劇場版『TOKYO MER』監督&脚本家が明かすシリーズ制作裏話!人気の秘訣は「どのキャラも愛されるように“お気に入りのキャラ”は作らない」
「医療ものでのオペシーンはアクションシーン。見せ方がとても大事!」(松木)
――オペシーンになると、絶対に助けてくれるという安心感でホッとしてしまいます。
黒岩「それもありますね。『助けが来たぞ!』『喜多見先生が来たぞ!』っていう」
松木「そこはある種、チャンバラの感覚で作っています。ピンチにヒーローが登場して必殺技で倒す、みたいな」
黒岩「医療ものってオペシーンがアクションシーンだから、見せ方はすごく大事になりますよね」
松木「黒岩さんは常に『絶対オペできない状況』という舞台を作ってくださるので…」
黒岩「『できません』『そうですか』となってしまってはダメ。そこで僕が折れたら楽なほうに行ってしまいます。難しいことをやってくれたほうが、観る側も引き込まれるはず。みんなに嫌われてもいいくらいの気持ちで、難しいことをやってもらおうとしています」
松木「実際、普通のオフィスでオペをするみたいなシーンが多くなると、『ちょっと物足りない』みたいな気持ちになります(笑)」
黒岩「以前、亮平さんに『いつも大変なことをさせてしまって申し訳ない』と伝えたら、『どんどん大変なことをやってください』って言っていただいて。そういったことが積み重なった結果、めちゃくちゃ大変なことをしてもらう状況になっています(笑)」
松木「私も麻痺してきました。今回ももし『溶岩の中でオペ』と書いてあっても『やれるんじゃない?』って普通に思ってました(笑)。空中でオペとか、そのうちありそうな気もしてきて…」
黒岩「出てきそうですね」
――そういったこともやってくれそう、やれそうと思わせる鈴木さんをはじめ、キャストの皆さんも本当にすばらしいです。新キャスト・高杉真宙さんのコメントでは医療監修の先生に尋ねる前に鈴木さんやスタッフから返答があるプロフェッショナルな現場とありました。
松木「亮平さんが周りを巻き込み引き上げてくれます。TOKYO MERはチームとしてもう出来上がっていて、私からはもう、なにも言うことはありませんが、今回は南海MERという久しぶりに未完成なチームが登場するお話。リアルタイムで団結していく様子を現場で見られたことが個人的にすごくうれしくて。その中心には亮平さんがいらっしゃって、本当にすごいと思いました」
黒岩「亮平さんはリアリティがすごすぎて、本当に手術できそうだもんね」
松木「できる気がします」
黒岩「手元も全部、吹き替えじゃなく自分でやっているんでしょ?」
松木「全部、亮平さんです」
黒岩「あれをやられたら、周りもやらざるを得ない。本当に背中で引っ張っていくし、手元でも引っ張ってね(笑)」
――あんなに頼もしい背中はないです。背中が映るだけでホッとします。
松木「頼もしすぎて、撮影中に泣きそうになることもありました(笑)亮平さんを中心に、本当にチームワークがすばらしくて。リハーサルとかジャズのセッションを見ている感じです。現場で脚本の行間をアドリブで埋めてくれるというか」
黒岩「映ってない人も埋めてくれるというね」
松木「そうなんです。それがあるのとないのとでは全然違います。TOKYOチームはそこも含めて出来上がっているのですが、南海チームの役者さんたちはそういう撮り方をするのを知った上でかなり勉強してきてくださったので頼もしかったし、かっこよくて。医療従事者としてはプロだけど、南海MERとしてのオペ室は初稼働という、その塩梅もすごく難しかったはずですが、初めての連携での距離感のようなものも、とても丁寧に作り上げてくださいました。そしてやっぱり、なにより黒岩さんの脚本が凄いんです。本人を前にして言うのもなんですが、脚本を手にした時のワクワク感、『これを映像にしたい!』とみんなが同じ方向を向いているのは間違いなくて」
黒岩「ありがたいです」
松木「だから、もっとやろうって雰囲気になるのだと思います。読むだけでカッとなるような脚本だからこそ、お客さんにもカッとなってもらいたい。胸が熱くなるような、衝動のようなものを伝えたくなるんです」
黒岩「僕はただ『火砕流が迫る』って書くだけ(笑)。それを映像にしてあの表現を出せるのは本当にすばらしいと思います」
松木「脚本の力でスタッフ、キャストの気持ちがまとまっているということが本当に大きいです。こういうお話をする機会がなかったので、今日どこかでお伝えしようと思っていました。言えてよかった!」
黒岩「コロナ禍に始まった作品で、打ち合わせもオンライン。一回も一緒にご飯を食べる機会がないなんてね。こういう状況になってもまだ食べてない。これはプロデューサーに苦情です!」
松木「打ち上げもやろうと言いながら、1回もやっていないまま…。現場以外で直接会う機会はなさそうなので、いま言ってしまえ!という気持ちで伝えてみました。もう満足です」
黒岩「この状況で褒め合うってね(笑)。内輪の小恥ずかしい感じの話をして大丈夫かな」
――コロナ禍を支えてくれた医療従事者に感謝を伝えたいというコンセプト、作品らしさも出ている貴重な制作裏話です!
黒岩「裏話といえば、僕が個人的に好きなエピソードは、亮平さんが新幹線か飛行機で『お医者さんいますか?』という呼びかけに出ていきそうになったって話。亮平さんが出ていったらみんな安心しそうじゃない?実際に切るのは免許がないからまずいけれど、出来そうな気がするんだよね、手術も」
松木「撮影期間中なら練習用にオペセット持ち歩いていますし(笑)」
黒岩「心臓マッサージとかは余裕でできるよね。来てくれただけで安心するというのは絶対あるし、それで蘇るんじゃないか、とさえ思えちゃう」
――「喜多見先生が来てくれた!」ってなりそうです。
松木・黒岩「なりますね」