『ヒロイン失格』から最新作『君がトクベツ』まで、全女子の心を掴む!?幸田もも子作品の魅力
応援せずにはいられない!パワーみなぎるヒロインたち
そして、なにより幸田作品最大の特徴は、恋にまっすぐなヒロインのキャラクター。とはいえ、歴代のヒロインたちが全員、猪突猛進タイプだったのに対し、『君がトクベツ』のさほ子は外見も性格もかなり大人しめ。傷つきやすいので、好きの気持ちを認めるまでにも、ある程度時間がかかっている。相手がアイドルという超・格差恋であることも大きい。原作では女子高生だったさほ子を、映画版では大学生の設定に変えたことで、いままでとは違う、より大人としての冷静さを持ったヒロイン像にしているところがポイントだ。
しかし、そんなさほ子も「死亡フラグの向こう側へいざ行かん!」と覚悟を決めたあとは、なにがあっても気持ちが揺るがないヒロインへ。好きな相手に告白し、あっさり玉砕しても、あきらめずに思い続けるという歴代のヒロインたちに連なるガッツを見せてくれる。正面から告白してフラれたら、そこで試合終了となるのが世の常だけに、むしろそこから本領を発揮するヒロインたちには思わず応援せずにはいられないパワーがみなぎっている。
フッたのにあきらめてくれないヒロインが、決して怖い存在にはならないのは、彼女たちが心の底の部分で、ヒーローを大事にしたい、守ってあげたいと思っているから。好きな男の子から大事にされたい女の子とは一線を画した男気のあるヒロイン像だ。『センセイ君主』のあゆはが、先生に夢を叶えてもらうため、涙をのんで背中を押してあげたように、『ヒロイン失格』のはとりや『あたしの!』のあこ子が、両親の不和に傷ついたトラウマを持つヒーローを丸ごと包み込んで癒したように、『君がトクベツ』のさほ子もまた、つらい過去を背負った皇太にとって特別な存在。ヒロインではなく、“ヒーローが恋に落ちていく過程を描く”という、モデルが反転した幸田作品らしいラブストーリーになっている。
『君がトクベツ』には、主人公のさほ子のほかにも、原作コミックではもう一人のヒロインとなる若手女優のえみかや、皇太の幼なじみの玲衣など、健気でかわいい女性キャラクターたちが登場。笑って、泣けて、キュンとする、幸田もも子の魅力が詰まった王道ラブコメのカギを握るのは、いつだって共感必至の女の子なのである。
文/石塚圭子
※山崎賢人の「崎」は「たつさき」が正式表記