『ヒロイン失格』から最新作『君がトクベツ』まで、全女子の心を掴む!?幸田もも子作品の魅力
イケメン嫌いな陰キャ女子がアイドルと恋に落ちる『君がトクベツ』
そして、このたび新たに公開されるのが、幸田もも子作品の実写映画化4作目となる『君がトクベツ』。原作コミックは2019年から別マで連載され、今年1月に完結したばかりだ。
主人公は、かつてクラスメイトのイケメンに告白し、手ひどい失恋をしたトラウマから、世のイケメンを呪うようになった陰キャ女子、若梅さほ子。ある日、さほ子が都内実家の定食屋を手伝っていると、国民的アイドルグループ“LiKE LEGEND”(通称:ライクレ)のリーダー、桐ヶ谷皇太がふらりと来店する。店の料理を気に入って、時々店にやって来るようになった皇太と親しくなるうちに、さほ子は彼の優しさにどんどん惹かれていくのだが…。
ヒロインのさほ子役に畑。さほ子が恋するアイドル、皇太役になにわ男子の大橋。ライクレのほかのメンバーには、FANTASTICSの木村慧人、DXTEENの大久保波留、MAZZELのNAOYA、前作『あたしの!』では直己の親友、成田を演じたM!LKの山中柔太朗とアイドル役に説得力をもたらす4人がキャスティングされた。また、注目の若手女優、七瀬えみか役にHKT48やIZ*ONEの元メンバーである矢吹奈子、ライクレのライバルであるロックバンドのフロントマンSHO役で、『センセイ君主』であゆはの友人である虎竹を演じたFANTASTICSの佐藤大樹が出演している。
女子が憧れるかっこいいヒーローに「ザ・ラブコメ」な作風…幸田作品ならではの特徴
幸田作品の魅力の一つは、面食い女子の願望を満たしてくれる、ありそうであり得ない憧れのヒーロー設定。『ヒロイン失格』では小学校からの幼なじみ。『センセイ君主』は学校の先生。『あたしの!』では一学年上の先輩が留年して同じクラスになるという変化球。ただし、その誰もが超イケメンで、めちゃくちゃモテるという大前提がポイントである。『君がトクベツ』では、そのヒーロー設定が、学校一のモテ男や憧れの先生という学園ものの枠を一気に飛び越え、“国民的アイドル”という本来手の届かないポジションにまで高まった。それでいて、出会いは定食屋という日常シチュエーションが絶妙なリアリティを生んでいる。
少女マンガの世界で一番多いジャンルはラブコメディだろう。そのなかでも、幸田作品はとりわけギャグ要素が強い「ザ・ラブコメ」の作風で知られている。少女マンガにあるまじきヒロインの変顔やツッコミしかない思考、ぶっ飛んだ行動が次々と描かれるため、幸田作品のヒロインを演じる女優には、いつだってほかの恋愛作品とはひと味違った覚悟が求められる。『ヒロイン失格』の桐谷や『センセイ君主』の浜辺も、うまくいかない恋に七転八倒する女の子の愚かさ、悲哀を捨て身で体現し、新境地(?)を開いてきた。
実は『君がトクベツ』はこれまでの作品に比べると、ギャグ色は薄いほうなのだが、それでも幸田作品のヒロイン特有ともいえる妄想癖は健在。様々な形で表現されるさほ子の妄想の数々、自分を戒めるたびにバシーンと思いっきり頬を引っぱたくセルフビンタで笑わせてくれる。また、『センセイ君主』のあゆはが“LOVE研究ノート”に自分の願望や想いを綴っていたように、本作のさほ子も“戒めノート”を所持していて、アイドル皇太への恋心をはっきり自覚したあとは、“恋の10年計画ノート”をつけ始める。このアナログなアイテムがストーリーを動かす小道具になることも幸田作品ではおなじみである。前半のギャグ要素とのギャップのおかげで、真剣な恋心のせつなさが際立ち、後半の胸キュン度が高まるのもお約束。王道ラブストーリーとギャグのバランスのよさも幸田作品の人気の理由である。