スタジオジブリや次なる注目作『ChaO』まで!日本名作アニメの系譜を“アニメーション映画祭の権威・アヌシー”からひも解く
青春アニメーション映画の金字塔、細田守監督作『時をかける少女』も特別賞を受賞
アニメーション映画祭と聞くと、アート性の高いアニメーション作品のコンペティションといった少々敷居の高いイメージがあるかもしれないが、アヌシー国際アニメーション映画祭受賞作の魅力は幅広い。『サマーウォーズ』(09)、『竜とそばかすの姫』(21)など名作アニメーションを生みだしてきた、スタジオ地図の名監督、細田守のヒット作『時をかける少女』(06)もそのひとつだ。筒井康隆の同名小説をベースに、過去にさかのぼれるタイムリープの能力を手に入れた女子高生・真琴が自分の本当の気持ちと向き合い、成長していく爽やかで切ない青春ストーリーは、2007年同映画祭の長編部門で、審査員が選出する特別賞を受賞。当時、東映アニメーションを退社して、フリーになって間もない細田監督の名前を一気に世界に知らしめただけでなく、日本のアニメーション業界もおおいに勇気づける役割を果たした。
『犬王』『夜明け告げるルーのうた』の名匠、湯浅政明監督もアヌシーの常連
2017年、日本作品としては宮崎監督、高畑監督以来、アヌシーの長編部門クリスタル賞(グランプリ)を22年ぶりに受賞したのが、湯浅政明監督の『夜明け告げるルーのうた』(17)である。両親の離婚により、東京から寂れた漁港の町に引っ越してきた中学生の少年・カイが、音楽が大好きな人魚の少女ルーと出会ったことで、それまで閉ざしていた心を徐々に開いていく物語。斬新でとがった作風で知られる湯浅監督作品の中では、全世代の観客の胸に響く王道の長編アニメーションだ。また、湯浅監督はNetflixオリジナルアニメ「日本沈没2020」で、2021年同映画祭のテレビ部門・審査員賞を受賞、2022年は、監督作『犬王』(21)がオフィシャルセレクションとして招待。この年からハリウッドさながらに設置の決まった“名声の歩道”(Walk of Fame)に手形を押す最初のクリエイター6人のうちの1人に選出されるなど、国際的な認知度をますます高めている。