劇場版『TOKYO MER』監督&脚本家が明かすシリーズ制作裏話!人気の秘訣は「どのキャラも愛されるように“お気に入りのキャラ”は作らない」
「医療従事者の方に感謝とエールを送ることを大命題としている作品」(黒岩)
――4月に開催したファンミーティングのチケットも即完売。シリーズの人気の高さがうかがえます。3回以上映画館に足を運んだという方が大半だったのには驚きました。
松木「ありがたいです」
黒岩「僕は物語が好きなので一度観ちゃうと満足してしまうので、複数回観る方がどこに惹かれているのかすごく気になります」
松木「私は皆さんの反応の違いを知りたくて前作は10か所以上の映画館に足を運びました。エリアによって客層も違うし、シーンでの反応にも違いがあってすごく勉強になりました」
黒岩「監督にはそういう目的があるのはわかります。では、観客の方はどうなのか…と考えた時、キャラクターを愛しているのかなと思ったりもしています」
松木「確かにそうだと思います!」
黒岩「僕ももちろんキャラクターを愛して物語を描いていますが、やっぱりストーリーが好き。仕事でもプライベートでも物語がどう展開するのか、どういうセリフを言うのかだけを観ているから、1回観ちゃうと満足しちゃうんですよね」
松木「黒岩さんが手掛ける作品ではキャラクターがすごく愛されている印象があります。だから何度も観たくなってもらえるのかな、と。黒岩さんは、セリフが好きならそこを何度も聞きたいとかもないんですか?」
黒岩「ないですね。終わったら次書かなきゃいけないっていうのもあるけれど」
松木「確かに(笑)」
黒岩「作品はもちろん、キャラクターは特に客観的に見ないといけない立場だと思っています。作り手として誰かを特別に愛してしまったら、ほかの人は愛せないでしょ?ある意味、均等に愛さないと成り立たない。喜多見を大好きになったら、嫌いなキャラクターが出てきてしまう。だから、どんなキャラクターも愛されるように特定のお気に入りは作らないようにしています」
松木「私も撮影している間は、そういう感覚を持つようにしています。でも、皆本当に好きになっちゃう」
黒岩「みんなを均等に愛しているとかちょっと気持ち悪いかな(笑)」
松木「チャラ男みたいですね」
黒岩「いままで描いてきたキャラクターは全員好きだから、全員愛しているって言い方に変えます!」
松木「フラットに見ているからこそなんですね。黒岩さんが描くキャラクターがみんな魅力的に感じる理由が少しわかった気がします」
黒岩「キャラクターの関係性は好き。距離感とかを描くのもすごく好きです」
松木「わかります!MERではシリーズを重ねるたびに、キャラ同士の関係性が育っていくのがとても素敵だと思っています」
――では最後に改めて。「TOKYO MER」シリーズにおいての作り手としてのこだわりを教えてください。
松木「黒岩さんの脚本を読んだ時のワクワクをお子さんから大人までに伝えたいというベースがあるなかで、エンタメとリアルのバランスは演出として一番大切にしています。医療はドキュメンタリーだけど、オペシーンはチャンバラ。噴火の爆発は従来の火薬3倍で、演出でも楽しみたいところのバランスは大事にし続けたいです」
黒岩「1つ目はスピード感。それは脚本の段階から圧倒的スピード感を落とし込んでいます。座って話す場面は作らない。常になにかをしながらセリフを言うことを脚本の段階から気にしています。命を救うためにできることを的確に最速でやる。それを考えながら作ることを大事にしています。もう一つは、これまで何度も言ってきましたが、『TOKYO MER』は医療従事者の方に感謝とエールを送ることを大命題としている作品です。この作品には絶対悪人の医療従事者が出てきません。もちろん、実際にはいろいろな性格の人がいると思います。ただ、命を救うということに関しては、絶対的にブレない人たち。物語を書いているとどうしても悪人的存在が欲しくなるものですが、この作品ではやらない!って決めています」
取材・文/タナカシノブ