劇場版『TOKYO MER』監督&脚本家が明かすシリーズ制作裏話!人気の秘訣は「どのキャラも愛されるように“お気に入りのキャラ”は作らない」
最新の医療機器とオペ室搭載の大型車両(ERカー)で事故や災害現場に駆けつける救命医療チーム(モバイル・エマージェンシー・ルーム=MER)の活躍を描いたテレビドラマの劇場版第2作、劇場版『TOKYO MER~走る緊急救命室~南海ミッション』が8月1日より公開となった。今回、パワーアップしたチーム力で魅せる作品を生みだしてきた松木彩監督、脚本を手掛けた黒岩勉に最新作の見どころ、シリーズの魅力、「TOKYO MER」ならではの演出、脚本作りの制作裏話をたっぷりと語ってもらった。
「『とうとう海に出たか!』と思いました」(松木)
――劇場版第2作の舞台を沖縄と鹿児島にまたがる海にした理由を教えてください。
黒岩「映画が夏休みに公開できそうだということ、ありがたいことにシリーズのファンにはお子さんもいっぱいいるので、新しい乗り物を出したいという思いもあって『船じゃない?』ってことになって。もともと医療戦隊モノのような形でやりたかったこともあり、船、離島医療、諸島部、火山…といったキーワードが出揃っていったという流れです」
松木「東京にはない環境、キーワードが揃っていたので、『とうとう海に出たか!』と思いました」
黒岩「ドラマは東京、劇場版第1作は横浜という都市部でしたからね」
松木「都会とのコントラスト。対極にある場所もそうですし、土地に根付く歴史のようなところにもコントラストがあって、ワクワクしました」
黒岩「最初は雪山にしようというアイデアもあって。都会から離れたいというのが根本にあったのだと思います。続編をやる時の難しさでもあるのですが、画として差をつけたいみたいな。いままで見たことがない、雪が見たいというアイデアは監督からだったような…」
松木「私です(笑)。決まってもいないのに、先走って1人で雪山に行ってロケハンもしました。なにも決まっていないところでいろいろと妄想するのもすごく好きで」
黒岩「撮影は大変なのにね(笑)。これまで都市部で相当いろいろなことをやってきたので、そのまま新しいものというのはなかなか難しい。違う場所で違うことをというのはよかったかもしれません」
――舞台やキーワードのアイデアが出揃ったら、次は脚本制作ですが、脚本作りのポイントは?
黒岩「今回は、全島民がどうやって脱出するのかがポイントでした。シリーズとして大切にしているのは、リアルとエンタテインメントのバランスです。リアルは追求したいけれど、観る人がなにかを想起してしまうような話は避けたい。見せ方のバランスにはかなりこだわっています」
松木「私自身はリアルよりもちょっと大袈裟にやりがちです(笑)。ただ見せ方を考える際には、リアルな映像をたくさん観るようにしています。黒岩さんのお話にもあったようにバランスはすごく大事にしていますが、映画として見せる噴火とリアリティのある噴火との塩梅は細かく考えているつもりです。絶対ないというラインと、生々しすぎない感じでしょうか。映画館で観るならこれくらいの爆発!みたいなものも入れたいので」
黒岩「エンタテインメントとしてね」
松木「前作のランドマークタワーの火災の時も、実際こんなに火柱が上がるのかとか、そういうところを突き詰められたらリアルではないかもしれません。ただ、通気口のところならあるかもしれないみたいな“あり得る”リアリティを突き詰めて考えるのが結構好きです。いつも黒岩さんからお題をいただいているような感覚です」
――脚本がお題に。「これを映像で表現できますか?」という感じでしょうか。
松木「まさにそうです!」
黒岩「物語で起きていることは、実際にはあまり起こらない出来事。それでもリアリティラインは本当に大事で、やりすぎてしまえば観客はついてきません。監督にはフィクションだと思われないギリギリのところでいつも作っていただけるから、ある種お題のようなものも出してしまうのかもしれません」
松木「鈴木亮平さんのお芝居のすごさというのが多分にあると思います」
黒岩「それはもちろん。この作品においては本当にそれが大きい!」
松木「ちょっと大袈裟にやれる部分があるのは、医療チームの皆さんの手技がものすごくリアルだから。医療救済の雰囲気は超リアルにやりたい、そしてやれるというのがベースメントとしてあるからこそ、派手な演出部分で私が少しはみ出せるのかなと思っています」