『罪人たち』完全ネタバレ徹底解析!数々の深淵な謎が込められた、全米大ヒットの異色ホラー映画を読み解く

『罪人たち』完全ネタバレ徹底解析!数々の深淵な謎が込められた、全米大ヒットの異色ホラー映画を読み解く

メタリカ

クーグラー監督によると、『罪人たち』に対する自身のビジョンに影響を与えた曲があるという。彼は「なにか曲のように感じられる、コントラストと変化がある映画」にしたかったらしく、そこでヘヴィメタル界の生けるレジェンド、メタリカの「ワン」を念頭に置いたという。「『罪人たち』も『ワン』も、張り詰めた雰囲気で始まり、次第にメロディックになり、そこからとんでもなくクレイジーな展開になる。でも終わった時には、そこにたどり着くべくたどり着いたことが明らかになるんだ」。

ボーカルのジェイムズ・ヘットフィールドと共に「ワン」を手掛けたメタリカのラーズ・ウルリッヒ
ボーカルのジェイムズ・ヘットフィールドと共に「ワン」を手掛けたメタリカのラーズ・ウルリッヒ[c]Everett Collection/AFLO

1988年のアルバム「メタル・ジャスティス」収録の同ナンバーはメタリカの代表曲の一つ。メタリカのドラマーで創設メンバーの一人、ラーズ・ウルリッヒは『罪人たち』のスコアにも参加している。『罪人たち』はブルース・ファンやフォーク・ファンだけではなく、メタルヘッズ必見の作品でもあるのだ。ちなみに「ワン」のミュージックビデオは、反戦映画『ジョニーは戦場へ行った』(71)の映像を一部使用しているショッキングな内容だ。

レファレンス

クエンティン・タランティーノとジョージ・クルーニー演じる強盗殺人犯の兄弟が吸血鬼と戦う『フロム・ダスク・ティル・ドーン』(96)
クエンティン・タランティーノとジョージ・クルーニー演じる強盗殺人犯の兄弟が吸血鬼と戦う『フロム・ダスク・ティル・ドーン』(96)[c]Everett Collection/AFLO

クーグラーは『罪人たち』が影響を受けた作品として、(特に類似性が高い)ロバート・ロドリゲスが監督したパワフルなヴァンパイア・アクション『フロム・ダスク・ティル・ドーン』(96)、同じくロドリゲスが監督したSFホラー『パラサイト』(98)、コーエン兄弟の代表作『ファーゴ』(96)と『ノーカントリー』(07)、ジョン・カーペンターの作品群(クーグラーのフェイバリット・ホラーはカーペンター監督のSFホラー『遊星からの物体X』)、「トワイライト・ゾーン」シーズン3のエピソード「The Last Rites of Jeff Myrtlebank(邦題:ミステリーゾーン「蘇ったジェフ」)」(62)、さらにスティーヴン・キングの小説「呪われた町」(セイラムズ・ロット)を挙げている。

クリストファー・ノーランのサポート

IMAX作品といえば…のクリストファー・ノーラン(写真)がアドバイス。本作の撮影監督のオータム・デュラルドは女性撮影監督として初のIMAX撮影を行った
IMAX作品といえば…のクリストファー・ノーラン(写真)がアドバイス。本作の撮影監督のオータム・デュラルドは女性撮影監督として初のIMAX撮影を行った[c]Everett Collection/AFLO

エンドクレジットのスペシャル・サンクスに、クリストファー・ノーランとエマ・トーマスの名前が。一体なぜ?その理由は、『罪人たち』はIMAXカメラとウルトラ・パナビジョンのカメラで、65mmのフィルムで撮影されており、クーグラーは撮影の際に、ノーランと妻でプロデューサーのエマ・トーマスからアドバイスを受けたのだという。ノーランは『ダークナイト』(08)、『ダークナイト ライジング』(12)、『インターステラー』(14)、『ダンケルク』(17)、『TENET テネット』(20)、『オッペンハイマー』(23)、そして最新作『The Odyssey(原題)』をIMAXで撮影したエキスパート。クーグラーは『罪人たち』について「見知らぬ他人で埋め尽くされた満席の映画館で、痛快な映画を鑑賞する体験へのラヴレター」だと語っている。

エンディング

演技派女優ウンミ・モサクが演じる、スモークの元恋人アニー
演技派女優ウンミ・モサクが演じる、スモークの元恋人アニー[c]2025 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved. IMAX[R] is a registered trademark of IMAX Corporation. Dolby Cinema[R] is a registered trademark of Dolby Laboratories

スモークはレミックと仲間たちを葬り去り、製材工場の元所有者ホグウッドとKKKの仲間たちを皆殺しにするが、彼自身も銃弾を受けてしまう。意識が遠のく彼の前に、愛するアニーと娘の2人の霊が現れて、スモークはこの世を去っていく。

1992年、年老いたサミー(演じるはブルース界の生けるレジェンド、バディ・ガイ)が自身のブルース・クラブでプレイしていると、60年前と同じ若さを保つスタックとメアリーがやってくる。あの惨劇の夜、スモークはスタックの命を助ける条件として、サミーに手を出さず、彼が天寿を全うすることを誓わせたのだった。サミーの死が近いことを悟ったスタックは、彼に永遠の命(=ヴァンパイアとして生きること)を提案するが、サミーは自分は十分に生きた、と言いこの申し出を拒否する。出口に向かう2人に、サミーは「太陽が暮れるまでのあの1日が、人生で最良の日だった」と語りかける。スタックも、あの日が最後にスモークと一緒に太陽を見た日であり、唯一自由を感じた日だとサミーに賛同する。


文/小林真里

「MOVIE WALKER PRESS」のホラー特化ブランド「PRESS HORROR」もチェック!

関連作品