スパイク・リー版『天国と地獄』の配信がスタート!海外で繰り返し作られてきた黒澤明のリメイク作品を振り返る
現代版として再構築された『天国と地獄 Highest 2 Lowest』
そして今回配信となるのが、『天国と地獄』をスパイク・リー監督がデンゼル・ワシントン主演で再解釈した『天国と地獄 Highest 2 Lowest』だ。
エド・マクベインの小説「キングの身代金」を原案とする三船敏郎主演のオリジナル版はご存知の通り。靴メーカーの常務の息子と間違えられて、住み込み運転手の子どもが誘拐される事件が発生。巨額の身代金が要求されるなか、警察はなんとかして犯人を逮捕しようとする。
わずかにしか開かない特急こだまの洗面所の窓から身代金が入った鞄を落とすというユニークな受け渡し方法や、鞄を燃やした際に上がるピンク色の煙など、細部へ仕掛けが張り巡らされた本格派のミステリーで、映画の公開後は模倣犯による犯行があとを絶たなかったという。
A24とApple TV+がタッグを組んだリメイク版では、舞台を現代のニューヨークにチェンジ。音楽プロデューサーとして成功を手にした男、キング(デンゼル・ワシントン)の息子が誘拐され、愛する我が子の命と引き換えに要求されたのは、なんと1750万ドル(約26億円)もの大金で…と細かな設定の変更はあるものの大筋は原作と同じだ。
予告にも「人生には金以上に大切なことがある」と人生観を語っていたキングが「どこだ?俺のマネー」と睨みを利かせる場面が登場するなど、不測の事態を通じて人間の本性を浮き彫りにしていく心理サスペンスの側面が強く、単なる誘拐事件を超えた物語が繰り広げられていく。
また、身代金を入れる鞄へのこだわりや地下鉄を使った受け渡しなど、ニューヨーク的なアレンジが施された細部のギミックもツボを押さえたリメイクになっているよう。
オリジナルが名作だけに、映画として見応えのあるものが多いリメイク作品たち。『天国と地獄 Highest 2 Lowest』の配信を機に、あわせてチェックしてみてはいかがだろうか?
文/サンクレイオ翼