フランシス・F・コッポラ監督が『メガロポリス』に込めた願いと“未来を予見する力”「人類がひとつの家族となって助け合い、次世代に幸せを届けたい」

インタビュー

フランシス・F・コッポラ監督が『メガロポリス』に込めた願いと“未来を予見する力”「人類がひとつの家族となって助け合い、次世代に幸せを届けたい」

「ゴッドファーザー」シリーズ、そして『地獄の黙示録』(79)…映画史にその名を刻む傑作を撮ってきたハリウッドの名匠、今年で齢86を迎えたフランシス・フォード・コッポラが13年ぶりにメガホンを取った『メガロポリス』が6月20日(金)公開される。構想40年という本作はコッポラがずっと温めてきた文字どおりの宿願作。そう遠くない未来のアメリカの架空の大都市ニューローマを舞台に、誰もが幸せに暮らせる理想の都市“メガロポリス”の創建を夢見る天才建築家の姿を追った寓話でありファンタジーだ。今回は、私財を投げうってまで本作の完成に漕ぎつけたコッポラに、その熱い想いを語ってもらった。

「人類の歴史には多くの学びが散りばめられている」

――古代のローマと近未来のニューローマを重ね合わせることで“いま”を創造しようとしている作品だと思ったのですが、いかがでしょうか?

「私はこれまで、長い人生のなかで数多くの古代ローマを舞台にした叙事詩を観てきました。ウィリアム・ワイラーの『ベン・ハー』(59)、スタンリー・キューブリックの『スパルタカス』(60)がそのいい例です。そうするなかで、もし自分だったらどういうふうに撮るだろうかという考えに至ったんです。そもそも私が住む国、アメリカは王国ではなく、共和制を選び、ローマの法律を取り入れました。それを土台に上院や議会を創設した。ならば、アメリカはモダンタイム(現代)のローマと考えていいのではと思ったんです。さらに、古代ローマの歴史をひも解くと、結局彼らは共和制を失い、暗殺されたカエサルに代わって彼の養子、オクタビウス(のちのアウグストゥス)がローマの支配者として君臨することになった。同じことをアメリカを舞台に描いたらどうなるだろうという私の答えがこの映画になりました。いまのアメリカの状況をみていると、上院や議会という制度が乗っ取られ、王政が敷かれるかもしれないと考えたからです」。


コッポラ監督が約186億円もの私財を投じて映像化したSF叙事詩『メガロポリス』
コッポラ監督が約186億円もの私財を投じて映像化したSF叙事詩『メガロポリス』[c]2024 CAESAR FILM LLCALL RIGHTS RESERVED

――人類の歩んできた歴史を考えることが重要だと思っているんですね?

「人類の歴史のうち、知られているのはほんのわずかです。記録があって遡れるのはせいぜい1万年くらいでしょうか。そのなかで、人間は馬との関係性を築いたんです。馬がいなかったらクロサワ(黒澤明)も『七人の侍』(54)を撮れなかったんですよ(笑)。ホモ・サピエンスが氷河期を生き延びることができたのも、お互いに助け合ったからです。そうじゃないと死ぬしかなかったでしょうね。だから私は、友情=サバイバルであり学びであると思っています。私たちは、殺し合い、憎しみ合うのではなく、お互いが生き抜くためにはなにをやればいいのかを考えるべきなんです。例えばギリシャ神話から学ぶのもいいですよね。兄弟や親子で殺し合う話がたくさんあり、そこから学べるのは、結局はその人を殺せばまた敵が生まれるということ。人類の歴史には多くの学びが散りばめられているんですよ」。

コッポラ監督が表現する、豪華絢爛な世界に圧倒される…!
コッポラ監督が表現する、豪華絢爛な世界に圧倒される…![c]2024 CAESAR FILM LLCALL RIGHTS RESERVED

――長いキャリアを誇るあなたですが、こういうSFファンタジーはほぼ初めてです。これまでそういう作品を撮るチャンスはなかったんですか?

「映画業界の人はすぐそうやってカテゴライズしてしまいます(笑)。私は映画は、カテゴリーやジャンルではなく、シネマでありアートだと思っているので、この作品がどのジャンルに属するのかというふうには考えていません。それでも敢えていうのなら『寓話』であり『ファンタジー』でしょうか。寓話というのは道徳的要素をもち、表面的に見えるものとは別の意味を持つ場合が多い。この映画には私の願いも込められていますから」。

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