【ネタバレあり】1作目へのリスペクト満載で描かれる“マジノ号の惨劇”…「エイリアン:アース」第5話レビュー
ゼノモーフだけではない!恐ろしい異星生物たちがクルーに襲いかかる
そんな本話で主人公の位置づけなのが、マジノ号唯一の生存者となるクミ・モロー(バボー・シーセイ)である。異星生物の安全を最優先に考える保安責任者である彼は、火災やフェイスハガーの脱走が事故か何者かによる工作か捜査を開始。序盤はモローの犯人捜しを中心にしたミステリー仕立てで進行する。現場検証のほか、監視カメラの映像をズームやトリミングしながらチェックしたり、心理テストを挟みながらクルーを取り調べる姿が、第1作の監督であるリドリー・スコットの『ブレードランナー』(82)に登場するデッカードと重なって見えるのもおもしろい。
ウェンディらプロディジー勢を中心に展開する本作で、ウェイランド・ユタニのモローはヒール枠。これまでの4話を通し、プロディジーからエイリアンを取り返すため暗躍する姿が描かれてきた。神出鬼没、次々に策を仕掛けるバイタリティとユタニ(サンドラ・イー・センシンダイバー)への強い忠誠心は驚くばかりだったが、5話で彼の執念の源も明かされる。片腕がなくガーナのストリートで暮らしていたモローは、ユタニに拾われサイボーグとして新たな人生を与えられたのだ。汚れ仕事で会社に貢献してきた苦労人らしく、家族の世話を含め面倒を見てくれているユタニはモローにとって絶対的な存在だった。目的のためには手段を選ばないモローだが、回想シーンを交えて描かれるそのヒストリーによって彼への認識が一変した。
モローの捜査中も、エンジン室の放火など新たな事件が発生。手違いや判断ミスで事態が悪化していくサスペンスに加え、ドラマを盛り上げるのがエイリアンたち異星生物の存在だ。これまでも彼らの凶行や生態が描かれてきたが、その見せ場がアップデート。第1話でレスキュー部隊を襲った血を吸う異星生物は、ガラスケースの隙間を利用して抜け出しクルーの飲料水の中に無数の幼虫を産卵。その水を飲んだ者は体内から蝕まれていく。しかもその体を傷つけると、致死量の毒ガスを発生することも判明。エイリアンの酸の血液に匹敵する、危険な生態の持ち主だった。第4話で高い知能を持つことが確認された目玉の形をした異星生物は、吸血生物の脱走を学習しガラスケースを割って逃走。人間ばかりかゼノモーフの顔に張り付いて、その肉体を乗っ取ろうとする姿も描かれた。目玉生物が宿主を使って奇妙な声を発するなど、今後そのポテンシャルがどこまで引き出されるのか楽しみが増えた。また乗っ取られた人間がゼノモーフと取っ組み合いを演じるという、前代未聞の見せ場も本エピソードの収穫だった。
手のひらサイズの吸血生物や目玉生物に対し、貫禄すら漂う存在感を見せつけるのがゼノモーフだ。ダクトを使って移動しながら次々にクルーを襲撃し、1話でもちらりと描かれた船長代理のサヴェリとの追走劇などスリリングな見せ場を盛り上げた。興味深いのはすでにクルーから「ゼノモーフ」と呼ばれていること。この呼称が使われたのは『エイリアン2』からだが、少なくともウェイランド・ユタニではこの時代からゼノモーフで通っていたことが示された。
ほぼマジノ号内で完結する本エピソードには、第1話と同じブリッジや食堂、通路やコンピュータ室などのほか、天井からチェーンが下がった機械室や通信室など新規セットも登場。どれもノストロモ号に準じたデザインになっている。オリジナルの図面を参考にセットが建て込まれた本エピソードのエンドロールには、プロダクション・デザイナーのマイケル・シーモアを筆頭に『エイリアン』の美術チームへの謝辞が加えられている。
モローを掘り下げ、今後の彼の活動を示唆する形で幕を閉じた第5話。そんな本エピソード最大のトピックが、マジノ号墜落にプロディジーのCEOカヴァリエ(サミュエル・ブレンキン)が一枚かんでいたことが明かされたことだろう。マジノ号がプロディジー・シティであるニューサイアムに落下したのは、単なる偶然ではなかったのだ。船内での犯人捜しを通し、モローが人の心を持ったシンセの存在を知るくだりも描かれており、1話で彼がマジノ号が墜落した場所にこだわっていたり、3話で「マシンはマシンか?」と謎のセリフを口にした伏線も回収されている。回を重ねるごとにダークサイドをにじませてきた“トリックスター”カヴァリエはなにを考え、どう動くのか?次の一手が楽しみだ。
残すところあと3話。エイリアンの言語を研究するウェンディが宇宙最強生物とどう対峙するのか、エイリアンをめぐるプロディジーとウェイランド・ユタニの争いを含めますます盛り上がる「エイリアン:アース」から目が離せない!
文/神武団四郎