展開」「ナンセンス系の雰囲気も好み」…風刺の効いたブラックユーモアがクセになる
早いテンポの会話劇、まくし立てるような怒涛の展開には、特に初めての人は少々戸惑ってしまうかもしれない。しかし、だんだんとそれがクセになってしまう不思議な求心力を持つのもアンダーソン作品の魅力。本作では「フェニキア計画」を下敷きに、市場を独占して莫大な利益を得ようとするザ・ザら野心家たちの姿を皮肉とユーモアをたっぷり込めて描いていく。
「目が離せないスピーディな展開」
「スプラッターなスタートを切るところがさすが」
「ウェス・アンダーソンの作家性が爆発し、観た人を優しく包み込むメッセージにもあふれている」
「ラストに流れるバッハの『心と口と行いと生活で』がすべてを物語っている」
「シュールな笑いが散りばめられていて、いろんなシーンで笑った」
「すかしギャグみたいなナンセンス系の雰囲気も好み」
冒頭でのプライベートジェットの爆発に巻き込まれ、ザ・ザと一緒に搭乗していた男性の悲惨な末路は、ショッキングながらユーモアを感じさせる表現。また、プロジェクトの投資額や収益の配分をめぐって、銃を突き合わせる勢いでザ・ザとビジネスパートナーたちが激しく口論し、まさかのバスケのフリースロー対決まで行っているのだが、観ている側としてはおじさんたちがただワチャワチャしているだけにしか見えない。劇中に張り詰める緊張感とは裏腹に、なんともいえないくだらなさが漂っているところにもアンダーソン監督らしい風刺が効いている。